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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第89話 これからの方針

部屋は翌日まで使えるということで、一行は戻り、これからの方針を話し合った。


まず口を開いたのはシルヴィアだ。

「みんな、ありがとう。おかげで仇討ちが無事に済んだわ。本家にはイーヴァルの死体を送って、修行に出るって手紙を出すつもり。だから私も、サティエルと同じように『自由な旅人』になる。よろしくね」


「えーと、私は月へ行く方法を探したいんだけど、付き合ってくれる?」


「もちろん」


続いてセレネが口を継いだ。

「私も行く当てがなくなりました。月へ行く方法を探すなら、是非同行させてください。神殿に残っても十分な保護は望めないし、冒険者として過ごすのも悪くないと思うんです。私も『自由な旅人』に仲間入りしたいです」


「もちろんいいよ。けど、月の方から助けに来てくれたりしないの?」


「すぐに来ることはないと思います。ルーナでは表立ってテラエに人を派遣することはできません。私のように秘密裏に派遣するのも簡単ではありません。

おそらく私は“救助不可能な遭難者”と扱われるはずです。


……でも、それはそれで良かったのかもしれません。実は私、ずっとテラエを自由に探索してみたいと思っていたんです」


「そうなんだ……。随分と前向きで安心したよ」


サティエルは微笑み、視線をオフィーリアに向けた。

「オフィーリアは『自由な旅人』じゃないけど、私に付き合ってくれるんだよね」


「ああ。だが、月に行く方法を見つけるのは簡単ではないとおもうのだけど。

どうするつもり?」


その問いに、セレネが身を乗り出すように反応する。

「ルーナ人とかモアネ人の遺跡……残っていないでしょうか。千年以上前、彼らはテラエと頻繁に行き来していたはずです。何か痕跡が残っているかもしれません」


オフィーリアが尋ねる。

「セレネはルーナ語わかるとして、モアネ語も?」


「大丈夫です……。それに古代ルーナ語やモアネ語もわかりますので

月の人たちが残したものならある程度分かると思います。ただ、テラエの古代語だと手に負えないと思いますが......」


その言葉に、サティエルの中のエルネスタの記憶がかすかに揺れた。


彼女エルネスタがかつて在籍していたリートス学園の図書館に、古代遺跡や古語を扱う資料があった気がする――講義を受けてはいなかったが、そういう研究をしていた学者もいたはずだ。


「ガルターニュ王国のリートス学園に古代遺跡を研究している人がいるの。そこを訪ねてみようかな?」


サティエルが提案すると、シルヴィアが驚いて突っ込む。


「なんでサティエルがそんなこと知ってるの?」


サティエルは慌てて取り繕う。

「昔、学園にいた人に聞いたの」――嘘ではない......。


そこへベルンハルトが顔を曇らせて言う。

「ガルターニュって今、後継者争いで危ないらしい。第一王子派と第二王子派で割れてて、内乱寸前と聞いたぞ」


「えっ、後継者争い?国王は?」とサティエル。


「さあな、病床に伏しているとの噂もあるが、よくわからん。

争いを止められないということは力を失っているのだろうな。


これまでは第一王子が継承するとみられていたのだが、どうも第二王子に帝国の皇女が嫁いで、バックにゲルデン帝国がついたらしい。そのせいで第二王子に味方する者が増え急激に力をつけたらしいぞ。


そんで、近いうちに帝国の兵が動くとかで、それを察知した第一王子派を支える何とか侯爵ってのが急遽傭兵を募ったので俺のところに話が来ていたんだ」



それにサティエルの中のエルネスタが反応する。


「何とか侯爵って?」


「うん?侯爵の名前が知りたいのか?なんだったかな?」


「もしかしてグランフェルト侯爵?」


「ああ、それだ!姫よく知ってるな」


グランフェルト家――エルネスタの実家である。


――ゲルデン帝国と戦うなら加勢したい。だが今はグランフェルト家の人間ではない。サティエルの一部としてサティシアのサポートをする存在と決めている。だから自分の願いを表に出すことははばかられた。


しかし、サティシアは勝手に話を進めていた。

「私、グランフェルト侯爵の味方をしたい。小さい頃、あの家の人に命を救われたの。恩返しをしたい」


ベルンハルト団長たちは即座に賛同する。

「おお、もちろんだ。俺たちは傭兵、戦が仕事だ。遠慮はするな。それに俺たちにも姫への恩返しをさせてくれ」


頭の中で、サティシアの魂が静かに囁く。


「これは――私のためでもあるの。遠慮はしないで」


その声はやわらかく、けれど迷いがなかった。


エルネスタは、思わず言葉を詰まらせる。


胸の奥に、いくつもの想いが込み上げてきて――

けれど、それをうまく言葉にすることができない。


だから。


ただ、一言だけ。


「……ありがとう」


それだけを、ようやく絞り出すように伝えた。


その短い言葉に込められた想いは、

何よりも深く――サティシアに届いていた。




「というわけで、自由な旅人の皆も付き合ってくれる? 戦争で勝ってグランフェルト家に取り入って、リートス学園の蔵書の閲覧や学者と会うための交渉を進めたいの」サティエルの提案に、全員が頷く。


オフィーリアは『不自由な旅人』だが、もちろん同行することに同意した。

しかし、また戦争か......。サティエルに滅ぼされる最初の国はゲルデン帝国ではないか?そんな予感がしていたのだった。



そして、一行はエルネスタの故郷ガルターニュ王国へ。


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