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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
004 / シー・イズ・ノット・イナフ

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#19 レクセル、おねえさんといっしょ

「この時間はね、路面電車はとても混むんだよー!」


「そうなんですか……」


「だからみんな地下鉄使うんだけど――――知らないってことは、あなた観光客さん?」


「いえ仕事で来てて……今はそうとも言えますけど」


 レクセルは答えながら、改めて相手を眺める。

 

 パンツスタイルを際立たせる、たてがみのように長い金髪。

 小さな顔にはヒスイ色の透き通った瞳と、小ぶりな鼻が乗っかっている。

 美人だなー、と思った。


 そんなレクセルに、ふうん? と小さく首を傾げて女性は続きを待っていた。

 遊びに行こうかと――――なんてレクセルは答える。


「いいわねー、ドコ行くの?」

 

「……特に決まってなくて。人が多いところとか」


「あはは、じゃあワタシと遊ばない? えーと――」


「レクセルです」


「――レクセル! ワタシはフェイ、よろしくね!」


 フェイは少し身を屈めて、レクセルと握手する。

 意外にも大きくて、しっかりした手だった。

 

 にこりとされて、レクセルは頷く。

 これはナンパ……されたってことでいいだろう。

 やった! と嬉しそうにガッツポーズするフェイに、レクセルは尋ねた。


「遊びっていうか……エスコート、お願いしてもいいですか」

 

「エスコート? いいけど、レクセルはデートがお望み?」


「はい。私、女心に鈍いって言われてしまって、そのために経験を積んでるんです」


「あは、レクセルっておもしろいわね! いいわよ、ワタシに任せなさい!」


 とんっと胸を叩いて、フェイはレクセルの隣に並ぶ。

 てっきり停留所から離れると思っていたので、レクセルはぱちくりと目を瞬いた。


「路面電車に乗っていくんですか?」


「うん、最前列ならギリギリ座れるんだ。ところでお腹は空いてる?」


「……少し」


「じゃあなんか食べ行きましょ!」


 笑顔と共に、ふわりと金髪が広がる。

 よく笑う人だなと思った矢先、レールがきしきしと鳴り始めた。

 次の便が少し早めに来たらしい。






 フェイの言った通り、座席はちょうど2つ空いていた。

 がくんと揺れて、景色がゆったりと動き出し――――いきなり加速。

 ぐううん……とモーターが唸り、きいきい車輪を軋ませながら、並走する自動車を追い越していく。


「……結構、運転荒いんですね」


「どの路面電車もこんなものよ! それよりほら、外見て外!」


 くいくい、親指を後ろに向けてフェイが促す。

 肩越しに窓の外へ目を向けて――――。


「わ……」


 ――――レクセルは思わず息を呑んだ。


 絵画のような、石畳と木組みの町並み。

 歴史を感じさせる佇まいの聖堂、船が行き交う大きな運河。

 レールの音に塗りつぶされてはいても、賑やかな声が聞こえてきそうな笑顔の人々。

 スバルという町がまるで映画のフィルムのように、目の前を次々と流れていく。


「……この路線はね、スバルをぐるりと1周する環状線なの。名所はだいたい見えるわね!」


 顔を並べるようにしてフェイが笑う。

 頷いたレクセルは、ふと思った。


 どこかに行くだけじゃなくて、行くまでの過程も楽しめる。

 フェイさんのエスコートは、もう始まってるんだ。

 

 これが、大人のデート……。

  

 しみじみと感心するレクセルの肩に、金髪が触れた。

 ほんのりした甘さが、思考に混じる。

 ふわりとかすかなココナッツの香り。


「――――ん? どうかした?」


「いえ――――なんでも」


 さっと視線を外すレクセルだったが。

 間近で見たフェイの横顔は、真珠のように白く、透き通っていて。

 窓ガラスに視線を戻してもなお、映り込みに心が揺れるほど、綺麗だった。


 意識して焦点を景色へ合わせる。

 停留所をいくつも過ぎて、町並みはすっかり様変わりしていた。

 

「おっと、ここね! 降りるわよっ」

 

「あ、っはい」


 がたん、と停車の反動で立ち上がるフェイ。

 後を追うレクセルの前で、運賃箱がちゃりちゃり、2人分の音を立てた。


「すみません、払ってもらっちゃって」

 

「いいのいいの! ワタシがエスコートしてるんだから!」


 フェイは手をひらひらさせた。

 大股で進む彼女に続いて、早足で道路を渡る。

 街路樹から覗いた空に、夜がじりじり忍び寄っていた。


「――――そういえば、レクセルってお酒飲める?」


「いえ。まだ未成年なので」


「へえ! レクセル大人びてるから、てっきり嗜んでるかと思ったわ」


 意外そうに目を見開くフェイ。

 割と規則は守るタイプのレクセルであった。

 恋愛モラルはなしも同然なのに。


 しばらく歩いて、ここよ! と案内された先は、分厚そうな木の扉。

 隣の窓からは暖かそうな光が漏れて、かすかにレコードの調べが聞こえてくる。

 チリンとドアベルに促されて、レクセルは足を踏み入れた。


「――――いらっしゃい」


 カウンターから、渋い声がかかる。

 髭を蓄えた初老のマスターは、持っていたシェイカーをことりと置いた。


「や、マスター久しぶり!」


 レクセルの後ろから、フェイが片手を上げる。

 慣れた様子でカウンターに座り、ちょいちょいと手招き。

 突っ立っていたレクセルははっとなって、隣の席に腰を下ろす。


「……あの、ここって」


「うん、ワタシお気に入りのバー! 安心して、ノンアルもおいしいから」


 ――――よりによってバー。

 ナンパ向きだけど未成年だから、と思って行かなかった場所に、まさか連れてこられるなんて。

 不思議な巡り合わせに少しどきっとする。

 

「苦手なものある?」


「いえ、特には」


「おっけー! マスター、ホットサンドとライムトニックを2つずつ!」


 マスターが頷いて、グラスを手に取る。

 物静かな空気の中、フェイの唇がふっと開いた。

読んでいただき、ありがとうございます!

続きは毎日【お昼】に更新!

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