第七十九話 遠回りな脅迫
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「そ……そうか」
顔が引きつってますよ~~剣王様。
「カラルさんとは一緒の部屋で寝ないんですね」
「当たり前だ。奴の剣術の腕前は知ってるだろう?」
「ええ、王族クラスですよね」
カラルさんはああ見えてクリスより少し劣る程度の良い腕前を持っている。
ジョブは侍。
侍は騎士、兵士、気功師、魔術師のジョブで構成されてる。
このジョブは専用の武器である刀を使用する事でその能力が強化される。
例として変更したてのレベル一の侍の場合。
通常の武器では侍にジョブ変更した初期時点で総合レベル十九相当。
だが侍が刀を使用すると総合レベル二十二相当になる。
気功師のジョブが前衛扱いになるからだ。
そして恐ろしいのが剣鬼のジョブと同じ特性を持つ事だ。
二本の刀を持てば総合レベルが上がる。
気を開放すれば短時間だが更に総合レベルが上がるのだ。
しかも魔術を併用すれば剣鬼を超える広範囲の攻撃が出来る。
しまった。
話しが逸れた。
「奴と戦ったら下手すればどちらかが死ぬ。だから一緒に寝ないんだ」
「……なるほど寝起きが悪い方は、目覚め直後の自分が何をするか自信が持てませんからね」
「そうだ……」
実は此れは有り得る話しだ。
長い間戦場で過ごした者が平時になっても緊張感が抜けず、朝自分を起こしにきてくれた肉親を咄嗟に殺害してしまった例がある。
……という事をサキ姉さんから聞いた事がある。
恐らく剣王もそれを危惧しているのだろう。
確証はないけど。
「まあ良い。それで私の寝所に潜入してまで報告したい内容とは何だ?」
「剣王様とこの国に対し、馬鹿な事を仕出かした貴族達の調査報告を、直接致したく参上致しました」
「ほう」
何処か面白そうな顔で笑う剣王。
まあ~~そうだろう。
この国には優秀な諜報機関がある。
すでに全体像は把握してるのだろう。
ある程度はね。
そんな剣王を尻目にしながら僕は報告書を渡す。
「む……」
「どうしました?」
「いや」
「そうですか」
「……」
報告書を受け取った剣王はそこに書かれた内容を吟味する。
すると顔を強張らせた。
それはそうだろう。
自分が把握している以上の内容が記されていたのだから。
しかも事前に密偵が僕達に流したはずの欺瞞情報まで訂正されてるのだから。
それがこの国への牽制となる。
正しい調査報告を渡す事こそ、剣王とこの国に釘を刺す行為となるのだ。
『此方の諜報能力は、この国の諜報機関を遥かに上回り、既に全て把握していぞ』との。
『これ以上僕達を舐めると報復するぞ』……と。
そんな僕からの警告メッセージとして剣王は解釈するだろう。
まあ現実は僕の力ではなく新月達あってこそなんだが。
そこら辺は気にしないで欲しい。
「……それで私に何をさせたいのかな?」
「何人かの悪徳貴族を合法的に始末し、見せしめとしたいので、正式な殺人許可書を貰いたい」
「……」
この言葉に剣王は絶句し沈黙する。
『頂きたい』のでは無い。
『貰いたい』。
主導権はすでに此方にある。
という意味を込め語尾を強くしたのだ。
この僅かな違いに剣王は気が付いたのだろう。
顔を少し引きつらせている。
というかこれは四才児が話せる内容ではない。
しかも此方は『不幸な事故とか病気』とか前置きに付け剣王に忖度していない。
『殺す』と言ってるのだ。
それが更に剣王にとっては追い討ちとなる。
だがそれでも自身の聞き間違いかと疑ったのだろう。
「ふむ。それで?」
「その後は残りの者に噂を流します」
「噂?」
「ええ。王家を欺いた貴族が相次いで妙な死に方をしたと」
「……」
「無論、全ての貴族に対してではないですよ」
「……」
「事の真実を知る貴族は、三分の二程度でしょう」
「残りは?」
「欺瞞情報を適当に流します」
「それはどうしてだ?」
「人というのは無意識に自身が信じたい方を信ずる生物です」
「それで?」
「誤った情報を同時に流すことで、自身が選んだ方が正しいという習性を利用します」
「どうなる?」
「自ら真実の情報を選んだ貴族側は、国家と王を敵にするとはこういう事だという、真の恐怖を味わいます」
「そ…そうか」
盛大に顔を引きつらせる剣王。
「まあ情報操作ですね。意図的に此方の思惑に思考を誘導し選別します」
「……そうか」
それだけを辛うじて答える剣王。
なんか疲れてるみたいだ。
まあ狙ってやりましたが。
今度潜入した時には、栄養ドリンクでも差し上げようかな~~。
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