第84話 グレーターデーモン VS ゲルデン軍
グレーターデーモンは、サティエルを「弱い攻撃しかできない小物」と見なしていた。
だが、自らの魔法をことごとく回避されるうちに苛立ち、次第に本気の怒りになっていた。
サティエルがゲルデン軍本陣の上空に差し掛かり、急降下。
本陣の中へ飛び込むと、すかさず兵たちが取り囲もうとする。
その瞬間、怒り狂ったグレーターデーモンが襲いかかった。
炎の奔流が放たれ、本陣は一瞬で火の海と化す。
炎と煙に紛れ、サティエルは姿を消す。
――狙い通り。グレーターデーモン vs ゲルデン軍の構図が完成した。
轟音を聞きつけ、本陣の大テントからディートリント将軍が現れる。
「何事だ!」
「グレーターデーモンの急襲です!」
「なに……!? なぜ奴がこちらを!?」
将軍が視線を向けると、確かに悪魔は兵を蹂躙していた。
「まずいな。一般兵では持たん……」
そこへ新たな報告が飛び込む。
「将軍! 魔物の大群がこちらに侵攻中! サイクロプスも確認されました!」
「……どうなっている! よし、一番隊から三番隊、それに傭兵部隊で迎撃せよ!
グレーターデーモンは私が討つ!」
将軍が戦場に出た時には、すでに数百の兵が倒れていた。
怒りを込め、グレーターデーモンに向け強大な魔法を放つ。
「――《フレイムストーム》!」
巨大な炎の渦が唸りをあげ、悪魔へ迫る。
だがグレーターデーモンも腕を振り、同じ魔法を発動。両者の炎が衝突し、爆風が荒れ狂った。
「ちっ……! 皆、下がれ! 邪魔だ!」
叱責に聞こえるが、兵を巻き込ませまいとする配慮であった。
「ほう……仮面の小娘は逃したが、面白い奴が出てきたな」
「グレーターデーモンごときが吠えるな!」
悪魔が腕を回すと、十二本の炎槍が現れる。
「くらえ!」
槍が一斉に将軍へ襲いかかる。
「《フレイムバースト》!」
爆炎が広がり、炎槍を一掃する。
「ほう、なかなかの魔力……では、これはどうだ!」
閃光が走り、将軍の視界を奪った瞬間、悪魔が目前に迫る。
「ははは、魔法使いなど近づいてしまえば脆いものだ!」
振り下ろされた拳を、将軍は両手で受け止めた。
「な……魔法使いが拳を受け止めただと!? 貴様、何者だ!」
掴んだ手を離さず、将軍が魔法を叩き込む。
「《ブラストノヴァ》!」
至近距離で爆発が炸裂。
「これ強力だけど射程が短いのよ。
あなたから来てくれて助かったわ。って聞こえてないか」
グレーターデーモンはすでに爆散していた。
将軍は、眉をひそめる。
「なぜ、町ではなく我らを襲った……? サイクロプスも迫っている、急がねば――」
その時、背後に気配を感じた。
振り向くと、月明かりに照らされた仮面をつけた者が立っていた。
「何者だ!」
「……あー、バレちゃった? 私はルーナ仮面」
「ふざけるな!」
「そっちこそ何者?魔女帽子のお姉さん」
「ちっ、調子が狂うわね……私はこの軍を率いる将軍だ」
「そう、ちょうどよかった。あなたを倒せばいいんだよね」
「ふん、身の程知らずが!」
サティエルとディートリント将軍が激突しようとしたその時、
サイクロプスを先頭に魔物の大群が、本陣へなだれ込んでいた――。




