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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
005 / モーンレイカー

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#28 レクセル、嫉妬する

「どうだった?」


「完璧……! 調整はいらない、最高だよ」


「そうか、それはよかったッ!」

  

 テスト飛行を終えたレクセルは、喜びを隠しきれない顔で答える。

 満足げにボップは笑い、レクセルの肩をバシバシバシバシ。


 レクセルは肩こりが治った気がした。


「――――それではレクセルさん、本部の方へお越しください。早速ですが依頼についてのご相談を」


「了解です。どうもありがとう、ボップさん」


「ああ! 幸運を祈ってるよ、レクセルさん!」


 片手を上げて、陽気なオレンジが去っていく。

 その背中を見送ってから、2人は踵を返す。


「……気のいい整備士さんですね」


「腕は確かです、我が社きっての整備士ですから。これで女癖が悪くなければ言う事ないのですが」


「ボップさん女癖悪いんですか……?」


「まぁ完璧な人間なんていませんよ」


 なんか前も|似たような人《ファースト市のシューメーカーさん》がいた気が……。

 この業界、女癖悪い人が多いんだろうか。


 自分のことは棚に上げるレクセル。

 まぁいいやと首を振った。

 愛の形は人それぞれだし――――。


「――――愛の形、か」


「いきなりどうしたんです……?」


「ああいや、なんでも」


 レクセルは、〈スー〉を振り返った。

 おろし立てのシャツみたいに、ピカピカの相棒。

 

 〈スー〉は飛行機。言ってしまえばモノだ。

 

 でも、レクセルにとっての特別という点では、ハレーと同じ。

 どちらもずっと一緒にやってきて、レクセルが唯一無二の愛情を向けている、そんな相手。


 その愛情は、同じ〈親愛〉なのだと思っていたけれど。


(ボップさんが――――っていうか。私以外の人が〈スー〉に触れても、別に嫌じゃない)


 …………でも。


(私以外の誰かがハレーに触れるのは……?)


 オーケー、考えてみよう、

 誰かが〈スー〉で空を飛ぶ。うん。

 私より上手く乗りこなせるか、って見ててやる。


 誰かがハレーとデートするのは……なんで?

 私のほうがハレーと仲よしだよ?


 誰かがハレーの隣にいるのは……は?

 そこ、私の場所なんだけど。


 誰かがハレーと恋人になるのは…………。

 ハレーと、恋人になる。のは。

 

 ハレーが選んだなら別、に……。

 誰と付き合おうが、ハレーの自由だし。

 ハレーの気持ちを応援してあげ――――。


「――――いやだ」


「??? ……レクセルさん、具合悪かったりします?」


「あ……いえ。大丈夫です」


 首を振った。少し強めに。

 喉につっかえたものをごくりと飲み込み、次の一歩を踏み出した。


 風に乗ってさらさらと、プラチナの髪がなびく。

 片手で少し押さえながら、レクセルはため息をついた。 


 ――――独占欲だ、これ。


 なんとなく、自分の想いの輪郭がはっきりしてきてしまったみたいで、ちょっと癪で。

 あるいは……少し怖くて。


 察しかけた本心を、言葉にはしなかった。






「あっ代表! 駆け込みでいらしたお客様が、直接お話したいと!」


 本部に戻ったとたん、慌てた様子のスタッフが飛んできた。

 代表は落ち着くようにとゆっくり頷いてみせる。


「わかりました。ではレクセルさんの後に――――」


「それがっ……なんでも急を要する上に、料金は言い値でよいから最優先でお願いしたいとのことで……!」


「おやおや! 言い値でよいのですか」


「代表……?」


「オホン。…………なにか事情がありそうですね。しかし先約を無下にはできません。すみませんがお客様にはそうお伝えして――――」


「あ、私は後でも全然大丈夫ですよ」

 

 横から口を出すレクセル。

 急いでいるわけでもありませんし、私も一応会社側の人間なので――――とひらひら手を振った。


「ですが――――」


 代表はなにか言いかけたが、1つ瞬きして口を噤む。

 頷いて、すぐに判断を下した。


「――――いえ。それではお言葉に甘えさせて頂きますね。――――お客様にはすぐ行くと」


「了解です伝えてきますっ!」


「それから……レクセルさんは申し訳ありませんが、こちらの部屋でお待ちください」


「お気遣いありがとうございます」


 そうやって案内されたのは、小さな応接室。

 ソファに腰を下ろしたレクセルへ、別のスタッフが紅茶とクッキーを持ってきてくれた。


「――――ふう」


 ふかあ、と沈み込む感触をじっくり味わいながら、レクセルは肩の力を抜く。

 〈スー〉が帰ってきた嬉しさと、察してしまったハレーへの想いで胸が落ち着かなかったから、一息つけて助かった。


「沁みるな……」


 紅茶の香りに包まれて、そんな呟きが漏れる。

 思えば仕事だったりナンパだったり、やることに追われてばかりだった。

 たまには落ち着くのも大事かもしれないな。

 レクセルは微笑みを浮かべて、カップをふーふー冷まし――――。


「レクセルさん、緊急の依頼です」


「――――あああッヂュ!!!」


 ――――突然開いたドアに飛び上がった。


「あら、これは失礼いたしました」


「いえ――――お気になさらず……」


 口の周りをフキフキするレクセル。

 んんっと咳払いしてから尋ねる。


「ええと……緊急の依頼、ですか?」


 その通りです、と。

 代表が頷いて、言葉を紡ぎかけたちょうどその時。


「――――代表さん。わたくしからお話させて頂いてもよろしいかしら?」


 するり。

 代表の後ろから、まるで滑るような身のこなしで、1人の女性が進み出た。


 歳はレクセルと同じか、少し上くらい。

 透き通った水色のロングヘアは後ろで束ねられ、天馬の尾のごとくゆらゆら揺れる。

 大きくて柔和な、しかし底が見えないほどに澄んだ瞳でレクセルを見てから、女性は優雅に一礼をした。


「初めまして、遊便さん。わたくしはラヴジョイと申します」


「……初めまして。レクセルです」


「レクセルさんというのですね。素敵な名前ですわ」


「それはどうも……」


 その姿からは、どこか気品のようなものが滲み出していた。

 わずかに緊張するレクセルに気付いてか、ラヴジョイは口に手を当てて微笑む。

 不自然さが全くない、手慣れた仕草だった。


「代表さんからお聞きしましたわ、レクセルさんは相当に優秀なパイロットであると。略奪機に襲われながらも無事にこの街までたどり着き、しかも運んでいた荷物にはかすり傷1つ負わせなかったとか」


「……でも愛機を瀕死に追いやりました。荷物が無傷だったのは運がよかったからですよ」


「ご謙遜を、運も実力のうちですわ」


 きっぱりと言い切って、ラヴジョイはゆっくりと瞬きをした。

 柔らかなオーラが、するすると収束していく。

 一瞬のうちに真面目な雰囲気を纏い直し、ラヴジョイはレクセルを真っ直ぐ見据えた。


「そんなレクセルさんに依頼します。――――このわたくしを、アルマの街まで運んで頂きたいのです」

読んでいただき、ありがとうございます!

続きは毎日【お昼】に更新!

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