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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
リートス学園・指導と求知

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第115話 公開講座『衝撃の事実――宇宙の中心は……』

公開講座が始まった。


司会者の紹介のあと、登壇したのは初老の女性――天文学科のニコル先生だった。


白髪をきっちりまとめ、穏やかながら芯の通った声で話し始める。


まず映し出されたのは、従来の説とニコル先生自身の説を並べた図だった。


従来の説では、テラエが宇宙の中心にあり、同心円状の軌道を近い方から順に、

水の星メルクリ、金の星ヴェヌス、太陽、火の星マールス、木の星ユピテル、土の星サートル、その他の星々

――という並びで回っているとされていた。


さらに、太陽を除くそれぞれの星は軌道上で小さな円を描いて回っていると説明されており、その小さな円は「周転円」と呼ばれていた。


観測すると星々が時折、逆行するように見える現象があり、それを説明するための仕組みらしい。


対して、ニコル先生の説では、


太陽が宇宙の中心にあり、 その周囲を

水の星メルクリ、金の星ヴェヌス、テラエ、火の星マールス、木の星ユピテル、土の星サートル、その他の星々

の順で回っているという。


図には周転円は描かれていなかった。


「ご覧の通り、私の説のほうがずっとシンプルな系になります」

ニコル先生は淡々と語り始めた。


「多くの方がまず疑問に思うのは、『太陽が動いているように見えるのに、なぜ太陽が中心なのか』という点でしょう。


確かに、テラエから見れば、太陽は朝に昇り、空を渡って夜に沈む――この繰り返しですから、太陽が回っているように思えて当然です。


ですが、もしテラエ自体が自分で回転していたとしたらどうでしょう。

太陽が動かなくても、太陽のほうを向いたときに昼、反対を向いたときに夜――それだけで説明できます」


うん、ここまではセレネの話と同じだ。


サティエルは内心で頷く。


ニコル先生はさらに続けた。


「次に、夜空の星々、いわゆる星座についてです。

これまでの説では、星々もまたテラエの周囲を回っているとされてきました。


ですが、もしあれほど遠くの星々が太陽と同じ速度で動いて見えるとしたら


……それこそ、太陽の何倍もの速さで動いていなければならない。


それは不自然でしょう。


ならば、星々は動いておらず、テラエのほうが動いている――そう考える方が理にかなっています」


会場のあちこちで、うなずく者、首をかしげる者、さまざまな反応が見られた。


「ただし、季節によって見える星座が変わるという現象があります。

夜に見える星の配置が変わる――つまり、太陽の反対側に見える景色が変化しているということです。

これも、テラエが一年をかけて太陽の周囲を回っているとすれば説明がつきます」


なるほど。季節の変化と星座の違い……そういうことなのね。


サティエルは淡々と聞きながらも、論の流れの美しさには少し感心していた。


終盤、ニコル先生は補足するように言葉を重ねた。


「ほかにも、以前アリスタ先生から報告があった通り、太陽はテラエよりもはるかに大きいことがわかっています。

であれば、大きなものが中心にあるほうが自然です。


さらに最近の観測では、これまでテラエと太陽の間にあるとされていた金の星ヴェヌスが、太陽の奥に見えたという報告もあります。

この現象も、私の説――太陽中心説のほうが説明しやすいのです」


「以上が、私の考える“太陽が中心の宇宙”です」


静寂のあと、場内から拍手がわき起こった。

しかしそれは、驚嘆と同時に戸惑いを含んだ拍手でもあった。


すぐに質疑応答が始まる。


同じ天文学科のクロヴィス先生が立ち上がり、矢継ぎ早に質問を投げかけた。

どうやら、まだニコル先生の説では説明しきれない部分が多いらしい。

会場には賛否の声が入り混じり、やがて静かに熱気がこもっていく。


サティエルは最後まで静かに聞いていた。

彼女自身、天文学に特別な興味があるわけではない。


テラエが中心であろうと、太陽が中心であろうと――彼女にとってはどちらでもよかった。


ただ一つ、感じたのは。

全体の仕組みとしては……ニコル先生の説のほうが、ずっと美しい。


彼女の心には、そんな率直な印象だけが残った。

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