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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
003 / 死ぬのは奴らよ

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#12 レクセル、置いていかれる

 ……こいつ、今なんて言った?


 ビエラは思わず目を瞬く。ぴくっ。

 理解しようとしたが思考が停止し、ぴくぴくっ。

 ぴくぴくぴくぴくぴく――――。


「……瞬き、すごいことになってるけど」

 

「だっ誰のせいよ誰の!!!」


 目元を押さえて叫ぶビエラ。

 ごくりと喉を鳴らしてから、はぁ……とため息をついて人差し指を立てた。


「――――いい? 育ちのよさそうなあんたは知らないかもしれないけど、デートって遊びの誘いじゃないの。これじゃまるっきりナンパになってるわよ」

 

「いや、ナンパしてるんだけど」

 

「わかっててやってんの!? 信じらんないっ!」


 レクセルを睨みつけるビエラ。

 そんな彼女に、配達人たちがすすす! と寄ってくる。


「いいじゃないですか、レクセルさんめっちゃ美少女ですよ?」

 

「隊長も負けてませんって、むしろお似合いです!」

 

「てか正直、満更でもないですよね?」

 

「隊長気が強くて恋人いないんだし、これはチャンス――――」


「――――だああうっさいわね! どっか行って!」


 吠えたビエラににやにやしながら、人の波が引く。

 肩で息をしながら、ビエラはレクセルへビシッと指を突き付けた。


「少しくらい顔がいいからって調子乗らないでよね! あんたの顔なんて、全っ然好みじゃないんだからっ!」

 

「……そっか。私はビエラの顔、割と好きだな」

 

「〜〜〜〜〜〜!!!」


 怒りからか、照れからか。

 赤いツインテールと肌の境目が、若干わからなくなってきた時――――。


 ――――カンカンカン、と耳障りな音が響き渡った。


「やっべ、掃除の時間だ!」

 

「隊長お先ですー!」

 

「略奪機どもをぶち墜とそー!」

 

「「「「おおおおおおっ!!!」」」」


 配達人たちが一斉に駆け出す。

 滑走路に次々と機体が引き出され、プロペラが元気よく唸り始める。

 その場にはぽつり、ビエラとレクセルだけが残された。


「――――これが掃除? 隊長?」

 

「…………航路掃除よ。〈エンベロープ・エクスプレス〉は自分たちで封鎖している略奪機を強制排除することにしているわ」

 

「……遊便でもないのに、戦闘しに行くってこと?」

 

「仕方ないでしょ、物流止まっちゃってるんだから!」

 

「――なるほど。それでビエラが隊長ってわけか」

 

「……そうよ!」


 てきぱき、ビエラはツインテールを団子にする。

 開けていた前のボタンを留めて、コンコンとつま先を鳴らし。


「……ナンパはお断りよ。だってヒマじゃないもの」


 フンと鼻を鳴らして、自分の愛機へ走っていった。






 まるで鍛え抜かれた空軍のように、編隊を組んだ飛行機が離陸してゆく。

 どの機体も白い塗装に赤と青のストライプ、ステンシルは〈E.X.エンベロープ・エクスプレス〉。

 元は戦闘機だったといえど、今は配達人たちの足として使われている機体――――レクセルと同じ〈スコルピウス〉であった。

 もっとも通常モデルなので、〈スー〉のように戦車砲は積んでいない。


 4機ずつ3つの方向へ別れた、真ん中の編隊。

 ビエラ機を先頭に、各々が索敵をしつつ空を進む。

 そんな中聞こえてきたのは、男まさりな女性配達人――アトラスの声だ。


『……いや面白かった。まさか隊長がナンパされるなんてねぇ』

 

『あんな綺麗なひとを逃す手はないですよー! もちろんオッケーして来ましたよね?!』

 

「断ったわよ!!!」


 ぶちぶちと無線機がひずむ。

 えーもったいなーい、なんて残念がる仲間たちに、ばっかじゃないの! とビエラは怒鳴った。


「あたしと同い年で遊便なんて、どんな完璧配達人かと思ったら! とんだ色ボケ野郎だったわ!」

 

『隊長、少なくとも野郎じゃなくて美少女です!』

 

「どっちでも変わんないわよ! ……()()()()()()のが余計ムカつく!」

 

『『『おおー』』』

 

「……なによ!?」


 へらへら誤魔化す配達人たちは、隊長がかわいくて仕方がない。

 チラチラと風防ごしに顔を見合わせては、ほほえまだねーと笑い合う。

 そんな中、真面目な声がぴしりと混じった。


『――――10時下方に機影。複数機ですよ』


 たちまち緩んだ空気が変わる。

 翼を傾けて、各々が同じ方向に目を凝らす。

 程なくして、黒い粒がぽつぽつと見えてきた。

 トガリネズミのようなシルエットからして、機種はおそらく〈サギタリウス〉。


『視認した。略奪機、数6!』

 

『いつもより多い……徒党を組まれましたか』

 

『隊長っ、どうしますー?』


 尋ねてはいても、その声は返事をわかっている声だ。丁寧で明るい口調に闘志が漏れている。

 

 まったく、傭兵のほうが向いているんじゃないの? とビエラはため息をついてマイクを掴んだ。


「……不意打ちを仕掛けるわ。直上から急降下で先頭機を狙う!」

 

『『『了解!』』』


 ヴイイ、とエンジンが唸りを上げる。

 くるりと背面飛行になって、4機は眼下の略奪機を見据え――――。


「全機突撃!」


 ビエラの号令一下、一斉に翼を翻した。

 

 重力に引かれるがままの急降下。小さかった敵のシルエットがどんどん大きくなる。

 照準器いっぱいに略奪機の上面が広がった次の瞬間、同時に射撃。

 12.7ミリ弾が敵を突き刺すただなかを、4機は一体となってすり抜けた。


『――――敵、2機大破! 離脱していきます』

 

『残りの4機、追ってくる!』

 

『でもこっちのほうが優速、引き離してますー』


 後ろの2機が状況を知らせる。

 ビエラは頷いて、振り返りつつ返事を返す。


「敵を食い付かせたまま急上昇っ! 敵が失速後、反転して仕留めるわよ!」

 

『『『了解!』』』


 スピードを高度に変えながら、ぐんぐんと昇っていく〈スコルピウス〉。

 しつこく追いすがる略奪機だったが、すぐにスピードを使い果たし、ふらふらと失速してしまう。

 その上空で、ビエラたちは降下に転じた。


 スピードがない戦闘機は、思うように動けない。

 接近する脅威が見えていても、避けられない。

 

 4機の略奪機はなすすべもなく、次々と穴を穿たれた。

 錐揉みに陥る中、せめてもの足掻きに所構わず機関銃を乱射する。


 ――――それが奇跡的にも。

 運悪く、離脱していく白い翼へ向かっていき……。


『……っ! アトラス機、被弾した!』

 

「んなっ!?」

 

『ごめん、最後っ屁を食らった。戦闘続行不能!』


 慌てて振り返るビエラ。

 最後尾にいたアトラスの機体が煙を吐き出し、みるみる速度を落としていく。

 敵が背後で墜ちていく中、ビエラたちは心配そうにアトラスの隣へ翼を並べた。 


「――――損傷状況は!?」

 

『……エンジンの出力が上がらない。飛ぶだけならなんとか』

 

「わかったわ、アトラスは先に帰還して。付近に敵はいなそうだけど、もう少し見回ってから帰るから」

 

『了解……ごめん、みんな』


 不規則なエンジン音を残し、離脱するアトラス。

 高度を落としつつ慎重に旋回して、ふらふらと帰り道に着く。


「単機で帰して大丈夫かしら……」

 

『付いていきたいですが、そうすると』

 

『こっちが手薄になっちゃいますし……』


 ……このまま、一緒に帰還したほうがよかったんじゃ。ビエラの心に迷いが生じる。


 ――――そこに、隙が生まれ。

 2つ目の奇跡が、起ころうとしていた。


「――――ッ!?」


 禍々しい影が目の前を横切る。

 風に煽られ、機体がぐらぐら揺れた。

 黒煙を纏って、一目散に急降下していくのは。


『あいつまだ墜ちてなかったの!?』

 

『まずい、狙いは手負いのアトラス……っ!』


 さっき、撃墜したはずの略奪機が1機。

 満身創痍なその姿は、飛ぶというより落ちていく向きを変えるだけが精一杯。

 ……ただその先にはアトラスがいた。


「アトラスッッッ!!!」


 ビエラたちは慌てて降下を始める。

 わかってはいる、到底間に合う距離ではない。

 それでもスロットルを全開にして、奇跡を祈りつつ空を駆ける。

 

 迫りくる復讐の塊に気付いて、アトラスは回避を試みる。

 だがそのエンジンに、逃げる力は残っておらず。


 『速度が、出ないっ……!』


 ゆったりと、のろまにもがく傷付いた獲物を――――ついに満身創痍の獣が捉えた。

 振り向くアトラスの瞳に、燃え盛る略奪機の銃口が大きく映る。

 撃てばまず外れない、必中の距離。


「い、いやっ……!」


 子供の頃にやめたはずの、乙女らしい悲鳴を漏らし。

 アトラスはぎゅっと目を瞑る。

 大爆発が起こった。

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