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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
004 / シー・イズ・ノット・イナフ

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#23 死闘! レクセル

 ――――精度劣悪、重量過大、火力過剰。

 〈スー〉に積まれた37ミリ機関砲の評価は、大戦当時から散々なものであった。


 そのため新開発の迎撃機(オリオン)には、より適した武装が採用された。

 当てやすく、重すぎず、十分な破壊力を持つもの。

 それが〈20ミリ速射機関砲〉である。


『あはは、墜ちなさいっ!』


 フェイに応えた〈オリオン〉の砲口が、ぶあああと唸りをあげた。

 速すぎて、1つの音に聞こえるほどの発射レート。

 赤い光線がするすると伸びて。


 ――――〈スー〉の翼端が、消失した。


「ぐぁっ……!?」


 レクセルの目が驚愕に染まる。

 なんて破壊力。

 まるでSF小説のレーザービーム……!


 暴れる機体を抑えつけて、無理やり滑らせる。

 直後、1秒前までいた空間が寸分違わず貫かれる。

 

「クソ、精度もいいのか……っ!」


 まずい。とてもまずい。

 被弾しないように、避けるだけで精一杯だ。

 それだって、いつまで持つか。


『ほらほら、逃げるだけじゃあジリ貧よ?』


「ぬぬうぅっっ……!」


 〈スー〉の胴体を狙った攻撃を、強引に避ける。

 逸れた銃弾がフラップを吹き飛ばした。

 

 胴体部の貨物室には、ジェミニへ運ぶ宝飾品が詰まっている。 

 お客さんの荷物を撃たれるわけにはいかない。

 時には翼すら盾にして、レクセルは荷物を守る。

 そして、引き換えに損傷が増えていった。

 

 はらりと外板が脱落する。

 翼は今にも折れてしまいそう。

 〈スー〉が墜ちるのは、もう時間の問題だった。


「………………」


 横を見た。

 漏れたガソリンが尾を曳いている。

 

 レクセルの青い目が、静かに下を向いた。

 白い喉が、こくりと鳴って。

 

「……一か八か。やるしかない」


 がん! とスロットルレバーを押し上げた。

 〈スー〉が加速し、昇っていく。

 少しだけ、〈オリオン〉を引き離す。


『だからぁ、無駄だってば』


 フェイは僅かにスロットルを開く。

 それだけで差はなくなった。むしろ縮まった。

 〈スー〉が照準器からはみ出る。

 つまらなそうに、フェイは息を吐く。


「……やっぱりレクセルも雑魚か。悲しいわ」


 無造作に撃った。


「ま、どうせ寂しくて撃てないでしょうけど。懐く相手を間違えたわね」

 

 尾翼が吹き飛んだ。

 ぼろぼろの獲物(スー)はバランスを崩し――――。


「…………え?」


 ――――その場でぐるん、と回転した。






 撃ってくる。

 背筋がちりっとなった瞬間、レクセルは動いた。

 

 スロットルカット。フラップ全開。

 ラダーペダルを踏む。

 着陸装置を下ろす。

 スピードを殺す全ての操作を同時に行う。

 前へ進む力が、消える。

 ギリギリのバランスで、〈スー〉は浮いていた。 


 ――――大砲を無理やり搭載する〈スー〉は、重量バランスが極端に悪い。

 いわば変なところに重りを付けたまま、綱渡りのように飛んでいる状態である。 

 もし、その均衡が崩れれば。

 たとえば尾翼1枚分の重さが、いきなり消えたら――――。


 ――――機体で一番重い部分(エンジン)が、強引に下を向く。


「…………か、はっ!」


 背中越しに被弾を感じた直後。

 ぐりんと空が反転した。

 

 肺の空気が押し出される。

 Gが身体を潰そうとする。

 想定通りの負荷を、レクセルは抗わずに耐えた。

 でんぐり返しをした〈スー〉と、真後ろの〈オリオン〉の目が合った。


 操縦席で、驚愕に揺れる金髪が見えた。

 視界が熱くぼやけたのは、悲しみからか、怒りからか。

 レクセルは思考を止めるように、目を瞑って。


「……狙いは、外さない」

  

 引き金を引いた。






「――――滑走路を空ける、着陸も離陸も中止っ! あの配達人が最優先よ!」


「消防隊、救護隊は着陸次第急行せよ!」


 ジェミニ市の飛行場は、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。

 突如として、今にも墜落しそうな機体がよたよたとやってきたからである。


 白い塗装に、赤と青のストライプ。

 配達人の乗機に間違いなかった。


「――――自動管制装置も無線も応答なし、故障している模様です!」


「おおかた略奪機に襲われたのでしょう……よく逃げ切り、ここまでたどり着いたものね……」


 当直スタッフたちの見守る中、配達人は着陸態勢に入った。

 近付いてくるにつれ、損傷の酷さがあらわになる。

 外板はあちこちが脱落し、骨組みすら見えるほど。 

 特に翼はガラクタも同然。


 しかし貨物室のある胴体部だけは、不自然なほどに無傷であった。


「まさか襲われながらも配達物を守りきったの……!? あの配達人、相当の腕前よ!」


「よかった、それなら無事に着陸できますね!」


 ピリピリした空気がわずかに緩んだが――――。


「――――おい待て、着陸装置が出ていないぞ!」


 誰かの悲鳴によって元へ戻る。

 機体は今にも着陸しそう、しかし確かに、地面を捉えるためのタイヤはしまわれたまま。


「まさかそこも壊れているの!?」


「だめだ間に合わない、胴体着陸……!」


 固唾を飲んで見つめる皆。

 その前で、静かに、機体が地面に触れた。

 転瞬。


 ががががががっ――――!


 空気を引き裂くような摩擦音。

 接地した翼から火花が噴き出す。

 プロペラがアスファルトを叩き、砕け散る。

 

 ぼろぼろの翼が耐えきれず、根元からぼきりと折れた。

 

 片翼の機体はくるくると回りながら滑走路を滑っていき――――力尽きたように、ようやく止まった。


「君、大丈夫かっ!」


 急いで駆けつけた救護班が操縦席を覗き込む。

 パイロットの少女は無言で頷いた。

 見たところ負傷もなく、救護スタッフは安堵する。

 

 だが――――。


「なぁ。……消火剤、まだ使ってないよな?」


「ああ……」


「じゃあなんでこの子、真っ白けになっているんだ?」


「そりゃショックだったんだろ、襲われたのが」


 ―――レクセルはしなしなと燃え尽きていた。

She is not enough(彼女では足りない)


レクセル(の強さ)が足りない、と見せかけて、実はフェイの器こそ最強には足りなかった――という意味を込めています。


続きは毎日【お昼】に更新!

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