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魔女と魔性と魔宝の楽園~追放された転生貴族の自由気ままな【蒐集家】生活。ハズレ前世に目覚めた少年は、異世界で聖剣もモフモフも自分の城も手に入れる~  作者: 御鷹穂積
第二部・第四章◇幸運を呼ぶウサギと、新たなる聖騎士

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第63話◇神聖騎士団





「神罰代行である……!」


 ――聖騎士か?


 だが、聖騎士団は貴族の次男三男など家督を継げなかった者たちの集まり。

 爵位持ちの者たちに無体を働くようなことはない筈。


 それに、よく見れば衣装も聖騎士のものとは微妙に異なるようだ。


 先陣を切る金髪の騎士には、どこか見覚えがある。


 というより、既視感か。


「な、何者だ!」「警備の者は何をしている!」「聖騎士団か? 一体どこの家の者だ!」


「我々と、あのような堕落した者共を同じにするな!」


 聖騎士団と口にした招待客は哀れ、袈裟斬りにされて床に倒れる。

 女性客から悲鳴が上がった。


「我々は神聖騎士団! 天より賜った力を、正義の為に行使する者! 奴隷を不当に扱い、違法な手段で希少な品を買い漁る邪悪な者共! 貴様らの悪行は今宵終わる!」


 楽園は正義の味方ではない。

 だが、神聖騎士団は、話に聞く限り正義の味方だ。


 俺としては、あまり関わりたくない熱量だが。

 ともかく、この催しについての情報を入手し、奴隷たちを救出すべく突撃したといったところだろう。


「結構な人数だよ。屋敷は囲まれてる」


 クリアの声がする。


「そうか。なら、適当な扉から拠点に帰ろう」


 『帰郷の鍵』があれば、扉一つで拠点に帰還できるのだ。

 慌てるようなことはない。


「皆殺しにするって手もあるよ」


「俺は善人じゃないが、殺戮者でもない」


「つまんないね」


「クリア」


「はいはい。使えそうな場所探してくるから、逃げ帰るまで殺されないようにね」


「心配してくれてありがとう」


「うざ」


 クリアの気配が遠ざかる。


「戦闘系の前世を持つ者は、賊の排除に協力願いたい!」


 主催の男が叫ぶ。

 ちなみにこの男の前世は【浪費家】だった。


 ただ、金を使った分、いい品が身の回りに集まってくる前世だったようで、それが異能(スキル)にまで昇華されている。

 その力が作用してファレンを購入できたのだろう。


「何が正義だ、貴族の邸宅に押し入った罪を命で贖え賊が!」


 一人の男が飛び出す。


 真贋審美眼によると【拳闘家】の前世を持つ貴族だ。

 一撃で大岩を粉々に砕く異能(スキル)を持っている。


 そんな彼の拳を、別の女性が片手で受け止めた。


「あぁん? これ、なんか力使ってんのか? うちの村なら、五歳のガキでももっと腰の入った拳を打てるぜ」


 ネコ耳……違う。獅子だ。

 『紅獅子族』の美女が、神聖騎士団とやらの制服に身を包んでいた。


「なっ……! 巨岩を砕く私の一撃を……貴様、何者だ!」


「てめぇらクソ貴族に奴隷にされてた、ただの亜人だよ。おら、歯ぁ食いしばれ。次はあたしの番だろ?」


 女性の反撃は男の顔面にめり込み、男はそのまま吹き飛ぶと、窓を突き破って俺たちの視界から消えた。


「さぁ、全ての囚われし者たちよ。貴方たちを今、解放いたします」


 俺は金髪聖騎士を改めて見る。


 ――『レヴィアン』

 ――人間。

 ――【解放者】の前世を持ち、『頑強』『人運』『対悪人攻撃強化』『先導』『契約魔法習得』など複数の異能(スキル)を持つ。

 ――特記事項・伝承再演(ミステリオン)保有者。

 ――シュラッドの異母妹。

 ――希少度『S』


伝承再演(ミステリオン)――八極監獄界桎梏斫断令(エアーローニフ)


 瞬間、レヴィアンから眩い光が放たれ、それが会場を満たすように広がる。

 そして光が収まった直後、無数の金属音が響き渡った。


「なっ」


 マーナルムが自分の首元に触れる。

 彼女が出逢って以来つけていた、人工魔法具の首輪が外れていた。

 彼女のものだけではない。


 この場にいた、全奴隷の首輪も同じだった。

 おそらく、首輪を外すだけの力ではない。


 彼女の情報と照らし合わせて考えると――契約魔法を無効化する魔法……。

 いかようにも悪用できそうな伝承再演(ミステリオン)だが、それを奴隷解放に使うとは。


 彼女は本当に正義感で動いているのかもしれない。


「さぁ! 虐げられし全ての者たちよ! 今この時より、貴方がたは自由です! 己の正義に従って立ち上がりなさい!」


 人を人とも思わぬ貴族たちに、もの扱いされてきた奴隷たちが自由になったら、何をするか。


 地獄絵図だった。

 主への怒りを晴らすかのように暴れ始める奴隷たち。


 そうでない者たちは呆然としているが、その数は非常に少ない。

 みな、それだけ辛い目に遭ってきたということだろう。


「どうした? お前らは復讐しないのか?」


 『紅獅子族』の女戦士がマーナルムに気づき、話しかける。


「……私は、自らの意思であの首輪をつけていたのだ」


「はぁ? おいおい、そのナリだと『白銀狼族』だよな? 誇り高き聖獣の眷属が、好き好んで飼い犬やってるって? やめてくれよ、涙が出らぁ」


 馬鹿にした口調に、マーナルムから静かに怒気が立ち昇る。


「……そういう貴様は、随分立派なお洋服を着せてもらっているではないか。可愛いぞ――飼い猫殿?」


 今度は女戦士が頬をぴくつかせる。


「……どうやら、てめぇは随分といいご主人様に恵まれたらしいな。クズ人間があたしらにどんなことをするか知ってりゃあ、そんな言葉が出てくるわけがねぇ」


「知った上で、腹立たしいと言っているのだ。貴様らの殺戮に、主殿を巻き込むとは」


「話になんねぇ!」


「こちらのセリフだ」


 相手が拳を繰り出し、マーナルムがそれを軽やかに回避する。


「族長様、これどうするー?」


 クエレの態度は普段と変わらない。明るく、まるで昼食の相談をしているような軽妙さだ。


「……向こうの長と、少し話す」


 こうなっては、さすがに放っておけない。


「はいはーい」


「各戦士に指示を出しているあの者ですね? では、我々が道を開きます」


 エイールが両手を胸の前で組み合わせると、床が割れ、無数のツタが伸び、こちらに近づく者たちを縛っていく。


「族長様の邪魔しないでねー」


 クエレが飛び出し、見境なく襲ってくる奴隷を掴んではポイと放り投げる。


 俺はただまっすぐ歩くだけで、レヴィアンに近づくことができた。


 仮面越しに彼女と目が合った、気がした。





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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

・コミック版連載中!(コミックノヴァ連載)
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