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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第77話 黒鉄傭兵団と共に

謁見を終え彼らは、町で話し合うための場所を借りた。


いきなりベルンハルト団長とパトリシア副団長がサティエルに深く頭を下げる。


「シロノ第三砦のときは、俺たちを守ってくれてありがとう。あの時、ルーナ仮面が姫だと気づかず礼も言えなかった。すまん」


「結局バレてたのね。あれは私が好きでやってただけだから、気にしないで」


とりあえずサティエルが皆を紹介する。


「えーと、私は今、冒険者パーティ『エナメルの旅人』の一員。メンバーはオフィーリアとシルヴィア。それから護送中のセレネさん、聖女です。あとはシュレスタイン王国の使者、カルメロさん」


「で、こちらが黒鉄傭兵団のベルンハルト団長とパトリシア副団長」


「よろしく」同時に返事が返る。


「あー、でも黒鉄傭兵団の団長はサティエルだからな」


「そんなの知らないよ。団長なんてやる気ないし」


「はははっ、そうか。まあいい。今まで通り俺が団長代理として動く。気が向いたら団長をやってくれ。いつでも従うぜ」


「黒鉄傭兵団はゲルデン帝国に雇われていたんじゃなかった?」


「ああ、あいつら約束通りの金は払わないし、扱いも雑だったから喧嘩別れしたんだ。その時ラップレリア王国を攻めるという話を聞いていたんで、逆にラップレリアに行けば雇ってもらえるんじゃないかと交渉に来たんだ。そこで姫と出会うとはな。ところで、あの変装はもうしてないのか?」


「ああ、あれ壊れちゃって」


「だが姫は戦場で顔を隠したほうがいい。真っ先に狙われるから」


「そう?向かってくるなら全員倒してもいいかな」


「雑魚は無視したほうがいいぜ」


会話が延々と続くのにしびれを切らし、オフィーリアが割り込む。


「すいません、本題に入りたいのですが」


「おお、すまん」


「黒鉄傭兵団はおよそ百名だと聞いていますが、戦闘員はどれくらいいるのですか?」


「だいたい五十人ってところだ」


黒鉄傭兵団は拠点を持たず、依頼先に移動して暮らすため、職人や商人など生活に必要な人員も抱えている。


「カルメロ殿、一応兵力は得られたとはいえ五十人ではあまりに心もとない。このまま国へ戻るのは危険では?」


「五十人でも、大神殿の警護なら役に立つはずです。それに私は国へ戻って今回のことを報告しなければなりません。戻る際に同行していただければ、問題なく戦力として迎え入れられるでしょう」


うーん。できればサティエルには戦に加わってほしくないのだが......。


しかしサティエルは賛成してしまう。


「じゃあ、シュレスタイン王国に向けて出発しよう」


「ちょっと待ってくれ」


渋るオフィーリアを見て、サティエルが彼女の恐れている言葉を口にする。


「大丈夫だよ。やばくなったら私が何とかするから」


そう、オフィーリアが恐れているのはまさにこれなのだ。

何とかしてもらいたくない......だが口に出すことはできない。


そんな空気の中、ベルンハルト団長がにやりと笑って言った。


「ああ、そうだな。姫がいれば怖いものなしだぜ」


こうして、シュレスタイン王国行きが決まった。


*  *


サティエルたちは黒鉄傭兵団本体と合流した。

団長ベルンハルトが声を張り上げ、団員たちを集める。


「新しい仕事が決まった。これからシュレスタイン王国へ向かう。今度の雇い主は――皆もよく知っている人物だ。紹介しよう、サティエル様だ」


「様」をつけて壇上に押し出されるサティエル。だが、団員たちの反応は芳しくない。


「誰だ?」

「よく知ってるって話だったが……」


無理もない。サティエルが傭兵団にいたころは、常にモーブの髪飾りで変装していた。素顔を知っているのは、ベルンハルトやパトリシア、ヘレーネら、ごく一部にすぎなかったのだ。


サティエルは一歩前に出て頭を下げる。

「皆さん、シノロ第三砦ではお世話になりました。あの時は変装していたので、顔を覚えていない方も多いと思いますが……改めて、よろしくお願いします」


その一言に、数人がはっとした。


「まさか……」


ベルンハルトが続ける。

「気づいた者もいるだろう。これが本当の姿の“姫”だ」


団員たちはざわめいた。本当の顔を見たことはなくとも、「姫」と呼んでいた少女が変装しているということは皆が知っていた。――その正体が目の前に現れたのだ。


「本当に……姫様だったのか」

「信じられん……」


ベルンハルトは力強く言い切る。

「俺と姫の決闘を見た者は、その実力を知っているだろう。実はあのサイクロプスを倒し、砦を救った“ルーナ仮面”の正体も、この姫だ!」


その言葉に傭兵団は一気に沸き立った。


「姫がルーナ仮面……!」

「すげぇ……」


ベルンハルトはさらに声を張る。

「だから、今回の仕事は恩返しでもある。俺たちは全力で姫に尽くす! 皆、それでいいな!」


「おおおおおーーー!」


黒鉄傭兵団の士気は一気に高まった。


だが、その熱気の中でただ一人、複雑な思いを抱える者がいた。クスターである。


彼はサティエルの弟子であり友でもあった。別れた後も、モーブの髪飾りをつけた彼女の姿を何度も思い出していた。


変装だと知ってはいたが――実際に目の前で“本当の姫”を見てしまうと、気後れしてしまう。以前のように気軽に声をかけられず、胸の内で戸惑っていた。


やがて黒鉄傭兵団一行は拠点をたたみ、一行はシュレスタイン王国へ向けて進発する。

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