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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
006 / 私を愛したレディ

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#33 レクセル、到着する

 翌朝の空は、雲が少し多かった。

 その隙間から陽光が差し込んで、〈スー〉の翼をぴかぴか照らす。

 

「――――出発するよ、準備はいい?」


「もちろん。お願いいたしますわ」


 座席越しにくぐもった答えを聞いて、レクセルはスロットルを押し上げた。

 土ぼこりの尾を曳いて、〈スー〉は小さな滑走路を駆ける。

 ふわりと舞い上がって、するするとタイヤを仕舞った。

 ゆっくりと高度を上げる。

 曇り空も、雲の上まで昇ってしまえば青空へ変わる。

 爽やかな色彩の中で機体を水平に戻し、レクセルはふぅと息をついた。


 ――――操縦席以外に窓はない。

 広がる絶景は、ラヴジョイからは見えないだろう。

 少しかわいそうだと思いながら、レクセルは周りを見渡した。

 違和感を探すように、目を凝らす。

 空にあるのは、綺麗なものとは限らない。


「…………いるな」


 舌打ちして見上げた先、キラリと光る点が3つ。

 野良の配達人は単機がほとんど。

 編隊を組んで飛ぶのは、だいたい略奪機だ。


「どうかなさって?」


「ああ、敵を見つけた」


「…………大丈夫ですの?」


「まだこっちに気付いてないから、今のうちに雲の下に隠れる。高度下げるよ」


「はい、お任せしますわ」


 青空に別れを告げて、〈スー〉は再び雲へと潜る。

 とりあえず見つかる可能性は減ったが、敵は同じ方向へ飛んでいる。

 速度を落としてやり過ごすよりは、さっさと先へ行ってしまいたい。

 レクセルはわりとせっかちである。


「ラヴジョイ、少し揺れるよ」


「お構いなく〜」


 ぐいっとスロットルレバーを上げる。

 エンジンが甲高くいななき、〈スー〉がぐん! と飛び出す。

 おお、と思わず声が漏れた。


「そういえばボップさんにいろいろ弄ってもらったんだっけ。明らかに加速が違うな……!」


 嬉しそうに呟きながら、レクセルは操縦桿を握り直した。

 敵も雲も置き去りにして、〈スー〉は真っ直ぐにアルマを目指す。

 やがて曇り空を抜け、太陽が傾き、景色に朱が差し始めた頃――――。


 2人を乗せた〈スー〉は、アルマに到着した。






 旧首都、アルマ。

 100年前までは国の威信を担い、技術力を誇示する工業都市であったこの街も、今では全く趣が違う。


 遷都に伴い、工場はほとんどが新首都へと移転。

 アルマは工業生産能力を失うことになったが、戦略的価値が低下したために空襲をほとんど受けずに世界大戦を乗り越えたのである。

 

 おかげで中世から残る歴史的建造物たちは戦火を免れ、アルマは観光都市として大いに栄えていた。


「んん……到着、しましたの……?」


「ちょうど着陸したところ。停めるまで待ってて」


 着陸の揺れで、眠っていたラヴジョイが起きたらしい。

 ぽそぽそとした声に返事をして、レクセルは〈スー〉を駐機スペースへと走らせる。


 流石は旧首都、飛行場も桁違いに大きい。

 雑草ひとつない滑走路の端、駐機スペースにもたくさんの飛行機が停まっている。

 指定された区画にするりと機体を滑り込ませ、パチンとスイッチを切った。

 プロペラがかたんと止まる。


「お疲れ様、着いたよ」


「まあっ」


 歓喜の声と、扉を開ける音。

 レクセルは笑ってベルトを外し、操縦席から出る。


 夕風に髪をなびかせて、ラヴジョイは立っていた。

 胸の前で手を組み、感慨深げに息を吸う。

 ちょうど翼から降りたレクセルへ、するりと向き直った。


「――――レクセル。わたくしをここまで連れてきてくださったこと、感謝いたしますわ」


「どういたしまして。私もなんだかんだ楽しかったよ」


「ふふ、それは嬉しいですわね」


 ラヴジョイが口に手を当てて笑う。

 2人の間を、ぴょうと風が吹き抜けていった。


 今回は、お忍びの移送依頼。

 引き渡しの取引などはなく、レクセルはこのままジェミニ市へと戻る予定。

 ここでラヴジョイとはお別れだ。


「……行くあてはあるの」


「ご心配なく、ホテルを取ってありますわ」


「そう、よかった。じゃあこれで依頼は達成だな」

 

 出奔の理由も、素性も。

 結局明かされることはなかったけれど。

 知らなくたって、困ることはない。 


 レクセルは頷いて、手を差し出す。

 ラヴジョイが取った。

 相変わらずの、さらさらな手。

 ゆっくりと振って、引き抜こうと――――。


 ――――え、抜けない……。


「……ラヴジョイ?」


 握ったまま離さないラヴジョイを、怪訝な顔で見る。

 微笑みを返して、ラヴジョイは言った。


「レクセル。もう少しだけ、わたくしに付き合ってくださらない?」


「もう少し……?」


 首を傾げると、ぴし、ぴし、ぴし、ぴし。

 指が4本立った。


「4日後。わたくしはアルマを発って、ジェミニへ戻ろうと思いますの。その時にまた、わたくしを運んで欲しいのです」


「なるほど。つまり帰りの足が欲しいのか」


「もちろん追加の報酬と滞在費はこちらでお支払いしますわ。いかがかしら?」

 

「えーと」

 

 まっすぐな瞳に吸い込まれそうになって、思わず目を逸らした。

 気も逸らすついでに、契約のことを考える。


 ――――〈ダストテイル・エクスプレス〉と交わした契約は、ラヴジョイをアルマまで送り届けた後、ジェミニへ戻ってくること。

 期限は決まっていなかったはず。


 ……なら、ラヴジョイの提案に乗っても同じか。

 日数と報酬が増えるだけ。後者に至ってはプラスですらある。

 そういえば代表も、アルマに着いてからの対応はお任せするって言ってもいたし。


「……わかった。いいよ」


「まあ! でしたら早速ホテルへ参りましょう」


「ちょっ――――強いってばっ」


 どこに力を隠していたのか、ラヴジョイはずるずるとレクセルを引っ張っていく。

 あれよあれよという間に、飛行場からも1番目立つ大きなホテルへ連行され。


「…………あれ?」


 豪華に充てがわれた1人部屋の中、レクセルはぽかんと天井を見上げた。

 シャンデリアがしゃらしゃらしていた。

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