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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
リートス学園・指導と求知

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第98話 調査結果

しばらく時が経ったある日、

グランフェルト侯爵ギャスパルは、机上に積まれた数枚の調査報告書に目を通していた。


――リートス学園に推薦する以上、身元の確認は必須。

加えて、家庭教師たちからも個別に報告を受けている。


ペンを手にしながら、ギャスパルは一枚目を開く。


「……ふむ、オフィーリア、シルヴィア、サティエルの三名はAランク冒険者パーティ『エナメルの旅人』に所属。

モルキア王国で登録、か。ずいぶん遠くから来たものだな」


彼は小さくうなずく。


「それにしても、この三人だけで“アースドラゴン”を討伐? ――信じがたいが、記録は本物らしい」


視線を次のページへ移す。


「オフィーリア……エルフ。Aランク冒険者。

出身はエルフィリア王国。今も王国所属の可能性が高いか、要注意だな。

あの娘は礼儀も作法も完璧だった。かの国のエリートなのか?」


次にシルヴィアの記録を読む。


「シルヴィア、剣士。モルキア王国の騎士の家系でBランク冒険者。

オーギュストの報告では王国騎士団の中上位に匹敵する実力――。

ふむ、優秀だ。うちに欲しいぐらいの人材だな。」


ひとつ息をついて、次の資料を手に取る。

サティエル――あの“娘”の記録である。


「サティエル、Cランク冒険者。『エナメルの旅人』加入前、マテトキア王国で黒鉄傭兵団に所属。

一度離れ、再加入……その前歴は不明、か。」


ギャスパルは眉を寄せる。


「黒鉄傭兵団での評価――“彼女のためなら命を惜しまない者も多い”……。

出戻りしたというのに、評判がやけに高いな、どういうことだ?」


さらに、オーギュストからの報告書に目を通す。


「武術に関しては――“ガルターニュ十剣”に並ぶ可能性あり、だと?

ガルターニュ十剣はこの国の剣士の頂点十人に与えられる称号だぞ。

……“当方、力不足により正確な見定めができず”――だと。

あのオーギュストにそう言わせるとは、尋常ではないな。」


手元の報告書に、さらに注釈がある。


「翠嵐流の剣術を使用。立ち居振る舞いが“エルネスタ”を思わせる――、か。」


ギャスパルの瞳が一瞬、遠くを見た。


「エルネスタ……。彼女が亡くなって、もう八年になるか。

そういえば、あの娘は“エルネスタに助けられた”とも言っていたな。

だが、八年前ならばサティエルはまだ子供のはず……。

それなのにその恩を返すために、今ここに来たというのか?」


彼は小さく頭を振り、次の報告書をめくる。


「学園編入に関して――“全科目において最高学年(三年)への編入も問題なし”……。

本人も自信ありげだったが、まさか本当にそこまでの学力とは。


傭兵団に入る前、すでに最高峰リートス学園で学べる水準の教育を受けていた……?

いや、まさか――。本物の“お姫様”という線も、捨てきれんな。」


さらに別の報告書には、教師たちの意見が記されていた。


「――見た目通りの年齢ではない可能性あり。」


ギャスパルは眉をひそめる。


「確か、学園には二十歳を超える者の入学は認められなかったな……。

その点も含め、改めて確認が必要だ。」


そして最後の一枚をめくる。


「セレネ――立派な神官服を着用していたあの女性か。


ルーナ教の聖女の可能性あり。

丁重に扱うべし。


なお、最近ルーナ教の大神殿が襲撃されたという報告もあり、何らかの関係があるかもしれない」


ギャスパルは深く息を吐いた。

しばらく沈黙ののち、ゆっくりと立ち上がる。


「……なるほど、やはり、ただの傭兵団員ではないな。報告書だけではよくわからん。

よし。直接、話をしてみよう。食事会でも開くとするか」


窓の外、夕日が城壁を赤く染めていた。

侯爵はその光の向こうに、かつての娘――エルネスタの面影を、ふと重ねていた。

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