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見捨てられた姫様は国を亡ぼす資格があるらしい  作者: サチオウ
リートス学園・指導と求知

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101/102

第101話 入学試験?

数日後。


ギャスパルは、リートス学園に編入推薦書を正式に送付した。


だが――返ってきた返事は芳しくないものだった。


「十五歳以下の場合、編入ではなく“新入生”としての受け入れとなります。

よって、来年実施される通常の入学試験を受けていただく必要があります」


ギャスパルは書状を見つめ、額に手を当てた。


「しまった……。そうか、編入は十五歳以上の場合だったか......。

つまり、十三歳のサティエルは編入できない。


このままでは“手続きに失敗した”という格好になってしまう。

……学園と交渉して、なんとか押し込むしかないか」


そうぼやく彼の耳元に、リシュエンヌがそっと身を寄せて囁いた。


「それなら――×××××××という形にしてみたら、どうかしら?」


ギャスパルが驚いたように眉を上げる。

「いや、それはさすがに……アリなのか?」


「いいじゃない。

あの娘、見た目と実力のギャップがすごいもの。

きっと面白いことになるわ」


「しかし……」


「大丈夫。あの子なら、どんな形でもきっとやっていけるわ」


ギャスパルは少しのあいだ考え込み――やがて口の端を上げた。


「……ふむ。確かに、それも悪くない。

案外、面白いことになるかもしれんな」


月明かりの差す部屋で、夫婦の笑い声が小さく響いた。


その夜、サティエルの知らぬところで――ひとつの“不穏な決定”が静かに下されたのであった。


*  *


入学試験のため馬車で学校へ向かう。


到着すると、学校関係者と思しき初老の男性が出迎えに現れた。


「ようこそおいでくださいました。サティエル様でいらっしゃいますね?」


「はい」


「グランフェルト家よりお話は伺っております。――さっそくですが、闘技場へご案内いたします」


「……闘技場?」


いきなりの言葉にサティエルは小首を傾げたが、男は特に説明を加えず、足早に歩き出す。


その背に続きながら、彼女は内心で小さくため息をついた。


入学試験って、こういう形なの?

疑問に思うがエルネスタも編入試験については初めてでよくわからない。


案内されたのは、広大な円形闘技場だった。


白砂の敷かれた舞台の中央に、がっしりとした中年の男が立っている。


その姿を見た瞬間、サティエル――いや、エルネスタとしての記憶が反応した。


あの人……確か、槍術の先生だったはず。


案内の男は先生に視線を向け、声を低く響かせる。


「サティエル様をお連れしました」


「うむ、ご苦労」


そう答えた彼は、堂々とした足取りでサティエルの前に立つ。


「わしは武術科主任のマルスラン。専門は槍術だ。

君が徒手格闘術の使い手だと聞いておる。――早速で悪いが、その腕を確かめさせてもらうぞ」


「わかりました。よろしくお願いいたします」


「わしは木槍を使わせてもらう。どこからでもかかってこい!」


「はい」


サティエルは軽く一礼し、素手のまま構えた。


その動きは静かだが、わずかに砂が揺れる。

闘技場を吹き抜ける風が、二人の間の空気を張りつめさせた。


マルスランが木槍を握り、構えを取る。


「行きます!」


サティエルは掛け声と同時に地を蹴り、突っ込んでいく。


「おいおい、そんな不用意に突っ込むやつがあるか」


そのゆるい言葉とは裏腹に迎撃は本気の鋭い突きが放たれる。


訓練用とはいえ、その一撃に重みがある。

空気を裂く音が響き、砂が舞い上がった。


サティエルは滑るように身をかわしながら、すれ違いざまに槍の柄を掴む。


力ではなく流れを利用して――そのまま懐へ潜り込んだ。


次の瞬間、マルスランの体がふわりと浮き上がり、砂地に転がる。


「ぐっ……!」


鈍い衝撃音とともに、闘技場に静寂が落ちる。


マルスランは天を仰ぎ、しばらく動けなかった。


「……何が起こったか、まるでわからん。だが――これは凄まじいな」


彼はゆっくりと体を起こし、驚きと感嘆の入り混じった目でサティエルを見る。


「文句なしで合格だ。強いとは聞いていたが、まさかこれほどとは……。

何という流派の格闘術だ?」


「柔気流気功術です」


「聞いたことがないな」


「マイナー流派ですから」

というか、使い手は私だけだし。


マルスランは思わず笑い、槍を肩に担いだ。


「ははっ、面白い! 強けりゃそれでいい。応接室に行って手続きをしよう」


サティエルは合格と聞き、実技試験を通ったのだと理解した。


だが――心のどこかで引っかかっていた。


……手続き?学科試験はその後なの?


小さな違和感を胸に抱いたまま、サティエルはマルスランの後に続いた。


闘技場を吹き抜ける風が、まだ彼女の髪を揺らしていた。

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