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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第72話 モアネ人

村に戻り、トールヴァルト隊長たちが村長へ報告に行っている間――。


セレネが周囲をうかがい、小声で切り出した。

「あの……皆さんが“魔族”と呼んでいる存在ですが、正しくは月の住人――モアネ人です」


その場に衝撃が走った。中でもオフィーリアの反応は大きかった。

「えっ……あれも月の住人なの?ルーナ人とは違って稀に出没するのだけど……」


「うわさでは、モアネ人の刑罰のひとつに、この『テラエ』への追放があるそうです」


「追放……? 犯罪者をこちらに送り込むなんて、とんだ迷惑ね」

オフィーリアは眉をひそめた。


セレネは続ける。

「ただ、今回の場合、私が調べに来た“ムーンゲート”と関わっている可能性があります」


「なるほど……。モアネ人が意図的に何かを仕掛けてきた、と。私たちには荷が重い話ね。捕らえたモアネ人から情報を引き出しも含めこの国に任せるしかないわ」


そう口にしつつも、オフィーリアは後日、自国エルフィリアへしっかりと情報を伝えていた――。


やがて、トールヴァルト隊長たちが戻ってきた。

「この魔族は馬で町まで運ぶことにした。……では出発しよう」


魔族は荷馬の鞍に縛り付けられ、部下に曳かれていく。


道中、トールヴァルト隊長がオフィーリアに話しかけた。

「失礼ながら……結局、あなた方のことをよく知らないまま大きな恩を受けてしまいました。せめてお名前だけでも」


オフィーリアは淡々と答えた。

「私たちは、Aランク冒険者パーティ《エナメルの旅人》です。お礼は不要です。サティエルも言ったように、ヒュドラ討伐は親切にしてくれた村人への恩返しにすぎません」


「そう仰らず、ヴィアドルの町で――」


「申し訳ありません。冒険者としての依頼任務の最中でして、これ以上の遅れは許容できません」


「そうですか……。ならば無理は言えませんな。最後にひとつ。あの魔法使い、サティエル殿は一体どのようなお方なのです?」


「ご覧の通りですよ。ただの冒険者です。本人は“自由な旅人”だと言っていますが……」


「……なるほど」

隊長はそれ以上追及せず、胸中で呟く。

結局、正体はつかめなかったか……。あとで“エナメルの旅人”を調べてみるとしよう。


――ヴィアドルの町に到着し、一行はそこで別れた。



エナメルの旅人はシュレスタイン王国へ。


トールヴァルト隊長は魔族を別の機関に引き渡し、一連の件を報告書にまとめるとともに、情報の不足しているエナメルの旅人について調査を始めた。


そして驚くべき事実に突き当たる。


――モルキア王国のガリダダンジョンで、わずか三人でアースドラゴンを討伐した冒険者。


――その功績からドラゴンスレイヤーの称号を授かったという、近ごろ噂の一団。


だが報告にあるパーティは三人で、神官の名はない。


加えて、魔法使いサティエルに関する情報は曖昧だった。印象の薄い少年と記録する者もいれば、彼がドラゴンを討った、あるいはAランク冒険者を捕らえた、と語る者もいる。


確かにあの鎖の魔法と魔族捕縛の手際を見れば、虚言とは思えん……。だが、私が見たのはフードを深くかぶった少女にしか思えなかった。なぜ記録と食い違うのだ……?


結局、真相は闇の中。だが確かなのは――。

《エナメルの旅人》が、並外れた実力を持つ規格外の冒険者であるということ。


我が国として、この者たちと何らかの形で関係を結ぶべきだった……。

見送ってしまったのは痛恨の失策かもしれん。


そう悔いながら、トールヴァルト隊長は追加報告書に記するのだった。

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