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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
005 / モーンレイカー

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#29 レクセル、屈する

「……申し訳ありませんが、お受けできません」


 考えることすらせずに、レクセルは断った。

 詳細を尋ねる必要もない。

 なぜなら。


「私の愛機は単座――――1人乗りです。他には荷物しか積めません」


「もちろん、存じておりますわ」


「でしたら……私ではなく、複座機のパイロットに依頼することをお勧めします。快適さを重視するなら値は張りますが小型旅客機でも――――」


「それでは、駄目なのです」


 きっぱりと。

 ラヴジョイは首を振る。

 ぱちぱちと目を瞬いて、レクセルは首を傾げた。


「駄目、とは……?」


「わたくしを追ってくる者たちがいるのですわ。彼らを撒くために、飛行機に搭乗したという記録を残したくないのです」


「…………は?」


「ですのでレクセルさん。あなたの機体に、わたくしを荷物扱いで載せて頂きたいのですわ」


「……………………は……ぁ?」


 いきなりの急展開。

 上手く言葉が出てこなくて、レクセルは口をぱくぱくさせる。

 

 ごくっと喉を鳴らして、なんとか頭を整理した。


「私の機体の、貨物スペースに乗りたい……ということですか? 座席がないどころかものすごく狭いのに?」


「ええ、追手は2人以上が乗れる機体に注目するはずですから。1人乗りの機体にまさか、もう1人乗っているなんて思わないでしょう?」


「そりゃ思わないでしょうよ、非常識だし危険すぎるし! 頭ぶつけますよ?」


「クッションを敷き詰めさせてもらいますわ。それにこのくらいしないと追手は撒けませんもの」


「…………もし略奪機に襲われでもしたら、敵弾が飛び込んでくる可能性もあるのに」


「ですからあなたにお頼みしたいのです。無傷で荷物を守りきった、レクセルさんに」


「………………」


 ラヴジョイが微笑む。

 じりじりと迫ってくる、静かな圧。


「…………あなたは、何者なんですか」


「わたくしはラヴジョイです。それ以外のことを、今は話せませんの」


「……なぜ」


「情報が漏れる可能性を少しでも減らすためですわ」


 レクセルは奥歯を噛んだ。

 困った顔を向けた先、代表はあぁと頷いて、


「厄介事を抱え込むことを危惧しているのなら心配いりませんよ、もろもろの責任は全てこちらが負いますので」


「……一応聞きますけど、私以外のパイロット候補は」


「そこにいなければいないですねえ」


「ちくせう」


「断ってもよいですが、非協力的ということで我が社からの評価がすこーしマイナスになりますね〜」


「脅しだろこれ」 


 ため息をつくレクセル。

 後ろ髪をさすさす撫でつけて、首を捻った。

 そしてもう一度、ため息をついた。


「…………わかりました。お受けします」


「まぁ! 感謝いたしますわ、レクセルさん」


 渋々といった言葉に、ラヴジョイがぱんと両手を合わせる。

 すすすと代表が寄ってきて言った。


「本件は内密に処理しますので、依頼達成後はここに戻ってきてください。アルマの〈ニュークリアス・エクスプレス〉への訪問は不要です」


「了解です。しかし犯罪臭すごいな……」


「受けた依頼はどんな手を使っても達成するのが我が社です。料金によりますがね」


「……さっき言い値とか言ってましたけど。それなりの料金取ってません?」


「…………」


「……本当に犯罪ではないんですよね?」


「今のところはそうですねえ」


「不安だなあ……」


 しかし引き受けてしまったからには仕方がない。

 遊便はただの配達人じゃないし、時にはこういう依頼もあるだろう。

 レクセルはやれやれと首を振って、頷く代表の元、ラヴジョイと握手を交わしたのであった。






「まぁ、貨物スペースって本当に狭いのですわね!」


 〈スー〉の側面についた小さな扉を開けて、中を覗いたラヴジョイは楽しそうに言った。


「だから言ったじゃないですか……本当に乗るんですか?」


「もちろんですわ。ごめんあそばせ……よいしょ」


 レクセルの呆れ顔をも意に介さず、せっせとクッションを詰め込んでいく。

 元々座席の裏の空きスペースというだけなので、5個も放り込むとすぐに一杯になった。


「ここに、んっ――――こうやって。いい感じですわね」


 身体を隙間に差し込んで、クッションに包まれたラヴジョイはパタンと扉を閉めた。

 一拍置いてから開き、満足げな顔がにゅっと出る。

 いい感じだったらしい。


「どうかしら、レクセルさん」


「セクシーポーズ取らないでください」


 この人、意外とお茶目だな……。

 無意識のうちに気を許し始めたレクセル。

 外に置いていたカバンを抱え込んだのを見て、そろそろ出発ですけど準備はいいですか、と投げやりに聞いた。


「ええ、問題ないですわよ〜」


「……了解です」 


 小さな扉がパタンと閉まる。

 外から開かないことを確認して、レクセルは1つ伸びをしてから翼に上がり――――。


「――――レクセルさん、ちょっとお待ちを」


「……ん?」


 呼び止められて振り返れば、小走りで駆け寄ってくる代表の姿が見えた。

 するりと地面に降りると、隣に来た代表はふぅと一息ついて、きょろきょろと周りを見回す。


「ラヴジョイ様はどちらに?」


「もう〈荷物〉になりました。〈スー〉の中です」


「おや、ではお待たせしてはいけませんね。手短に済ませましょう」


 どうやら用があるのはレクセルらしい。

 別れの挨拶かな。それとも、お金の話?


「――――ラヴジョイ様の正体についてですが」


「正体って」


 全然違った。

 代表はちらりと〈スー〉を見てから、レクセルの耳元に口を寄せる。


「先ほど通達がありまして――――ジェミニ市内に滞在していたご令嬢が、滞在先から失踪なされたと。空路での移動が想定されるため、それらしき人物を見かけたら足止めと連絡をしろとのことです」


「……ラヴジョイさんが、その令嬢だと?」


「ええ。変装していらっしゃいますが、容姿の特徴も一致しております。それに、あの気品ですし」


「ああ……では名前も偽名ですか」


「それは不明ですね。貴族は親しい者にしかファーストネームを明かさないので」


「あ、あー……確かに」


 ……知らなかった。

 ふんふんと頷いて(ごまかして)、レクセルは振り返る。


「……では、依頼は中止と」


「いいえ、そのまま続行でお願いします」


「え……?」


「〈ダストテイル・エクスプレス〉は一度受けた依頼を放り出したりしません。どんな手を使っても達成すると先ほど言った通りですよ」


「それは立派なことで――――あ。……料金もらったからですか?」


「その通りです」


「その通りなのかよ! ――――失礼しました」


「いえいえごもっともな反応です。がめついことこの上ない」


「どの口で――――んぐ、危ない危ない」


 レクセル、なんとかツッコミを抑えた。

 

 なんでもありません。

 あら、今なにかおっしゃいましたか?

 

 ふふふ……とわざとらしく笑い合ってから、代表は小さなメモを渡す。

 電話番号が走り書きしてあった。


「ラヴジョイ様に味方するか、足止めする側に付くか――――アルマへお届けした後の対応はお任せします。必要ならこの番号をお使いください」


「……これは?」


「通達を出した、サングレーザー伯爵家のものです。伯爵令嬢をアルマで見たとでも言えば、すぐに駆けつけるでしょう」


「サングレーザー伯爵家…………って、まさか」


 少し記憶を漁って、レクセルは目を見開く。

 どこかで聞いたような、その名前は。


「――――ええ。レクセルさんに宝飾品の配送を依頼した、スバル市の名家ですよ」

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