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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
003 / 死ぬのは奴らよ

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15/40

#15 レクセル、シャワーにて

 次の日の朝。


「……どうしたの」

 

「――――っ! なんでもない!」


 目覚めたら、なぜかじっと見られていた。

 声をかけると、ビエラははっとなってそっぽを向く。

 昨日の夜、なんかしたっけ……とレクセルは首をひねった。


「あぁ、話の途中で寝ちゃったことか。悪かった」

 

「別に怒ってないわよ……!」

 

 どこか自分へ言い聞かせるようにビエラは答える。

 ……なんかとげとげしてるよな。

 いくら考えても理由はわからず、レクセルは諦めて毛布を畳んだ。

 

 顔を洗って髪を整え、少しばかりの化粧をする。

 朝礼があるので、すこし急ぐ。


「――――何時からだっけ」

 

「あと10分で始まるわね」

  

 配達人の制服に着替える頃には、2人とも、すっかりいつもの調子に戻っていた。





 

「――――皆のおかげで封鎖は崩壊しつつある。遅くても1週間後には、通常便を再開できるだろう」


 女社長の言葉に、大きな歓声が上がる。

 連日敵と戦っていれど、本来の仕事は郵便配達。

 空戦はみんな、できれば避けたいのが本音なのだ。

 安堵の囁きが配達人たちの間を飛び交った。

 

 誰かがぽつり、ここまで長かったねぇ……と口にする。

 3週間くらいずっとだもんねー、と誰かが返す。 

 その言葉に、いきなり社長が口を挟んだ。


「――――そう、ずっと物流は滞っていた」


 まだ話は終わっていない。

 ざわめきが収まり、配達人たちは背筋を伸ばす。


「封鎖は不可抗力、我々に責任はもちろんない。しかし荷物には、遅配が許されないものもある。封鎖解除を待っていては間に合わない」


「そこで、急ぎの荷物だけを先行して届けることにした。1機に積めるだけ詰め込み、他が略奪機を抑えている間に封鎖を強行突破させる」


 再びざわめきが広がった。

 なんて強引な。

 

 しかし遅配を避けるには、確かにその方法しかない。

 仕方ないか、といった空気が流れ出す。

 全機ばらばらに突破を図るよりは生存率も高く、冷静に判断するならば最も優れた作戦だろう。


 ……突破する1機に、大きなリスクがかかること以外は。


「幸い、現在〈エンベロープ・エクスプレス〉には腕利きの救世主が来ている。……レクセル、頼めるか」


 一斉に視線が救世主――――レクセルへ向かった。

 この1週間で、誰もがレクセルの強さを実感している。

 まとめ役のビエラでさえ、自分じゃ敵わないと認めるほどだ。

 1人で敵中突破できるのは、実質レクセルを置いて他にいない。


 期待と心配が溶け合った眼差しを一身に受け、小さく息を吐くレクセル。

 顔を上げて、頷いた。

 

「ええ、お任せを」

 

「感謝する。決行は3日後、それまでは今の業務を続けてくれ。以上、解散!」


 ばらばらと配達人たちが散る。

 その中にひとつ、足早に近付いてきた靴音へ、レクセルは振り返った。


「……行ったら戻っては、来ないのよね?」

 

「そうだね、突破したら次の街へ行かないと。遊便ってそういうもんだし」

 

「そう……」


 2人は滑走路へ向かって歩く。

 いつもより口数が少ないビエラを見て、レクセルは軽く尋ねた。

 

「……心配してくれてんの?」

 

「心配なんてしてないわよ、あんた化け物みたいに強いんだし」

 

 ――――まぁ。

 寂しくなるな、って。


 呟きが、小さく付け足される。

 ばっちり聞こえたレクセルは、ふっと笑みを漏らした。

 

「っ、ほんのちょっぴりよ! あと戦力が減るのは痛手でしょ!?」

 

「ビエラも強いから大丈夫だろ」

 

「ええそうねっ!」


 つっけんどんに言って、たたたと愛機へ駆けていくビエラ。

 その後ろ姿を少しだけ目で追ってから、レクセルは〈スー〉の元へと歩いていった。

 戦いの日々は、あっという間に過ぎていく。



 



 かちん、と残弾計のカウントがゼロを示した。

 爆炎の中を突っ切り、〈スー〉は飛行場へ機首を向ける。

 今日襲ってきた略奪機は、今撃墜したのが最後であった。


「危なっ、ギリじゃん……っ、はぁっ……」


 荒い息をつき、レクセルは額の汗を拭う。

 相変わらず出てくる敵が多く、本当に封鎖を崩せるのか不安になってくる。


 強行突破は明日に迫っているというのに。

 これが最後のあがきであると信じたい。

 

「――――レクセル、無事よね!」


 上昇してきた〈スコルピウス〉が1機、隣に並ぶ。

 こちらを見るビエラへ、レクセルはガラス越しに手を挙げた。


「無事、だけど弾切れ。そっちは?」

 

「あたしも。もう敵はいないし、帰るわよ!」

 

「了解……てか、なにもビエラまで残らなくても。みんなと先に帰ってよかったのに」

 

「あんたバカ!? いくら敵が少なくなったからって、1人で残すわけないでしょ! なによ、『後は私1人でやるから』って!」


 ぷんすか無線が吠える。

 確かにそうだな、とレクセルは少し反省した。


 明日のイメトレとして、単機で大勢を相手取ってみたのだが……弾が足りなくなりかけた。

 ビエラが残って、撃ち漏らしを追っ払ってくれなかったら危なかったかもしれない。


「まったく。……あー早くシャワー浴びたい!」

 

「……だな。今日は汗かいた」

 

「あたしたちの貸し切りかもね、みんな先に出てるだろうし?」


 軽い雑談を交わしつつ、2機はパラナルへと戻ってきた。

 整備士に弾薬補給を念押しして頼み、部屋から着替えをかっさらいつつシャワー室へ直行。

 暖かい湯気は残っていたものの思った通り、同僚はもういない。


 2人並んでキイキイとハンドルを回す。

 熱いお湯を浴び、思わず吐息が漏れた。


「あ゙ぁあ〜……」

 

「……あは、レクセルおじさんみたい」


 ビエラが笑って伸びをする。

 彼女はといえば、気持ちよさそうに目を細めていた。

 そのお腹あたりに向かって、レクセルはいきなりシャワーを向けた。


「ひゃあぁあ!?」

 

「……ふーん、なかなかえっちな声」

 

「さいってー! 仕返しよおりゃっ!」

 

「ふぃ〜〜〜気持ちぃ〜〜〜」

 

「目を細めるなあっ!」


 笑い声が反響する。

 ひくひくするお腹を押さえ、2人は一時休戦ということにして髪を洗い始めた。

 しばらく、水音だけが大きく響く。

 シャンプーの泡が、もこもこと流れていった。


「…………ねえ、レクセル」

 

「んー」

 

「あたしね? 最初はあんたのこと、顔がいいだけのクズ野郎だって思ってた」

 

「結構酷いな」


 割と強火の評価に苦笑するレクセル。 

 まぁ出会って早々ナンパしたしな……と納得はする。

 身体を磨きながら、少しずつ紡がれていく言葉へ耳を傾けた。


「……でも、あんたはとっても……いいやつで。周りをよく見てて、誰かがピンチの時には必ず助けに来るし。めちゃくちゃに強いくせに、それをひけらかさないし。……それでみんながあんたにオチてるのはちょっとムカつくけど!」

 

「……オトすつもりはないんだけど」

 

「だから余計たちが悪いの! ほどほどにしないと、いつか拗れて襲われちゃうわよ?」

 

「気を付けるよ。まあ返り討ちにするけど」

 

「飛行機操縦してる時の話じゃないわよ! あんた空じゃ敵なしだけど、地上ではどっか抜けてるんだからね!」

 

 ビエラは自分のシャワーを止めて、立ち上がった。

 座っているレクセルの肩を、しっかりしなさいよと軽く叩き――――。

 

 ぴとり。

 後ろからくっついて、言った。


「……油断してたら、こうやって刺されちゃうわよ」


 お腹に回されたビエラの両手。

 それをふにふにと触りつつ、レクセルは返す。

 

「でもナイフとか持ってないじゃん」

 

「…………はぁぁ」


 ため息をつくビエラ。

 きゅ、と手に力をこめて、抱き締めて。


「…………察しなさいよ。ばか」


 か細い声で、囁いた。

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