凶悪!! 惑星滅菌計画!! その13
ロボットに負けず劣らない巨体と化した元大幹部セイント。
その巨大な腕から、極太の光線が放たれ、ソレは地球へ向かう岩へ当たった。
怪しい怪光線は、隕石を削り始める。
それだけでも、セイントの放つ光線の威力の凄まじさが見て取れるだろう。
そんな光景に、良はハッと成った。
組織を抜けた者に丸投げで任せたと在っては首領の意味が無い。
『おい! 皆! ボサーッとしてらんねーぜ! 俺達も手伝うんだ!』
首領としての声に、同乗の四人もお互いに頷き合う。
『は!? 確かに!』
「まぁ、全部やらせたなんてさ、後で怖いし」
「良いから、速く手伝わないと!」
アナスタシア、カンナ、愛の声にを受けて、博士が息を吸い込む。
『今すぐ行きます!』
博士の意志を汲み取った巨人もまた、隕石へと向かう。
必死に光線を放つセイントに倣う様に、ロボットも全身の兵器を向けた。
『リサ! 在るだけ全部だ! ケチくさい事すんなよ!』
普段は、良は博士を名で呼ばず愛称で呼ぶ。
ただ、この時は気分が高ぶって居たのか、そう叫んでいた。
良の呼び声に、博士はまるで胸の内側から力が湧き出す様な感覚を覚えていた。
物理的に博士の肉体が急激に筋肉質に成った訳ではない。
『わかってます!』
強い博士の声に、ついでにと良はロボットの台座をポンと叩く。
『そら! お前もだ! 気合い見せてくれ!』
操縦士は博士だが、その頭脳であるマシンの主は変わらず良である。
それ故か、ロボットが主の声に応える。
*
巨人の腕や脚は、更なる変形を見せた。
ただの腕では、白兵戦しか出来ないかも知れない。
が、それを武器へと変化させれば話は違う。
ただ腕が砲台へと変わる。
ロボットからは、セイントに負けず劣らずの光線が放たれた。
二本の光線が混じり、それは相乗効果を生み出す。
表面を削るだけだった筈が、徐々にだが隕石に亀裂を走らせる。
激しい光線に晒された隕石は、とうとう割れが入った。
硬いモノほど、実は脆いという欠点。
一見すると矛盾にも見えるが、衝撃を受け流す柔軟性が無い分、かえってそれは脆い。
硬ければ硬いほど、一点からの衝撃には弱いという弱点。
僅かでもヒビや亀裂が走れば、其処から割れてしまう。
地球を抉る筈の隕石は、巨体と巨人の光線にとうとう耐えられず割れた。
数百メートルは在った筈のそれは、砕かれ粉々に散り出す。
ただ、元々の加えられていた速度迄は殺せない。
*
隕石を壊した迄は良いが、それを消し去った訳ではない。
ロボットの操縦室からも、 飛んでくる破片は見えていた。
散弾銃の弾の様に飛び来る破片に、良は全身が総毛立つ。
『ヤバい!! 博士! 避けろ!』
いち早く事態に気付いた良は声を張り上げる。
無論、博士にも見えては居た。
が、大きさ故にそう簡単にはロボットは動かない。
全身を攻撃に使って居る為に、離脱するにはもう一度変形が要る。
だが、隕石の破片は既に目前であった。
『駄目!? 皆! 掴まって!!』
動けない以上、博士は受ける事を選択する。
防御の体勢をロボットに取らせた。
如何に破片とはいえ、元々は数百メートル単位の岩である。
つまり、散り散りに成ったとしても、一つの大きさは凄まじい。
ましてやその質量たるや、並みの砲弾以上の重さが在る。
岩の波が到達した時点で、操縦室を激しい揺れが襲った。
*
散弾が如く広がった岩は、良達が乗るロボットだけでなくセイントへも届く。
機械には出来ない柔軟な動きで岩を避け、時には弾く。
破片が一つ二つ程度ならば、セイントには大した事ではない。
しかし、それが数百数千と成ると話しは違う。
視界目一杯に広がる岩の破片は、まるで雪崩か津波の如く押し寄せる。
同じ様に破片に晒されるロボットを、セイントは見ていた。
小さい破片で在れば、多少なりとも装甲が跳ね返す。
が、大きいモノに成れば受けた側の被害も著しい。
そして、巨体と化したセイントもまた、地球へ破片が落ちない様にするので手一杯であった。
*
凄まじい揺れに晒される良。
何秒か過ぎたのか、何分か、時間の感覚が薄れる。
ようやく揺れが収まり、顔を上げた。
『あぁ……エラい目にあった……って! おい! 大丈夫か!?』
改造人間に取っては、多少の揺れは問題ではない。
良の声に、同乗の四人は呻く。
『ご心配なさらず』
「生きてるよー」
アナスタシアとカンナの声を聞いてホッと一息入れたくなるが、良は更に見渡す。
愛と博士もまた、ゆっくりと頭を上げた。
「もぅ、当分は絶叫マシン乗りたくない」
『私達は大丈夫ですよ、良さん』
如何にも少女らしい愛に、正確に自分の状態を告げる博士。
二人の反応から察するに、大きな問題は無いのだろう。
が、5人を乗せたロボットは違っていた。
まだ目が死んだ訳ではないらしく、操縦室の壁には外の光景が映る。
其処から見えるロボットは、大部分がボロボロに成っていた。
満身創痍とも言える巨人の姿に、良はポンと床を撫でる。
『よぅ、頑張ったな?』
声が届いて要るかは定かではないが、良は労いを贈っていた。
「あれ! そう言えばさ、アイツは?」
ポンと出された虎女の声に、四人も周り見る。
だが、見える範囲にはセイントは見えない。
『あいつさ、あんまり長い間は無理なんだよなぁ』
セイントが五分しか戦えないのは良も知っている。
それも心配だが、良は地球の方へ目を向けた。
分かるのは、どうやら隕石は地球には落ちていないという事だけ。
多少の破片は降り注ぐかも知れないが、それは大気に焼かれ消える。
直接的見ている訳ではないが、どうやら隕石直撃は無かったのだろう。
青い星は、そのままぽっかりと宇宙に浮いていた。
『どうやら、向こうも無事かなぁ』
やりきった。 五人の誰もがそんな事を思う。
が、その気分に水を差すように操縦室には雑音が響いた。
─お疲れ様。 諸君、まだ生きているかな?─
聞こえた声に、良はムゥと唸った。
『聴きたくねぇ声だな? 生憎と生きてるぜ? どうやらそっちの計画は無駄に終わったな』
勝ちを確信したからか、良の声は僅かに明るい。
そんな返事に対して、操縦室には不気味な嗤いが響く。
その嗤いは、まるで悪戯が成功した子供の様であった。
─計画は失敗だと? いいや、寧ろ成功だ─
『うっせぇダボが!! 負け惜しみも大概にしやがれ!』
良は叫ぶが、相も変わらず抑えた不快な嗤いは続いていた。
─懸念材料であった者はもう居ない。 貴様は知っている筈だな、篠原良よ─
声は誰とは言わないが、それが誰を指しているのかは嫌でも分かる。
言葉の通り、セイントは既に居なかった。
─かの者の力は確かに絶大だ。 我々ですら警戒するほどにな。 とは言え、居ないのであれば何の問題にも成るまい。 その為にあの石ころを用意したのだからな─
そんな声と同時に、太陽光に照らされた月が操縦室から見える。
見えた光景に、良を含めた五人は絶句した。
確かに隕石は破壊したが、なんと別の巨大な球体が見えてしまう。
それは、もはや姿を隠すつもりが無い現れなのだろう。
─篠原良。 見えているのだろう、我々が。 貴様の念願通り、こうして直接会いに来たぞ─
響く声に、良はチラリと博士を見る。
『博士、此奴を動かせるか?』
ボソッとした良の囁きに、博士は慌てて確かめる。
博士にしかロボットの状態はわからない。
だが、わかった所で決して良い状態ではなかった。
損傷の度合いは酷く、正に満身創痍である。
『動くことは、動くと思いますけど……』
其処までで、博士は言葉を止める。
言った所で、何の救いにも成らないからだった。
博士の報告に、良は小さく舌打ちを漏らす。
元々が分の悪い勝負である事は分かっていた。
護る側と攻める側では、実はあっという間に攻める側が優位に立てる。
攻める側が不利に成るのは、後の事を考えるからだ。
設備の接収、人材の確保。
逆に言えば、全てを壊すだけならば一切の遠慮は無用である。
何も考えずに壊すのに対して、護る側は不利であった。
どうしたものかと、悩む良だが、結論を相手は待つ必要は無い。
─本来であれば、貴様如き小物に姿を見せる事すら無意味だろう。 だが、貴様だけは特別だ。 精々誇るが良い─
そんな声に、操縦室から見える球体にも変化が在った。
少し前に良達が戦った個体と同じく、一部が開く。
その光景に、良は立ち上がる。
『くそったれが! 博士! なんか無いのか!?』
このままでは座したまま死ぬだろう。 それは、受け入れられる事ではない。
何とか足掻くべく、良はもがいていた。
その気持ちは博士も理解は出来る。
ただ、出来たからといって何がどうなる訳ではない。
『まだ、少数の砲門は生きてます。 けど……』
『けど、なんだ?』
『向こうを吹き飛ばすだけの火力は……もう』
小型の砲では小惑星程もある敵には手も足も出ない。
それは良にもわかってはいた。
『くそう、なんか、何かないか』
必死に頭巡らせる。 この際、藁でも奇跡にでも縋りたい。
そんな時、良の中で【奇跡】という言葉が引っ掛かった。
ハッとした様に、良は愛の方へ振り返る。
『川村さん! 出番だ!』
ビシッと指差す良に対して、愛も自分を指差す。
「へ? 私?」
急な事に、魔法少女は目を丸くしていた。




