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魔女と魔性と魔宝の楽園~追放された転生貴族の自由気ままな【蒐集家】生活。ハズレ前世に目覚めた少年は、異世界で聖剣もモフモフも自分の城も手に入れる~  作者: 御鷹穂積
第二部・第二章◇色褪せぬ風景画

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第54話◇久々の三人





「なんだか、懐かしいですねぇ」


 のどかな田舎道を歩きながら、シュノンが言う。

 彼女の足どりは楽しげで、弾んでいるようだった。


「えぇ。シュノン殿が任務に加わることは、滅多にありませんから」


 マーナルムが同意するように頷く。

 彼女がシュノンを見る視線は柔らかい。


 旅の初期の仲間同士、二人は仲がいいのだ。


「リアンも来れたらよかったんだが」


「リアンは、トイグリマーラを守るお役目がありますからねぇ」


「聖獣様は、基本的に守るべき地を離れられませんから」


 そうなのだ。

 緊急時に力を借りることはあるが、今のリアンはトイグリマーラを守る存在。


 ちなみに、かつてマーナルムたちの森を守護していた聖獣については、一部の白銀狼族族と共に地上に下ろし、別れた。


 助けた全員が俺たちと行動を共にしたいわけではないし、二体の聖獣が同じ地を選ぶことはできないので、仕方がない。


 たまに向こうに顔を出して交流は図っており、不仲ではないことを付け加えておく。


「せっかくお呼ばれしたので、活躍しますよー!」


「シュノンは人の懐に入るのが上手いからな、頼りにしている」


「まっかせてください!」


 シュノンが堂々と胸を張り、豊満な胸部がメイド服の布地ごと盛大に揺れる。

 そんなシュノンの横で、マーナルムが狼をぺたんと垂らして落ち込んでいた。


「マーナルムがいないと、安心して旅が出来ないんだ。いつも言っているが、頼りにしている」


 瞬間、彼女の狼耳がピンッと立ち、尻尾がふぁっさふぁっさと揺れる。


「はい! お任せください! 魔獣の群れだろうと砲弾の雨だろうと、必ずや主殿を守り抜いてみせます!」


 どうやら元気が出たようだ。よかった。

 元気な二人と歩くことしばらく。


「見えてきましたね」


 目的の村が見えてきた。


「そうだ、マーナルム。今日はこれを付けてみてくれ」


「なんでしょう?」


 俺が取り出したのは、指輪だった。


「プロポーズですか!? シュノンを差し置いて!?」


「そ、そうなのですか!?」


「いや、すまない、これは魔法具なんだ」


 それを聞いてシュノンが安堵するように、マーナルムが勘違いを恥じるように、それぞれ顔色を変える。


「そ、そうですよねぇ。プロポーズなら、マナちゃんだけでやくシュノンにも指輪をくれるはずですし」


「し、失礼いたしました。取り乱してしまい」


 白銀狼族に結婚指輪の習慣はないが、五年も一緒にいれば他種族の慣習にも詳しくなる。

 プロポーズと聞いて慌てる気持ちは理解できた。


「いや、俺こそ説明たらずだったな。これは先日仲間が回収してくれたもので、『化粧直しの指輪』という」


「お化粧直しを自動でしてくれるんですか?」


「はは、そうじゃないんだ。これは、他人から見た姿を少しだけ変えることができる」


「……つまり、指輪を着用するだけで、この耳と尻尾を他者に悟られずに済むのですね?」


「そういうことだ。本来は傷跡やニキビを隠すのに使われていたんじゃないかと思う。毎回『薄影の仮面』を被らせるのもあれだし、よかったらこれを使ってくれ」


「『薄影の仮面』は主殿のお姿を隠す為のもの。お借りすることを心苦しく思っていましたので、こちら、ありがたく使わせて頂きます」


 白銀狼族は『八大幻想種』に数えられるほどのレアな亜人なので、普通に出歩けば衆目を集めてしまう。


 故に『薄影の仮面』を貸し出していたが、これは俺も使うもの。

 貸したり返してもらったりを繰り返していたが、この指輪が手に入ったので、もう大丈夫だ。


「ふむふむ。マナちゃんも女の子ですもんね。仮面で綺麗なお顔が隠れるのはもったいないので、よかったですね」


「そうだな。俺もそう思うよ」


「なっ……! お、お二人ともお戯れを!」


「戯れ?」


「マーナルムが美しいのは本当だろう。これまで何度も言ってきたじゃないか」


「うっ……きょ、恐縮です」


 マーナルムが顔を出して真っ赤にして俯いてしまう。


「それよりロウさま、その指輪、どこにはめるんですか?」


「あー……じゃあ、右手でいいか?」


「は、はい」


 マーナルムが手の甲を空に向けて差し出す。

 俺はそれを彼女の薬指に嵌めた。


 この指輪は、着用者に合わせてサイズが変わるので、ピタッと嵌まる。


「あ、ありがとうございます。あの、ど、どうでしょう?」


 見れば、マーナルムから亜人の特徴が消えている。早速魔法具の効果を試したようだ。


「あぁ、ばっちりだ」


「すごいです! 耳と尻尾が消えてます!」


 俺は彼女の耳があった場所にそっと手を伸ばす。


「んっ」


 見た目には何もないのに、彼女の耳のふにふにした感触が伝わってくる。


「すまん。見え方が変わるだけだから、触れることができるんだな」


「は、はい。あの、こちらの方がいいでしょうか?」


 マーナルムがどこか不安そうに言う。


「なくても美しいが、俺はありのままのマーナルムが好きだぞ」


「〜〜〜〜あ、ありがとうございます」


「シュノンもマナちゃんが大好きですよ!」


 シュノンがマーナルムに抱きつく。


「わたしも、シュノン殿を大変好ましく思っていますよ」


「ではロウさまのことは?」


「……そ、それはもう永遠の忠誠を誓っております」


「そういうのじゃなくて〜」


「シュノン殿、ここはどうかご容赦をっ」


 楽しげな二人を微笑ましく思う。


「よし、そろそろ行こうか」


「ハッ……!」


「はーい。それでロウさま、今日をお目当てはなんなんですか?」


「絵画だ」


「絵ですか? あ、中に描かれている人が動くとかのホラーは禁止ですよ!」


 シュノンがぶるりと震える。


「惜しい。動くのは俺たちだ」


「どういうことでしょう?」


「その絵はな、描かれた風景の中に入れるらしい」






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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

・コミック版連載中!(コミックノヴァ連載)
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