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第八十五話 正気

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 三時間後。


「ははははっはあっはははははははははははっひはははっはははははははっと……あれ?」

「ようやく正気に戻ったでっしゃろ」

「へっ? あ……あれ~~シャル……皆は?」


 今、僕とシャル以外この部屋に誰もいない事に僕は気付く。


 僕は咄嗟に窓に差し込む影で太陽の位置を測り時間を簡単に計測する。


 あれから三時間ぐらいかな……。


 うん。


 僕は今までなにをやってたんだろ? 

 

「あ~~皆さん。もう入ってきても良いでっしゃろ」


 シャルがそう言うとドアの外から皆が入ってくる。


「皆さん。頭領を刺激しない様にゆっくり入室してください」

「……いつのまに……」


 いつの間にか僕の隣に立つ新月に唖然とするシャル。


「新月とか名乗っている貴女、貴方何時この部屋に入ってきたのでっしゃろ?」

「私はカイル様のメイド件秘書と護衛に愛人を兼ねてますので……それが何か?」

「……ああそうでっしゃろか」


 突然現れた新月に冷汗を流すシャル。


 すまんね。


 忍者というのはそんなものです。


 それと新月は愛人ではなく将来の嫁の一人です。

 

 というかサラリと発言の中に愛人というワードが入っていたのはスルーですか。

 シャル。


「あんた大丈夫? 暫く狂ったように笑っていたみたいだけど」

「あらあら。正気に戻ったみたいね」

「大丈夫なの~~」

「なのなの」


 まず最初にセリスが部屋に入ってきた。


 されからマリさんやキキとキルが恐る恐る入ってきた。


 セリスなら兎も角。


 マリさんが入ったとき少し怖かった。


 キキやキルが入ってきた時、心臓が跳ね上がるように僕の鼓動が跳ね上がった。

 明らかに軽い恐怖を感じてだ。

 何でだろう?


「御主人様! 大丈夫ですかっ!」

「わあああああああああああんっ!」

「大丈夫なの?」

「大丈夫ですか?」

「ZZZ~」


 アカとクレナイにシンクにルージュ、エンが泣きながら部屋に入ってくる。


 僕は五人を見ても少し恐慌状態になった。

 だけど五人の僕を心配した顔を見ると収り始めた。


 そのまま泣きながら体を擦るようにして、しがみ付いてきた時には完全に治まった。

 一人だけ寝ぼけてたのはご愛嬌だろう。


「もう大丈夫がな」

「腐腐……そう?」

「ああ~シスター的にやりすぎたと思うな」

「分かってるの。駄目駄目シスター」

「サラちゃん酷いっ!」


 そのままクリスにサキ姉さんやシスターとサラが入ってくる。



 ゾクリ。



 その顔を見た途端だ。僕に悪寒が走ったのは。


 いや、今までとは桁が違う。


 これは巨大な捕食者に食われる前の小動物が味わう真の恐怖だ。


「ひいいいいいっ!」


 心臓が爆発し鼓動が臨界点を超えそう。

 僕は悲鳴を上げる事しか出来なかった。

 体面などぶっ飛んで膝を折り四人に土下座する僕。


「許してください……御願いします……すみません」


 僕は鼻水と涙を流しながら謝罪の言葉を何度も繰り返してた。

 多分これが錯乱状態と言うんだろう。


 自分でももう何を言ってるのかすら分からなかった。

 

「あの~~なの」

「おおい~~がな」

「……腐」

「シスター的に、カイルが人の話を聞いてくれたら嬉しいかな」

「御免なさい。許してください」


 四人が何かを言ってるみたいだが僕の耳には届かない。


 そのまま僕は謝罪の言葉を口にする事しか出来ない。


 謝罪し謝らなければ助からないという脅迫概念によるものだ。


 後から考えれば、あれは四人が新月の発言に対して威圧を飛ばした余波を、モロに浴びてしまったんだろう。


 うん。

 多分。


「だから落ち着けがなっ!」


 

 ゴスッ!



「アベシッ!」


 またもや剣の柄で僕を殴るクリス。


「「「「「「「「「「「「あっ……」」」」」」」」」」」

「きゆ~~」


 皆の唖然とした声が聞こえる。

 だが僕はそれどころではなかった。

 殴られた僕はそのまま気絶する事となった。


「「「「「「「「「なにやってるのっ!」」」」」」」」」

「すまんがな~~」


 皆に謝るクリスの言葉が最後に聞こえた気がした。




 

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