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爽やかな休日の朝…。
「父親が急に倒れた」から「父親の葬式」までが思い起こされた。それから氏名やら住所やらを訊かれ、身分証明書の提示を求められ、何らかの書類へのサインを書かされた。何だか先日の入院三日目みたいだった。それからいつの間にか警察を呼ばれていた。「ていた」というのはここの辺りでもちょこちょこ細かく記憶が抜けているのだ。霞がかかっているというよりは記憶がない。意外だったのはいつの間にやらやって来ていた二人の警察官は、二人ともスーツ姿だったということだった。所謂、お巡りさんの制服姿の人ではなかったのだ。「警察手帳を見せて貰ったわけではないから、もしかしたら警察じゃないのかも」とも思ったのだが、冷静に考えてそれはなかった。コンビニの店員がわざわざ一一〇に電話番号を掛けて警察官でもない人間をバックヤードに呼んだとは考えられない。警察は警察で私に氏名だの住所だのを尋ねてきた。これは事情聴取というのだろうか、はたまた取り調べというのだろうか。身分証明書の提示も、無論、求めてきた。デジタルカメラで顔写真とともに撮影された。スマホじゃないのが何故だか新鮮だった。コンビニと警察の違いは、そこから警官の一人が私の出自を質問してきて、なので私は自分の出身地と実家の住所を答えたらしい。「なので~らしい」というのは、そこでもまたちょっと記憶が抜けているからである。次の記憶では、警察が電話をしていたのだが、後になってわかったのは、その相手というのは――
それから警察官の内の一人が、「あなたはこれまでずっと何の問題もないいちお客さんだったので、店長さんは今回のことを大事にするつもりはないそうです」と言われた。そういえば、いつの間にか、稀に店内で見かけた店長っぽい人もバックヤードにいた。いつの間に現れたのだろうか? どうもこの辺も記憶が抜けているっぽい。フタを開けたカルピスウォーターと自由落下させた五〇〇ミリリットルの紙パックの低脂肪乳を買い取ることになり、ようやくコンビニのバックヤードから解放――帰宅することを許された。「本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げ謝罪し、帰路に着いた。二人の警察官同伴で。アパートの自室の前まで来て、「どうも今回はお手数をお掛けしました」と今度は警察に頭を下げ謝罪すると、「二度とするんじゃないよ」みたいなことを言われた。刑務所から釈放されて娑婆に帰る時に所員の人に、「もう二度と戻ってくるんじゃないぞ」と、声を掛けられている様を連想させた。それから部屋に入って暗がり中、万年床の上で胡坐をかき、「一体何が起こったんだろう?」と我ながら不思議がっていると電話がかかってきた。親からだった。そこで初めてさっきコンビニのバックヤードで警官の一人と電話していたのが親だと知った。そこからは私の体調のことに関して、「本当に大丈夫なのか?」と訊かれて……。その先はまたも記憶がない。親と話している最中に漸く薬が効いて寝落ちしてしまっていたらしい。またもや親に余計な心配させてしまった。
オレンジ色の大きめの粒が一つに黄色い楕円形の粒が二つ、それから大きさの違う白い粒が五つ。私の飲んでいる眠剤は唐突に効く。徐々にではない。じつは直近の入院以前はそんなことはなかった。全く効かないことも――寝られず、寝られても睡眠が浅く、寝られてもあまり寝ていられないということも珍しくなく、効果がない、あってもあまりないといことで、もっと強力にして欲しい、“盛って”欲しいと医者にお願いしたのだが、「もう限度いっぱいで、これ以上増量するのは薬事法に抵触する」と謂われた――あったのだが、入院している間にそうではなくなったらしい。突発的に効くようになったのは、それに気付いたのは、気付かされたのは、先の退院の直後の服用に因ってであった。だから退院後最初に服用した時にはそんな体質になっているとは露とも知らなかった。田舎の部屋の布団の中にあっても、「眠い」という感覚は一切なく、
(まあ、たっくんみたいに大声を張り上げることもないだろう)
いつの間にか眠りに落ちていた。




