第69話 ヒュドラ討伐作戦会議
小屋に戻った一行。
「すごいじゃない、セレネ。あんな魔法、見たことない」シルヴィアが感嘆の声を上げる。
「えっ……普通のつもりだったんですが」
オフィーリアも口を挟む。
「普通じゃないわよ。あれなら神殿が聖女として招きたがるはず。ただ、逆に目を付けられる危険もある。十分注意して」
「はい。でも結界魔法があるから大丈夫です」
オフィーリアは続けてサティエルに目を向けた。
「あなたも目立ちすぎないように。気功と魔法、よっぽどの時以外はどちらか一方に絞って使った方がいい」
「分かった」サティエルは素直に頷いた。
しばらくして、トールヴァルド隊長が部下二人を連れて小屋を訪れた。
部下たちはセレネの前に進み出て、深々と頭を下げる。
「命を救っていただき、本当にありがとうございます」
「感謝してもしきれません」
セレネは困ったように笑みを返すしかなかった。
やがて、トールヴァルド隊長が口を開く。
「さて……本題に入りましょう。ヒュドラがこの村に到達するのは、早ければ明日、遅くとも明後日。時間がありません。戦うとなれば、我々七人で挑むことになる」
隊長の眼差しは真剣そのものだった。
「先ほどあなた方は自信がありそうでしたが、毒を浴びて撤退せざるを得なくなることも考えられます。その時、解毒魔法を扱えるセレネ様が無事かどうかで、生存率が大きく変わるでしょう。ですので、布陣はセレネ様の安全を最優先に――」
セレネが小さく首を振った。
「ご心配なく。私は結界魔法が得意です。よほどのことがなければ、自分の身は自分で守れます」
「……そうですか。承知しました。では護衛は不要と」
隊長はひとつうなずくと、作戦の説明を続けた。
「ヒュドラ討伐の定石は、剣で首を落とし、その断面を炎で焼くこと。焼かねば首は再生し、元に戻ってしまいます。さらに奴は魔法耐性が高い。ただし、切断面には魔法が通じます。つまり――首を落とす剣士と、焼き止める魔法使いの連携が要となります」
「炎魔法ならなら私ができます」
オフィーリアが即座に応じた。
彼女はそのまま声を落とし、サティエルの耳元に囁く。
「セレネは大丈夫って言ってるけど……あなた、近くにいてあげて」
「うん、わかった」
トールヴァルドが続ける。
「加えて、ヒュドラは毒の息を吐く。避けられたとしても細かな粒が漂い、周囲は毒霧に覆われる。触れただけなら軽傷で済むが、吸い込めば命取りだ」
セレネが力強く言う。
「なら、私が結界で防ぎます。浄化を付与しておきますから、触れれば毒も消えます」
サティエルも続いた。
「じゃあ私は、風魔法で霧を後方へ流すね」
「……なるほど。ではメインの攻撃は我ら二人とそちらの剣士。魔法による援護は、こちらの魔法士とエルフの方にお願いしたい」
「了解」
オフィーリアとシルヴィアがうなずく。
「我らは引き続きヒュドラの動向を監視する。近づいたらすぐ――」
それを遮るようにサティエルが言った。
「その必要はありません。私、ここにいてもヒュドラの位置がわかるので。三キロ以内に入ったら、知らせます」
「なっ……!」
トールヴァルドの目が見開かれる。
「……さすがはAランク冒険者。頼もしいものだな」




