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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
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第66話 出発前に

シュレスタイン王国は大陸北方にあり、ゲルデン帝国の北西に位置する。


モルキア王国から向かうには、西のゲルデン帝国を通るのが最も近い。


だが、セレネは帝国に狙われている身。そこで一行は帝国を避けて北上し、ラップレリア王国を経由して西へ進み、シュレスタイン王国へ入ることにした。


ただ、その前にやり残したことがある。


――ベッサ村のコボルド退治の報告だ。


放置するわけにもいかず、オフィーリアとサティエルはろっくんに乗って、依頼を受けたガリダの町の冒険者ギルドへ向かった。


残されたのはシルヴィアとセレネ。

二人の間には、わずかな気まずさが漂った。


セレネが先に口を開く。

「すみません……無理なお願いをしてしまって」


「ああ。でもいいの? いきなり私たちみたいな冒険者を頼って」


「ええ。エルフのオフィーリアさんはガヴィーノ大神官と知り合いのようでしたし……その方が仕えるサティエルさんは、やはり只者ではないのでしょう?」


「サティエルが只者じゃないのは認めるけど、オフィーリアはサティエルに仕えてるわけじゃないわよ」


「そうだったのですか? てっきり……やたらと顔色を窺っているように見えましたので」


「まあ確かにそう見えるかもね、一方あの子はマイペースだけど」


セレネは少し言いにくそうに問いかけた。


「正直なところ……サティエルさんって、何者なのですか?」


「さあ。本人もよく分かってないみたい。むしろ、あなたの方こそ何者? この世界のこと、ずいぶん詳しそうだけど」


「神殿からの情報で学んではいました。でも、実際に来てみると分からないことばかりで……。私はあくまで〈テラエ〉を研究する者。地理くらいは把握していますが、外交や国防は専門外です。


戦闘も得意ではなくて……自分の身を守れる程度の結界なら自信があったのですが、初日にサティエルさんに破られてしまって」


「あー……あの子は別格だからね。じゃあ、私が性能を見てあげようか?」


「ぜひお願いします」


セレネは結界を展開する。大猿の攻撃を防いだときの結界だ。


シルヴィアは双剣を構え、鋭く振るった。

「嵐牙流――双剣連斬!」


鋼の刃は結界に阻まれ、火花を散らす。


「ほう、なかなか。じゃあ、もう一段階――」

「嵐牙流――天罰斬!」


二剣を交差させ、強烈な斬撃を叩き込む。


ガキィン――!


結界は大きく波紋を広げながらも耐え切った。


「十分強いわよ。自信を持っていいわ」


そのとき、空から声が落ちてきた。


「ちょっと、何やってるの!? 戦っちゃダメー!」


サティエルがろっくんから飛び降り、慌てて駆け寄る。


「誤解しないで。ただ結界を確認していただけよ」


「なんだ、びっくりした」


セレネが一歩前に出た。

「サティエルさん……もう一度、私の結界を攻撃してみていただけませんか?」


「うん、わかった」


セレネは集中し、さらに魔力を注ぎ込んで結界を強化する。

サティエルは軽く手をかざし、結界に触れながら呟いた。


「――プチアルティマータ」


閃光が走り、結界は粉々に砕け散った。


「っ……! 全く耐えられないなんて……この〈テラエ〉にこんな術があるなら、私は安心できません」


「大丈夫だよ。これ、私しか使えない魔法だから」


「魔法……? サティエルさんは気功術の使い手だと思っていたのですが……」


シルヴィアがフォローを入れる。

「サティエルは両方使えるみたいなのよ」


「そんなこと……あり得るのですか?」


その場に追いついたオフィーリアも口を挟む。

「ああ、あの子は特別だから、気にしなくていい」


「……そうなんですか」


セレネは深く息をつきながら、ますますサティエルの正体がわからなくなっていくのだった。



*   *



その頃、ゲルデン帝国では――。

皇帝ダグラス二世のもとへ、大神殿襲撃の報が届けられていた。


「トランシルのルーナ大神殿襲撃についてご報告いたします。

大神殿への侵入は成功。祭壇の破壊および書庫の書物はすべて回収いたしました。


しかし、ヴォルフ隊長が何者かに撃たれました」


大神殿襲撃の目的は、ルーナ人の干渉を阻止もしくは遅延すること、ルーナに関する知識を得ることだった。


「なんだと!あやつを屠れるものが神殿にいるとは......。それほど神殿勢力は強かったのか?」


「いえ。神殿勢力を排除した後、ムーンゲートが出現し、ヴォルフ隊長は部下を待機させたまま、ひとりでムーンゲートに向い、そこで襲撃されました」


「なに……? 祭壇を破壊してもルーナからのムーンゲートは止められなかったか......。ということはルーナ人にやられたのか?」


「それも違うようです。


直接の目撃者はおりませんが……倒された形跡から推測するに、従魔のギガントエイプもろとも、気功術の使い手に討たれた模様です。


ルーナ人と思われる者の足跡は、ゲートの出現位置からほとんど動いておりませんでした」


「……なるほど。確かにルーナ人に気功の達人などおらぬ。

だが、ヴォルフを倒せるものもそうはいないはず......では、そのルーナ人は?」


「行方不明でございます。ただ、近辺で“ルーナの仮面”をつけた者が大鳥に乗り飛び去るのを目撃したという報告はございます……が関連は定かではなく」



「なに……ルーナの仮面だと!? 戯けた真似を……!


まあよい。消えたルーナ人の行方、必ず探し出せ!」


「はっ!」

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