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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第81話 シルヴィア再起

黒鉄傭兵団の天幕に戻ると、カルメロとオフィーリアも揃っていた。

すぐに簡単な作戦会議が始まる。


最初に口を開いたのはカルメロだった。


「ゲルデン軍の最初の猛攻で大神殿はすでに陥落したそうです。一部の神官や市民は町で保護されましたが、逃げ遅れた人々がどうなったかは不明とのことでした」


サティエルが眉をひそめる。

「なぜ、大神殿が狙われたの?」


「それは……」カルメロは首を振った。


その疑問に、オフィーリアが答える。


「大神殿の祭壇や設備は徹底的に破壊されていました。モルキア王国の大神殿と同じく、“大神殿そのものを壊す”ことが目的でしょう」


「大神殿そのものを……」


セレネは思わず首をかしげる。

おかしい……。大神殿の魔導具を壊せばルーナからの干渉は一時的に不可能になるのは確かなのだけど、やりすぎればその後ルーナが本格的に動く可能性もあるのに......。その前に何か起こすつもり?


声には出さなかったが、疑念が胸に渦巻いていた。


一方サティエルは、別の懸念を抱いていた。

「理由はともかく……大神殿の奪還ってできるのかな?」


カルメロが渋い表情を見せる。

「現状、この戦力だけでは無謀です。ゲルデン軍本隊を退かせるほどの状況にならなければ不可能でしょう。ただ、近いうちにこちらから打って出る可能性もあるそうなので……それまでは待機するしかありません」


実際、ここには戦える兵力は五十人程度しかいない。単独で仕掛けるのは無謀だった。


――サティエルがその気になればゲルデン軍を圧倒できる。

だが、それをすると周囲一帯を消し飛ばすことになるので軽々しくできるものでもない。


話し合いが終わると、サティエルは木陰に小さく身を寄せているシルヴィアを見つけ、そっと声をかけた。


「体は……もう大丈夫?」


「うん。助けてくれてありがとう」

セレネの治療で傷は癒えていた。だがシルヴィアの表情は沈んだままだった。


「さっきの人が、仇だったの?」


「そうよ。……仇を前にして、返り討ち。

力不足を思い知らされた。

悔しい……それ以上に情けない」


「でも、そんなに差はなかったと思うよ。私、最後の方は見てたの」


シルヴィアは首を振る。

「違う。どんどん追い詰められて……必殺技も、あっさりいなされた」


「あの技は向こうが対処法を知っていたみたい、初見じゃない感じだったよ」


「……そうなの?」


「うん。しかもシルヴィア、力みすぎていつもの動きができてなかった。

冷静さを欠いてたんだよ」


シルヴィアは悔しそうに唇を噛む。


「でも……大剣の一撃、片手剣じゃ受けきれなくて……次に戦っても勝てる気がしない」


「でも、相手も双剣の手数に苦戦してた。工夫すれば十分勝機はあるよ。それに――あの大剣はまともに受けなければいい」


「言うのは簡単だけど……」


「できるよ。私の柔気流の応用で。見せてあげる」


半信半疑のシルヴィアだったが、サティエルの自信に押され、木剣を握った。

「……わかった」


シルヴィアは両手で一本を構え、サティエルは二本を握る。


「あの時のシルヴィアみたいに行くよ」


木剣がぶつかる――はずだった。

だが、サティエルの剣は途中で軌道を変え、すり抜けるようにしてシルヴィアの顔の前で止まった。


「えっ……今の何?」


「振りながら、肩や手首の動きを変えて軌道をずらしたの」


「そんなことができるの……?」


「肩ってかなり複雑な動きができるんだよ。それをうまく応用すればね」


繰り返し試すうちに、シルヴィアの動きも少しずつ変わっていった。

サティエルが細かく修正を加え、やがて形が見えてくる。


「そうそう、肩甲骨をもっと動かして。力を抜いて――」


「……なんとなくだけど、わかってきた気がする」


サティエルは微笑む。

「後は練習あるのみだよ。大事なのはリラックス。

あの時も、落ち着いていれば追い込まれることはなかったと思う」


「そうね……。いきなり仇が目の前に現れて、冷静さを欠いてた。次は大丈夫。

ありがとう、サティエル」


少しずつ笑顔を取り戻したシルヴィアは、ふと考え込んだ。

「ところで、この技に名前はあるの?」


「え? ないよ。ただの応用だから」


「じゃあ、私がつける。単独なら――『幻影剣』。

さっきみたいに《双牙斬》に組み込むなら『幻影双牙斬』」


サティエルはぱっと笑った。

「いい名前だね」


「でしょ?」


二人は小さく笑い合った。

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