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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
003 / 死ぬのは奴らよ

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#17 レクセル、お別れする

 〈スー〉以外の〈スコルピウス〉が、エンジンを唸らせスピードを上げた。

 レクセルの盾となっていた4機が離れ、今度は矛となって突き進む。

 

 ビエラは照準器を覗き込んだ。

 ちかちか、敵のマズルフラッシュ。

 まだ遠いそれに惑わされず、引き金に指をかける。

 ぐんぐんと迫る略奪機が――――十字線に重なった。


「撃てっ!!!」


 ビエラが叫ぶ。

 息を合わせた4機の射撃が先頭の敵へ集中する。

 すれ違いざまに斬り結び、そのまま揃って昇っていく。

  

『――――敵1機撃墜!』

 

「ええ、でもここからが正念場よ!」


 僚機の報告に嬉しさを滲ませつつ、ビエラは喝を入れた。

 1機減らしたとはいえ、敵の数は5倍近い。

 これから始まるのは、周りを囲まれ、寄ってたかって攻撃される地獄の空戦だ。


 ……下方を見れば。 

 出鼻を挫かれた略奪機たちが逆上し、猛追してくる。

 敵の目が全て、こちらに集中したその隙に。

 がら空きになった封鎖線を、まっすぐ越えていく機体がひとつ。


「そうよレクセル、そのまま行け……っ!」


 みるみる遠ざかっていく〈スー〉を、ビエラは満足げに見送った。

 

 ――――どうかレクセルが。

 無事に、目的地へと着けますように。

 

 心の中で祈ってから、マイクを掴む。

 視線を再び皆へと向けた。


「レクセルは無事に行ったわ! あたしたちはこのまま敵を引き付けるわよ! レクセルを追わせはしないっ!」

 

『『『『了解っ!』』』』

 

 反転し、敵の中へ飛び込んでいく4機。

 白かった機体は煤け、ステンシルは剥げ、操縦桿は手汗で湿る。

 そんな配達人たちは一瞬で、数で勝る略奪機の渦へと飲み込まれた。


『後ろに付かれた、全機散開っ!』

 

『イケヤ右だ、右から敵っ!』

 

『撃墜した、でも3機に追われてるっ!』


 ――――もはや4機編隊は保てない。

 1人1人がばらばらになり、懸命に敵の射撃を躱す。


「……レクセルがいなくたってっ!」


 2機に追われながらも、ビエラは敵に喰らいつく。

 仲間を撃とうとしていた略奪機へ向け1連射、そのまま急降下。

 感謝の無線が響く中、決意を込めて――――。


「あたしが、みんなを守るんだからっ!」


 ――――吠えた。


 エンジンが唸り、敵が墜ちる。

 銃口が赤熱し、敵が砕ける。

 危険を顧みず、仲間のピンチへ飛び込んでいくビエラ。

 それはレクセルと同じ、救世主の姿であった。


 ……しかし。

 そんな彼女を略奪機が放っておくはずはなく。


「っ…………!?」


 また1機、墜としたその時。

 ぞわりと背筋に悪寒が走る。

 慌てて振り返ったビエラは、思わず呻く。


「嘘、こんなに……っ?」


 背後に連なる敵の群れ。

 その数は10機――――生き残っている敵が全て、ビエラ1機を狙っていた。


『急げ、隊長を守れっ!』

 

『隊長ーっ!』

 

『させないぃっ!』

 

 今度は同僚たちがビエラを助けようとするが、あまりにも敵が多い。

 急いで最後尾の敵へ追いすがるも、ビエラは依然として攻撃に晒され続ける。

 

「ぐうぅっ……!」


 押しつぶされそうなGに耐え、右へ左へ機体を揺らす。

 僅か数センチの差で被弾を躱し、安心する間もなく翼を捻り、また躱す。

 

 ごりごりと精神が削られていく。

 体力が汗と共に流れ出ていく。

 しかし諦めれば、その時点で死ぬ。


「うぅ、ううっっ……ふぐぅうっ……!」

 

 辛くて、怖くて、思わず涙が漏れた。

 けれど目を見開いて後ろを睨む。

 射線を見極め、機体をずらしたその間から、仲間が懸命に敵を墜としてくれているのが見えた。

 もう少しの辛抱ですと、励ましの無線まで。


 ……でも、やっぱり持ちそうにない。

 頭も視界も、霞がかかったように朦朧としている。

 

 気を失う、せめてその時まで抗い続けないと。

 みんなが逃げるまで、囮にならなきゃだから……。


「――――みんな、あたしを置いて逃げなさいっ……」

 

『『『隊長っっっ!』』』

 

「……ごめんね」


 ふっ、と糸が切れたように。

 ビエラの機体がふらついて、敵の正面へ。

 転瞬、赤い閃光が走った。


『いやあああぁっ!!!』


 視界を覆う爆発。

 後ろを追いかけていたイケヤが絶叫する。

 

 目前で、吹き飛んだ翼がくるくると落ちていく。

 思わず目で追ってしまい――――イケヤはそれが白い翼(配達人)ではないことに気が付いた。


『……え?』


 疑問に思ったのも束の間。

 どん――、どん――、どん――――。

 鳴動を合図に、敵が粉々になっていく。


『……なん、で』

 

 呆気にとられたのはイケヤたちのみならず、死を覚悟したビエラもであった。

 そんな配達人たちの下方からは、上昇してくる機影がひとつ。


 ――――重い機体を無理して引っ張る、ブーストがかかったエンジンの唸り。

 白いボディに輝いているのは、〈C.X.〉のステンシル。


『レクセルっ……!?』

 

『さっきぶり――――っと』


 最後の敵をジュラルミンの吹雪に変えて、レクセルはぐおぉんと〈スー〉を寝かせる。

 水平になった機体を滑らせ、満身創痍の配達人たちと翼を並べた。


「やっぱりさ、4機だけは無謀だと思って――――」

 

『おバカッッッ!』


 遮るようにビエラは怒鳴った。


「――――え」

 

『『『同感っっっ!』』』


 仲間たちも怒鳴る。

 固まるレクセルに、限界だったはずのビエラが更に怒声を叩きつけた。


『あんたが墜ちたら元も子もないのっ! どうして戻ってきたりするの!!!』

 

「でも」

 

『でもじゃない! 前だけ見てろって言ったじゃないっ!』


 ほんと信じられない。

 なに考えてるのかわからない。

 あたしたちが墜ちても、レクセルには責任なんてない。むしろ積んでいる荷物になにかあったら大問題。

 

 それなのに、なんで戻ってくるのよ。

 なんで、助けに来ちゃうのよ……っ。


『でも――――友達が死ぬのは嫌だし』

 

「………………」


 ぶっきらぼうな無線に、その答えを告げられて。

 思わず絶句していると、更に付け加えられる。


『余所者の私に、みんな仲よくしてくれた。1週間も一緒に戦ってきたし』


『私、みんなのこと好きだから。見殺しになんて出来ない』

 

「そんな、好きだからって…………あ」


 ビエラはその時、唐突に理解した。

 

 ……こいつ。

 あたしの好意を分かってなかったのか。

 ていうか、そっち方向にものすごく鈍いんだ。


 思い返せば、あれだけノンデリだと思ったシャワーでのことだって。

 レクセルが友達とのじゃれ合いだと捉えていたなら、別に非常識ではない。

 

 あぁ……このひとは恋を知らないんだ。

 恋をしたことがないんだ。

 

「はぁ……」


 ビエラは半笑いでため息をついた。

 こいつはこれからも、無自覚に人をオトして。

 そして好意に気付かずに、ふらりと去っていくんだろうな。

 そう思ったら、なんだか気持ちが軽くなった。


『それじゃ、私はもう行くよ。……怒られたし』


 レクセルから若干拗ねた声が届いた。

 仲間たちが無線越しに、次々に感謝を伝えている。

 一段落したのを見計らって、ビエラもマイクを取った。


「――――レクセル」

 

『ん』

 

「あんたのバカのおかげで生かされたわ。……ありがとう」

 

『うん、無事でよかった。んじゃ――――』

 

「待ちなさい、最後にひとつだけ」


 ガラス越しに、うへーとなるレクセルが見えた。

 お小言ならもううんざり、なんて顔。

 ……全く、ほんっと鈍いんだから。

 ビエラはフンと目を逸らして、言葉を吹き込んだ。


「あんたが好きよ、レクセル」

 

『そ、私も――――』

 

「言っとくけれどこれ、恋愛的な意味だから!」


『へっ…………?』


 ぴしり。

 レクセルは固まった。

 

 恋愛的な……って、え?

 友達じゃなくて、恋人の?

 それはハレーが言ってたのと同じ?

 ええと…………?


「――――そ、それはどうも……あ、返事は」

 

『いらないわ。あんたとどうこうなりたいわけじゃないし!』


 レクセルは、わけが分からなかった。

 突然の告白に、思考が置いていかれてしまう。

 応答しようにも、言葉が形にならない……。


 でも、ビエラはそれを分かっていたみたいに。

 してやったりと、意地悪く笑った。


『だからやっぱり、デートの誘いはお断り! さっさと行きなさいっ!』


 無線が震え、くるりと翼が翻る。

 4機の配達人が、〈スー〉を置いて帰っていく。


『さよなら、レクセルさま!』

 

『またねー!』

 

『お達者で!』


 別れの言葉が届く。

 レクセルが声を絞り出す前に、一際大きくスピーカーが鳴った。


『ありがと、レクセルっ!!!』


「――――あ、ええと! ……あれ? もう聞こえてない……?」


 レクセルは振り返る。

 〈エンベロープ•エクスプレス〉の仲間たちは、すでに見えなくなっていた。

 告白の意味、まだわからないのに……。


「…………これが、女心ってヤツかぁ」


 ため息混じりにそうぼやく。

 まだまだ経験不足なんだな、とレクセルは思って。


「――――しっかり女の子と付き合ってみなきゃ」


 まーた、罪を重ねるつもりなのであった。

読んでいただき、ありがとうございます!

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