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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
003 / 死ぬのは奴らよ

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#14 レクセル、戦って寝る

「あんたの空戦スキルが頭おかしいことだけはよく分かったわ……」

 

「それはどうも」

 

「ほんと、なんで配達人やってんのよ……空軍のエースパイロットだって言われた方がまだ納得出来るって――――」


 ――――ぴこん。

 その時、ビエラの頭上に電球が灯った。


「……あんたも、今の状況じゃ仕事出来ないわよね?」

 

「まぁ航路封鎖されてるしな」

 

「うちの会社から他に頼まれてる仕事ってある?」

 

「ないけど」

 

「じゃあさ! あんた、あたしたちと略奪機退治しない? 掃除はみんなでやれば早いって言うし!」


 レクセルの、常人離れした強さ。

 いつもは降りかかる火の粉を払うだけだったそれを、攻め手として使ったら。


 …………封鎖中の略奪機なんて、あっという間に排除出来てしまうのでは?


 ざわざわと囁きが広がる。

 期待する声がだんだんと増えていく。

 その空気に応えるように、ビエラは前かがみに言葉を重ねる。


「今日みたいな一幕がまた起きても、あんたがいれば助けられるかもだし! もちろん報酬は出すからその…………どう!?」

 

「……なるほど」


 レクセルはジュースの残りを飲みこんだ。

 ちらりと周りを見やってから、赤いツインテールへ視線を戻す。

 そして頷いた。


「ん、わかった」

 

「ほんと!? 後からやめたって言うのはナシよ!?」

 

「疑い深いなー」


 うおおー! と歓声が上がる中で、2回目の握手が交わされる。

 んんっと咳払いして、ビエラは背筋を伸ばした。


「じゃあ、社長にはあたしから話を通しておくから――」

 

「あ、それはしないで大丈夫」

 

「――――えっ?」

 

「ビエラたちを追っかける前に、社長のとこにへ顔出したんだけどさ。そのとき同じこと頼まれたから」

 

「あんった…………頼まれてる仕事あるじゃないのよっ!!!」


 ビエラは吠えた。






 それからというもの。

 レクセルは助っ人としてビエラたちと翼を並べ、航路を封鎖していた略奪機たちをどがーんぐしゃあと掃除しまくる、刺激的な日々を送りましたとさ――――。

 

 しかし物語は、ここでは終わらない。

 パラナルへ来て1週間、封鎖は未だに続いていた。


「イケヤ、後ろに敵! 回避しろっ!」

 

「うそ、なんてこと!」


 うおおん……とエンジンの唸りを響かせて、白い翼を略奪機が追う。

 敵は性能が低い〈サギタリウス〉だが、なにしろ数が多い。

 気付けば後ろに付かれている――――ということが多々起こる、そんな戦いの空である。


 イケヤが操る〈スコルピウス〉も、まさにその状況であった。

 〈サギタリウス〉の機銃口が瞬き、銃弾の雨が機体を掠める。

 そのいくつかが命中し、ガンガンと〈スコルピウス〉を揺らす。


 右へ左へ旋回しつつ、懸命に逃げるイケヤ。

 しかし真後ろにぴたりと付かれ、振り切れない。

 辛うじて致命傷は免れているが、敵が撃つ度に機体の穴が増えていく。


「わわ、だめ……っ!」


 翼に被弾、燃料タンクを貫通。

 空いた穴からガソリンが噴き出すのを見て、イケヤは悲鳴を上げた。

 もし発火すれば一瞬で火だるま。

 絶望の眼差しを背後へ向ければ、敵パイロットの邪悪な笑みがすぐそこに見えた。


「ふ、振り切れないぃ……っ」

 

『――――イケヤ、そのまま動くなっ!』

 

「……ふえっ?」


 唐突に無線が怒鳴った、その刹那。

 背後の略奪機が弾け飛ぶ。

 爆風に押されてつんのめるイケヤ機を、するりと追い越す機体がひとつ。

 側面に描かれた〈C.X.〉が、イケヤの目に飛び込んできた。


「れ、レクセルさまっ!?」

 

『間に合った……っ。ちゃんと周りに気を付けて!』

 

「は、はいぃ……ありがとうございますっ!」


 一声かけただけで、レクセルはあっという間に飛び去ってしまった。


「…………救世主さまだぁ……」

 

 その後ろ姿を見つめて、ぽぅと頬を染めるイケヤ。

 疲れ気味の声で少し心配だけれど、むしろドキドキしてしまう。

 いけないいけない! と頬をぺしぺし叩くも、熱さはぜんぜん引いてくれなかった。


 ――――と、毎度こんな調子で。

 ピンチを救っては片想い勢を量産してきたレクセル。

 この日は特に忙しく、5機の略奪機を撃墜し、5人の配達人の心をオトした。

 

 ……罪深いことに後者は無自覚である。

 なお、これで同僚の9割がオチた。

 

 



  

「……だいぶ敵を墜としてきたけど、配達はまだ無理かー」


 硬いベッドに寝転びながら、レクセルが呟く。

 パラナルには長い滞在になるとあって、〈エンベロープ・エクスプレス〉の社員寮を使わせてもらっていた。

 所属する配達人たちが寝泊まりするこの寮は、相部屋が基本である。

 

「周辺の略奪機が共謀して集まってきてるのよ……すぐに後詰めが来るんだもの、これじゃイタチごっこよ!」


 向かい側のベッドでぷんぷん返すのは、ビエラ。

 隊長だからと単独で割り当てられていた部屋だったので、ちょうど1人分のスペースが空いていたのだ。

 そこへレクセルが収まったわけである。


「ならここで撲滅しちゃえば、しばらくは略奪機に襲われる心配がなくなる訳か。かえって好都合だな」

 

「撲滅できればの話でしょ! って、あんたならやりかねないわね……」


 ずるい、とビエラは思う。

 美しい容姿だけでは飽き足らず、空戦の腕は超一流。

 なのに驕るわけでもなく、己の身を顧みずにピンチへ駆け付ける仲間想いな性格。

 まるで人に好かれるために生まれてきたようなカリスマ性で。


 ……こんなの、誰だって惚れるわよっ!


 癪になって、枕に顔を埋める。

 自分の息の熱さが、認めたくない本心を思い知らせてくる。

 なんなのよっ……。

 なんでこんなヤツ好きになっちゃってるのよ、あたし!


 ……ぜんっぜん寝られない。

 だって寝言が届く距離に、レクセルがいる。

 鼓動が身体を揺らし、ベッドの硬い感触ばかりを伝えてくる。

 寝返りをうったり毛布を被ったり、悪あがきをするもやっぱり寝られず――――。


「……あーもうっ!」


 ビエラはがばっとベッドから出た。

 心を掻き乱す元凶へ向かって、ぺたぺた歩みを進める。

 寝息が聞こえないし、起きてるわね。


「……ここのベッド、硬くて寝られないって評判なのよ。慣れてないとキツいでしょ」


 小さな声で言いながら、レクセルの側まで来た。

 プラチナの髪が、月明かりに輝いている。

 ごくりと喉を鳴らし、ビエラは思い切って口を開いた。


「あ、あんたも寝られないなら……少し話さない?」


 ……レクセルの首が動く。

 横を向いていた顔が、正面へ。

 ビエラは恐る恐る、返事を待つ。


「……ねぇ、なんか言いなさいよ――――?」


 ――――そして絶句した。

 レクセルは、なんと既に寝ていた!

 寝息なんてほぼたてず、静かに熟睡していたのだ!


「う、うそでしょ……」


 ビエラはよろよろと後ずさる。

 彼女は知る由もなかった。

 レクセルは操縦席と同じような、硬い寝床がお気に入りだということを……。


「……よくそんなすぐに爆睡できるわね! こんな硬いベッドで、もうっ!」

 

 ぷりぷり文句を垂れながらベッドへ戻るビエラ。

 ――皮肉にも、ムカついたせいかすぐに寝れた。

読んでいただき、ありがとうございます!

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