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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
004 / シー・イズ・ノット・イナフ

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#21 レクセル、襲われる

 翌朝。

 てきぱきと支度を済ませ、レクセルは飛行場へ向かう。

 スバルを拠点とする郵便会社、〈ヘッド・エクスプレス〉の所属機たちが滑走路脇に並べられ、出発を待っている。

 その中にはレクセルの〈スー〉もいた。


「――――荷物は搭載済みです。高価値貨物ですので、くれぐれも破損のないようにお願いします」


「了解です。整備諸々、ありがとうございます」


 担当者は頷いて、配達人控を手渡す。

 ポーチにしっかりとしまい込み、レクセルは握手をしてから機体へ乗り込んだ。

 

 風防を閉めて、エンジンに火を入れる。

 〈スー〉がぶるりと身震いをして、ゆっくりと進み始める。

 ガラス越しに、朝を迎えたスバルの風景が動いていく。


「――――お元気で、フェイさん」


 オレンジに染まる街並みへ、そんな言葉を投げかけて。

 レクセルはスロットルを押し上げた。


 ぐうーん、とエンジンが回転を上げる。

 いつもより滑らかな感じがするのは、整備士の腕のおかげだろうか。

 ベテランを充てる、と言った担当者の言葉を思い出して、レクセルはご機嫌な笑みを浮かべた。


 どことなく軽い操縦桿を引き、翼が浮き上がる。

 一晩を共にした街を背にして、〈スー〉は陽光の中へ飛び込んでいった。






「またか……雲が多いなぁ」


 ため息をついて、レクセルは少し進路を変えた。

 正面にもくもくと、大きな積乱雲。

 見た目こそ綿あめのようだけど、あの中は風が吹き荒れる危険な場所だ。


 ――――空の危険は略奪機だけでない。

 人間を産んだ自然でさえ、敵に回ることだってある。

 自然も人も、味方とは限らない。

 

 脅威をいち早く察知し、避けて進む。

 もし避けられないのならば無理やり進む。

 

 それが出来ないと、遊便は務まらないのだ。


「……ん?」


 周りを見回していたレクセルの目が、真上でぴたりと止まる。

 その先できらりと光が5つ。 

 雲の隙間に刺客のごとく潜んでいた略奪機が、獲物を見付けて迫ってくる。


「これだから雲は嫌なんだ……」


 ぼやきながら、レクセルは敵を睨みつけた。

 

 ……奴らの狙いは〈スー〉の積荷だ。

 まずは無線で脅しをかけてくるはず。

 ならば――――その隙をついてやる。


 引き金に指をかけながら、残弾計に目を落とした。

 最大で20発まで表示できる目盛りも、今は6発を指している。


 ――――敵は5機、1発でも外せば後がない。


「……大丈夫。できる」


 そう言い聞かせて、敵機を見据えた。

 鼻先をこちらへ向けて、まっすぐ急降下してくる。

 脅しの無線は未だない。

 翼がちかちか、鋭く瞬き――――。


「っ!?」


 反射的に操縦桿を倒すレクセル、〈スー〉が慌てて身を捩る。

 たった今、胴体があった空間を一条の光が焼き焦がし、すり抜けた。


「撃ってきた……!?」


 胴体には燃料タンクがある。

 被弾すれば火災が起きかねない飛行機の急所だ。

 真っ先にそこを狙って来たということは。


 奴らの目的は〈スー〉の積荷じゃなくて、撃墜!


「まさか、〈遊便狩り〉――――?」


 操縦桿を押し込みながら、後ろを振り返る。

 追い立てるように追尾してくる5つの機体は、どれも略奪機御用達の〈サギタリウス〉。

 火力強化モデル(〈デスシャワー〉)ではない、弱い機体だ。


 ――――遊便ばかり襲ってる略奪機がいたの。

 ――――何機も犠牲になったって、噂になっていたわ。


「……違うか」

  

 フェイの言葉を思い出し、レクセルは首を振った。

 

 遊便がただの〈サギタリウス〉ごときに負けるわけがない。

 それにフェイさんの言い方から察するに、〈遊便狩り〉はおそらく単機。

 略奪機たち、とは言っていないから。


「よい、しょっと!」


 ばららら――――と飛んでくる機銃弾を躱しつつ、〈スー〉は空を駆け上がる。

 丸い円のように、1機と5機が連なって宙返り。

 同じ軌跡を描くはずなのに、〈スー〉は少しずつ、略奪機たちの背後へと回り込んでいく。


 前縁スラット展開、フラップ全開。

 スロットルダウン、すぐにアップ。

 

 レクセルが行う、細かい操作の積み重ねが大きな差となつて、敵をじりじりと追い詰める。

 

 そうして、3度の宙返りを終えた頃には。

 最後尾だった略奪機の尾翼が、〈スー〉の目前で揺れていた。

 

「――――取った」


 砲口が咆哮する。

 どん、どん、どんとリズミカルに、5機の尾翼が吹き飛ばされる。

 姿勢を崩した略奪機たちがふらふらと墜ちていき――――〈スー〉の目の前はクリアになった。


「ふぅう……」


 ぱっぱっと開いた落下傘を横目に、レクセルは大きく息を吐く。

 なけなしの5発をなんとか当てて――――残弾は、あと1発。


「はは……さすがにこれは、緊張した……」

 

 気付けば、手の平がじんわりと湿っていた。

 心を落ち着かせようと、レクセルは目を閉じた。

 穏やかなイメージで、頭の中を満たしていく――――。


 川のせせらぎ。

 小鳥のさえずり。

 ハレーの柔肌。


「――――ん?」


 なんか変なの混ざったな。

 首を振って、もう一度リラックス。


 森の木漏れ日。

 星の瞬き。

 かすかな殺気。

 

「――――殺気!?」


 弾かれたように周りを見回す。

 けれど眩しい陽光は雲を照らすばかりで、敵はいない……。


 ……いや。

 太陽を背に、黒い影が。

 それはすぐに大きくなって、こちらに迫る翼の形に――――。

 

「近っ……!」 


 あわてて翼を立てる。

 でも撃たれれば必ず当たる、そんな距離。

 

 間に合わない。

 レクセルはきゅっと身をすくめて、

 

『――――うん、やっぱり気付くか。いい腕だね』


「……………………へ……?」


 聞こえてきた無線に、こわごわと目を開けた。 

読んでいただき、ありがとうございます!

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