その2の3
「帰り道は貴方方のお子さんたちに揶揄われて来ました……。」
げっそりとしてしまった。ーーいやいや、沢山話が聞けたのは良かった。
「あら? 揶揄った? どんな揶揄いをしたのかしら〜? ちょっとお母さんに聞かせてーーくれないかしら? あなたたち〜? 」
「母さん、おやすみ。」
「俺も〜……。」
「お、おやすみなさ〜いーー! 」
「ま〜〜〜! ーーまぁ良いわ。また明日。」
「兄貴の所為で明日母さんに絞られる……。」
「オレだけの所為じゃないよ。」
「私は何も悪くない……。」
「『何も悪くない』って言っている時のあなたはーー反省はしているのよね? それもまぁ良いわ。許しましょう……。でもね? 明日お話し、しましょうね? 」
母親は布団に潜り込んで身を隠す子供たちに声を掛けた。
「……。」
「ーー返事が無いな? 」
「は〜い……。」
(おぉ、鶴の一声……。父の威厳? か? )
「ーーわざわざ遥々海外から」
「イタリアから」
「その人イタリアから来たってさ」
長男くんと次男くんの顔がひょっこりと布団から出てきた。
「そう……。仲良くなったのね? ーーイタリアからこちらに来ていただいて、ーーワタシたちの事でーー誤解があると思うの。ワタシは、ほら、あれーーえっとーー? 」
「実家に近いだな? 」
「そう! そうなの。実家近くに越して来ただけ。それだけ。この人はーー付いて来た。それだけ。」
「あと俺たちが居るだけ。」
「うん、オレたち子供がいる普通のーー姉さん、何だっけあの紙ーー……。」
「え〜? ーーあ〜、婚姻届? 」
「それそれ、それ出してないだけの実質夫婦ですから。そこの二人。」
「俺らの父と母。」
「ーーみたいだな。」
それは理解したんだが……。
「どうして婚姻届を出さないんですか? 」
「ーーそれこそ、そちら様の方が理解できるんじゃ、ないかしら? 」
「理解ーー? 」
「ワタシたち、海外ーーこことは別の国から来ているの。だからーー」
「あ! うわっ!? まさかっ!! ーー国籍が無い!? 」
「ーーそ〜いう、事かもしれない。実は出そうとはしたの。届け出。だけどーー」
「突っぱねられちまった。何でかな。ーーそういう事だな。国籍だったんだ……。」
「あの、……。」
「はぁい? 」
「んぁ? 」
「国籍ならーー作れますよ? 多分、日本のなら……。日本のであれば。」
「ーーどうーーやって作るのかしら?? 」
「寧ろ無しで今迄どうやって生活をーーあ、祖父母の方々が? 」
「え、えぇ……。色々手配をーーしてくれたわね。色々……。してくれたようで。こうして、生活はできてる。できているわ。」
「ーー……。」
「己ん家もだな。色々手伝ってくれたらしいんだ。」
「貴方の国籍は確かーー」
「んあぁ。アメリカの方だな。合衆国だ。」
ドめっちゃ日本の仇ーー!!!
資料を見て一度ツッコミを入れたところだ。もう一度ツッコミを入れる羽目になろうとは……。
「んふふーー……。合衆国は父さんの庭……。」
「あらぁ〜? 寝言かしら〜? 」
「母さんはロシア大国の姫ーーふふっ、」
布団に包まり顔を伏せている子供たちが口々にぼやいてきた。いや、マジでそれな。二人国籍と素性な! このお兄さん、思わず二度見も三度見も資料見直したからな!!
「お兄さんはイタリアから来てるって言うけどーーそういえば出身国は? 」
「お、俺の出身国は伏せさせてください……。(余計ーーややこしくなりそうだからな。)」
「んぁ、あぁ。まぁ良いな。」
「ーーそうね。これ以上ややこしいのはーーちょっと〜ーーよね……。」
「天罰が使えるからーーギリシャ? 」
「あ〜……。姉さん頭良いね。ギリシャ神話だ……。何か引っ掛かってたんだ、それだ……。」
お子さんたち眠たげになってきたな?? 正解だけども!
「天罰? ーーあぁ、あれーー天罰だったのね……。あの人、倒れたのが? 」
「そうーーらしいです……。俺にもよく分かってはいません……。」
「みたいだな? ご両親から話は? 」
「能力とかのお話、されたことはないのかしら? って、この人が。」
「ーーあ、はいーーあります、忘れていました……。今まで……。」
「ギリシャーーギリシャーー? 何だったかしら? 何かーー何かあったのよギリシャでーー……。駄目ね、思い出せないわ。眠ってそれからにしましょう。」
「ホテルはーー? 」
「あ、手配をーーしてくれるとかーー……。あの、最後に来たーー合流した子が」
「まぁ? 彼に? ーー気に入られたのかしらねぇ? 中々そういう事ーー自ら言う子ではなかったはずなの。」
「あ、森羅さん? の命の恩人だとーー命を救ったからだと言われました……。」
「! ーーやっぱり! そうなのね……。ありがとう。母親のワタシからも。お礼をしなきゃね? 何が良いかしらーー」
「ーーお礼がーー頂けるのであれば!! 」
「! なぁに? 強くーー強い願いがあるようね? 何かしら? 」
「あーーえぇと、そのーー……。」
「ーー国の事だな? 」
この人悟りじゃない気がする。多分観察眼がスゲェ。
「あ、はい……。ギリシャとーー」
「待って。どちらか決めて頂戴。片方はワタシが。もう片方はーー良いかしら? 貴方? 」
「あぁ。己がだな。何とか出来るかもしれねぇ事なら何とかしてーー何とかする。」
「ーーギリシャと、イタリアの事です。あの、何方が何方かとかは、何か有効な方とかありますーーよね? 」
「そうねーー……。近い国なら、両方で両方をいけるかしら……。ね? 」
「んだな。」
「ーーかくして、舞い降りて来た神の使いはお前の両親と手を取るがーー手を取り平和や和平を目指すがっ!! ーークソッ!! 邪魔が入るっ!! 」
「振り払おうか? 」
「ああ。やれ。お前ならばーー否、適任者が居る。ーー重い腰を上げてくれればだが……。」
「ーー上げようかな。君たちでは心許ないみたいだ。」
「ああ。この姿ではーー……。」
「難儀するね。」
「何をしようにも勝手が手狭だ。ーーだが利点はある。必ず天下を取ってやる。そして今度こそーー」
「何? 」
「ーー否、"今度こそ"とは消しておこう……。今回はにしよう。その方が先が有りそうだからな。」
「? 晴明くんの言葉はいつも意味深だね。」
「まぁ見ていろーー、お前が意味を思い知る頃には天下を取り全てを手中に収めておいてやる。そしてその頃にお前はーー」
「? 」
「その頃にもまだその強情っぱりを止めていないようなら容赦はしない。」
「容赦してよ……。」
「容赦して欲しいか。ーーなら今直ぐに俺に下だれ。俺のものになれ。」
「言い方……。」
「どんな言い方をしても返答がーー意地を張るだろう? 逆にどうしたら良いんだ? どうしたらお前を手に入れられる? 」
「手に入れてどうするの? 」
「手に入れーーたらか……。手に入れたらーー……。」
「ーーうん、分かった。やっぱりまだ早いよ。」
「クッ! ーー否、もう少しか? "まだ早い"と言ったな? 今迄は聞かなかった言葉だ……。奴が来たからか? 何か少しずつ変わってきているな。」
「はいはい。」
「話は終わりか。では眠ろう。お休み、俺の未来のーー」
「……。おやすみ、未来でも一緒に居てくれる晴明くん……。」
「ん? ああ。居てやろう……。」
2026.9.20




