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魔女と魔性と魔宝の楽園~追放された転生貴族の自由気ままな【蒐集家】生活。ハズレ前世に目覚めた少年は、異世界で聖剣もモフモフも自分の城も手に入れる~  作者: 御鷹穂積
第二部・第四章◇幸運を呼ぶウサギと、新たなる聖騎士

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第65話◇英雄の結晶





 ファレンの境遇は、概ね想像していた通りだった。

 故郷を出て人里に降りたところを捕まり、流れ流れて【浪費家】の男のもとへ。


 より多くの『黒角兎族』を手元に置きたいと考えた男に尋問され、故郷の村の場所を喋ってしまったという。


 話を聞き終えたあと、故郷の仲間を心配する彼女に安心するよう言い、シュノンに預けた。


 シュノンならば、湯浴みや温かい食事などを通して、ファレンの気持ちを落ち着かせることができるだろう。

 シュノンと過ごすと、みんないつの間にか気が緩んでしまうのだ。


「主殿、次の作戦には、私も同行させて頂きたく」


 執務室に戻る俺に、希少種の三人がついてきた。


「次の戦いでは、ネメアは味方だと思うぞ」


「ならば、奴を超える活躍をご覧に入れます」


 やる気を出すのはよいこと、か。


「では、頼りにしている」


「ハッ……!」


「あたしも協力するよー」


 クエレが軽い調子で言う。


「わたくしも、あの子の様子を見て放ってはおけません」


 二児の母であるエイールは、ファレンの姿を見て思うところがあったようだ。


「二人もありがとう」


 三日後となると、まだまだハーティの力には頼れない。


「今日のところは休んでくれ。だがクリア、お前は残るように。話がある」


「……いないから残れないよ」


「そうか。なら俺は虚空に向かって話しかけよう」


 クリアが舌打ちした。

 クエレとエイールはそのまま退室したが、マーナルムは何か言いたげ。


「気になるなら、外で待っていてくれ」


「し、失礼いたしました。クリア、くれぐれも主殿への不敬には気をつけるように」


「うざ」


「このっ……」


 マーナルムは何か言おうとして、グッと堪えると、俺に一礼してから部屋を出ていった。


 すると、クリアが不可視化を解いて姿を表す。


「それで? さっきの殺しのお説教?」


「殺しを咎めはしない。あの貴族も俺たちを殺そうとしたしな」


「じゃあ何?」


「俺はお前の力を頼りにしている。だが、それは俺の代わりに人を殺してほしいわけじゃない」


「偵察や潜入だけやれって? でも、この力は暗殺で輝く。第一、ナイフくれたのもそういう意味じゃないの?」


 『血に飢えた短剣』のことだ。


「勘違いさせたならすまない。お前の仕事に役立つ武器として渡しただけだ。殺しに専念しろという意図はない」


「別にいいけどね。実際、元暗殺者から殺しを抜いたら、価値ないでしょ」


「何故だ?」


 俺が問うと、彼女が怪訝な顔をした。


「何故って、使えると思ったから生かしたんでしょ? だから、こっちも役に立とうとしてるだけなんだけど」


「お前は何か勘違いをしているな」


「何が勘違いだっての」


「お前がいてくれるだけで、俺には充分だ」


「…………」


 クリアは目を見開き、それから額を押さえて大きく溜息をこぼした。


「あんた、それわざとやってるんじゃないの?」


「なにがだ?」


「はぁ……もういいよ。それで結局、何が言いたいわけ?」


「お前が人を殺す時、その業は俺が背負うべきものだ。お前が勝手に背負うことは許容できない。俺のモノを、勝手に持って行くなという話だ」


「……普通、それを背負いたくなくて暗殺者を使うんだけど」


「ならば、俺は普通でなくても構わない」


「はいはい、あんたは変人だったね」


 肩を竦めて呆れ声を出しながらも、クリアはどこか嬉しそうに見えた。


「じゃ、ひとまず言う通りにするよ、ボス。あんたに殺せと言われたものだけを、あんたの責任で殺す。それでいい?」


「あぁ、それでいい」


「ほんと、変なやつ」


 そう呟くクリアの顔は、楽しげに見えた。


 ◇


 三日後、俺たちは空中移動要塞『トイグリマーラ』の上にいた。

 敵の襲撃日時が分かっているならば、迎え撃つよりも良い手がある。


 事前にファレンの仲間たちを逃がせばいいのだ。


 俺たちは空中移動要塞によってファレンの故郷上空まで移動。

 仲間たちとファレンを伴って彼女の故郷を訪問し、事情を説明。


 一悶着あったりしつつも、村人たちを説得して『トイグリマーラ』に乗せることに成功。


 最初こそ不安がっていた『黒角兎族』のみんなも、自然豊かなこの地を気に入ってくれたようだ。


 別の地に運んで下ろすという案もあったのだが、この様子だと定住してくれそうで、俺としては嬉しい限りだ。


 さて、そうなるとわざわざ地上で聖騎士団と神聖騎士団の戦いに介入する理由などないのだが……。

 今回の件で戦う理由がなくとも、またいつ激突するかわからない。


 実際、シュラッドの一団には仲間の命が何度も危険に晒された。

 神聖騎士団と協力してでも、悪しき聖騎士はここで潰しておいた方がいいと判断。


 『黒角兎族』の集落があった場所に向かうと、既に神聖騎士団と聖騎士団の戦いが始まっていた。


 意外というべきか、劣勢なのは神聖騎士団の方だった。


 ネメアは聖騎士相手にも劣らぬ戦いを繰り広げているが、他の面々は押されている。特にレヴィアンはかなり苦戦しており、そんな彼女を気にして、他の者の戦いも精彩を欠いていた。


「なるほど、俺たちを仲間に誘うわけだ」


「リーダーは別に強くないんだ。うちと一緒だね」


「黙れクリア!」


「ははは。確かに、俺は腕力ではシュノンやハーティにも勝てないからな」


「主殿の存在そのものが、我々の力を大いに引き上げてくださるのです……!」


 マーナルムが熱弁する。


「そうそう。族長様の強さは、単純な腕力とは違うところにあるんだよ。やっぱオスは胆力と包容力だよねー」


「さすがは、ロウ殿とのお付き合いの長いお二人……参考になります」


「青春ですな」


 クエレの言葉にエイールが反応し、ブランが微笑む。


 今回はこの人数での作戦決行となった。

 聖騎士ともなると、戦闘系の前世を持った者も珍しくない。


 いかに優秀な仲間たちとはいえ、本来一対一でぶつかっては勝機の薄い相手なのだ。


 人数を揃えても、広範囲攻撃を受けて大勢の死傷者が出ることもある。

 ハーティの未来視に頼れない以上、迂闊な手は打てない。


 よって、少数精鋭で挑むことにした。


「さて、加勢に行こう。その前に――」


 俺は懐から、琥珀色の宝石を取り出す。宝石の中では、絶えず雷が瞬いていた。





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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

・コミック版連載中!(コミックノヴァ連載)
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