その2の1(その1の4)
「ビックリしました……。あだ名が一緒で。同じ木偶で……。」
「ね。同じ。お揃い。」
不覚にも和むから今はそのお喋り止めてくれ幼女たちーー!
「お揃いだね。もっとお揃いなところ、二人に共通するところあるんだけど聞く? 森羅ちゃん。」
「お揃いーーどこ? 」
「じゃあまずはそのお兄さんから離れて僕のところへ来ようか。」
母親に受け止められたはずの幼女が、何故か俺の膝の上まで登って来ていた。俺は反射的に咄嗟に幼女を抱え込む形になり、護ろうとしていた。
「やっぱいいれす。自分で見つけるーーます。お姉ちゃーー! 」
「うん、森羅万象、今怒っちゃ駄目。姉さん頑張って縛ってるから。お前はそれ解いちゃ駄目。ーー姉さん、手伝おうか? 」
「分かってるならっ、早くっーー!! 」
硬直していて動かないのは長女がーーそうか! 相手の思考を縛って動きを妨げているんだな!!
そしてその縛りをーー敵への縛りごと術を解いてしまわない為に幼女のことを長男くんは止めたーー!
「あぁ、結構ヤバイんだーー? ヤバイなら本気出そうかな……。」
「(お兄ちゃんね? 悟りだけじゃないの。)」
「(あ、ああーー見えてる、俺にもーー……。)」
幼女の言う通りだった。 何か、光の様なーー発光しているみたいだ。燃えているのだろうか? だとしたら炎系のーー……。
「お兄さん鋭いね。正解だよ。」
「やっちゃえ!! 」
「駄目ですお兄さん、殴ったらーー!! 」
そうかーー! 攻撃の能力さえ奪われてしまうかもしれない!
よくは分からないが、敵は能力を奪えるーー!
「止めた方が良いか? 」
嫌な汗が出てきていた。
「兄貴、止まれ。」
次男くんの声を長男くんは無視しなかった。
「ちーちゃん……。止めないでよ。ーー見えてるでしょ、あの人辛そう。」
「あ、本当だ……。」
優勢に見えていた荒々しい声のヒーローがーー、テレビの中で見たあの強いヒーローたちが、目の前で苦しんでいた……。
「ねぇ父さんっ!? アンタ見てるだけかっ!!? 」
「父さんーー? 」
長男の声に続く長女の不安そうな声が意味するものを、その事態をーー見えていた俺たちは絶望し掛けていた……。
「やだ!! 嫌だ何それ!? 」
父親よりも敵に近い位置に居た長男くんと長女は、後ろを振り向かないと気づけなかったのだーー父親が動けなくなっていることに。
「? 」
幼女は困惑していた。俺も同じだーー困惑している。
「森羅ちゃん!! 能力使ってみて!! 」
「? ーー!? 」
「(使えなくなってる……。)」
やっぱりーーだ。
「さっきのがーー? 」
「何でお前父さん縛ってんの!? ーーって、もしかしなくても、敵さん、アンタが取った? 」
確かに、見るからにさっきの幼女の能力だろうーー植物が父親に巻き付いていた。
「己ぁ、取ってねぇ、な、」
「『アンタ』ってアンタだけじゃない。ーーオレはね。」
「(ーー取られたのなら、俺にできる事がある……。)」
「あ〜……。ヤバイ、アンタも何か出来るならもうそれ考えない方が良いよ。ーー取られたっぽい……。聞こえなくなった。」
その場の全員が『!? 』と、驚き時が一瞬止まった。 いつの間に盗られたーー!?
「(取り戻すーー!! )」
「姉さん、わ!? 母さんストップ!! 」
長女と母親が駆け出そうとしていた。血の気が多い家族なのか!? ヒーローの家系っていうのは!?
「(母さんのが一番取られるとーーヤバイっ!! )」
「父さんの縛り、取ってあげて早くっ!! 森羅万象!! 」
「(やってるんだけどーー!! )」
「踏ん張れば干渉出来るねこれーー焦って損した。焦らないで、アンタを信じれば良かった。」
「ああ。もう味方だ。安心してくれ。」
俺はヒーローなんて柄じゃない。諦めて就職して、就職した先でも上手くいかなくて……。
周りには上手くいっている様に見えていただろう、けど、実際は違う。
そんな姿を見て、見兼ねてか、声を掛けて来た人が居た。顔はもう覚えていないーーだけど、確かに居たんだ。
『ヒーローが無理なら、ヒーローをーーいや、誰かを救う手助けはどうかな? 』と、君たちの祖父はそう言っていた!
この調査が何を意味していて、君たちの祖父が何故俺に依頼して、どうして俺は調査対象のことよりも、依頼よりも君たちを優先してしまったのかーー。
分かった。ーーそうだ。そうだよ。この世界はそう出来ている。
君たちを救えと、世界がーー、心が叫んでいる!!
「大丈夫。何とかなるよ。森羅ちゃん、息して? 深呼吸ーー」
お友だちくんが何かを察し、そう穏やかに話し掛けていた。
「過呼吸だ……。うわぁ、今!? 」
長男くんが冷静さを失った。
「過呼吸ーー!? 」
母親が青褪めた。
「チアノーゼだーー森羅ちゃんっ!!! 」
「こんな状況だけど!! アンタ、ブレないで頑張ってそのまま、取り返してくれっ!! 」
「(無茶を言う子だな……。だけどーー! )」
確かに、俺にしか出来ないーー!!
「ーーそれさ、天罰に近いなら、森羅ちゃんのこれ、この状態、ーー彼奴に返してよ……。」
「!? 」
幼女を介抱していたお友だちくんが冷ややかな声を発していた。当然だろう、仲の良い友だちが死にかけている……。その様に気圧されそうになった。
相手に返した事は無いーー出来るかーー?
「出来なくても、やってくださる? でないとワタシーーワタシはーーっ!!! 」
「あ、はい、やります。」
駄目だこの婦人を向かわせたらーー!! 確実に相手を殺ってしまう!!!
俺は本気を出したーー本気で能力を底上げした!
やったことのない未知の可能性を絞り出した!
ーーーーどうだっ!?
「ーー返せたーーかな? 」
現状を見守り続ける祖父が口火を切るように呟いた。
「どうーーでしょうか……。」
沈黙が流れた。手に汗を掻いている事に気付いてズボンで拭った。
嫌な時間が流れている様だった……。
逃げ出したーー(というよりは、娘の瀕死に向かう状態に切れた父親が戒めを解いて敵に向かって飛び込んで行くのに驚いて一旦引いたような動きを見せた)ーー敵を、ヒーローたちは捕らえられただろうか?
「ーーぁ、貴方! 」
子供たちの父親が救世主の様に登場したーーそれは本当に王子なんだなと思わせる説得力があった。
「倒れた。」
「相手が? 」
父親は頷いた。きっと追い掛けた先で敵は苦しみ出し、倒れたのだ。俺には確信があった。
「森羅ちゃんはどうですか? 」
「ーー呼吸ーー息してる。」
「返ーーせた?? 」
「出来たみたいだね。お兄さん。」
「お兄さんね、お兄さんの巨大な緊張を解いた救世主は父さんみたいだけどーーオレたちと子どもたちの救世主は、」
『アンタだよ。』ーーと言って長男君は倒れた。意識を失ったらしい。まだ敵が!? と焦ったが、周囲の様子から能力を使うと普段からこうなってしまうという事が垣間見えた。
ーー長男くんが目を覚ました後、『『オーケー』ってあいつに言ったけど、言ったは良いけど、頭真っ白でさ。ーーその時にお兄さんが何か出来ること考えてくれててーーだから、お兄さんが居てくれて良かった。よ。』とまだ寝ぼけて覚醒しきっていない様子で俺に伝えてくれた。
長男くん、そうかーーなら、なら俺は、ヒーローを助けるーー救けられるヒーローになろう。
2026.6.20




