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魔女と魔性と魔宝の楽園~追放された転生貴族の自由気ままな【蒐集家】生活。ハズレ前世に目覚めた少年は、異世界で聖剣もモフモフも自分の城も手に入れる~  作者: 御鷹穂積
第二部・第三章◇三番目の八大幻想種

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第61話◇四番目




 彼女の強い視線を感じたのでそちらを向き、首を微かに横に振る。


 俺にもなんのことかわからない、と。

 そこはさすがの忠臣マーナルム。


「エイール殿。その、耳に触れるのと、主殿が双子の義父になるのと、どう関係があるのでしょうか?」


 エイールはぽかんとした顔をしたあと、『そうか他種族には通じないこともあるのか』と気付いたようで、咳払いをしてから口を開く。


「緑精霊族にとって、その、この耳は森の声を聞く為の神聖なもの。家族や配偶者でなければ触れることが許されません。そして、異性に耳を触らせてくれと言うのは、結婚を願う際の常套句になっているのです」


 なるほど。

 家族にしか触れさせてはならない大切な耳。


 その耳に触らせてくれと頼むのは、家族になりたいと伝えるも同じ。

 故にそのフレーズがプロポーズに使われるようになったわけだ。


 理解はできたし納得もした。

 同時に自分の失言にも気づく。


 俺はエイールに耳を触らせてくれと言ってしまった。

 思えばそれ以降の彼女の態度には妙なものを感じたが、そういうことならば筋が通る。


 彼女にとって俺は、自分を手に入れるために金貨五万枚をポンと出した男なのだ。


 マーナルムが俺を見て『どうなさるのですか』と視線で問うてくる。

 彼女からは凄まじい圧力を感じた。


「あ、もちろん序列は弁えております。緑精霊族は生まれてくる者に女が多く、また男の発情期も稀な為、妻を何人も娶るのが珍しくないのです」


 たまに来る発情期に、複数の妻たちと子作りに励むわけか。


「序列、というのは?」


「マーナルム殿、シュノン殿、そして話に聞くクエレ殿、御三方がロウ殿の妻なのですよね? 四番目がわたくし、ということについては納得しております」


 どうやらエイールは、俺のプロポーズを受けてくれるようだ。


 問題は、俺にプロポーズという意識がなかったことだ。

 ここで素直に話せばエイールを深く傷つけることは確実。


 だからといって偽りの結婚をするわけにはいかない。

 それに、感謝の念が強いとはいえ、結婚してもよいと思うほど好かれて、悪い気はしない。


 ふとマーナルムに視線を送るが「私が主殿の妻……妻……」と赤面している。


 助力は期待できそうにない。

 俺はエイールに向き直る。


「エイール」


「は、はい」


「その気持ち、嬉しく思う」


「こ、こちらこそ……」


「だが、少し待ってもらうことはできるだろうか」


「……待つ、ですか?」


「お前たちのこれからに責任を持つという気持ちに偽りはない。だがその……俺はまだそのマーナルムたちとの婚姻も済ませていないのだ」


「なんと……」


「順番待ちのようなことをさせて、大変申し訳ないのだが……」


「いえ、人族には人族の習わしというものがあるのでしょう。ロウ殿の中で時期が来ましたら、改めてお声がけください」


「あ、あぁ」


「ですが、わたくしの気持ちは変わりません。そのことを示す為にも、その……触れて頂けますか?」


「……い、いいのか」


「はい」


 俺は椅子から立ち上がり、エイールに近づく。


 緑精霊族特有の尖った耳に、そっと手を伸ばす。

 触れると、ふにふにとしていた。


「んっ、ふ、ぅっ……」


「すまん、くすぐったいか……?」


「いいえ、どうぞお気の済むまま」


 エイールは照れくさそうに赤面しながらも、幸福そうにしている。


「わ、わぁ……お母さん、幸せそう」


「……人間が、新しいお父様……」


「ふふ……妻……いえしかしそんな……ふふふ」


 引き下がれない一歩を踏み出してしまった気がするが、不思議と後悔はなかった。





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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

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