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第二十六話 帝都内 トラブル。 

これで最後です。

次は又時間が掛かります。

 まだ着かないな~~。

 遠くを見ると果てしなく広がる人の波。

 前に僕が来た時とは大違いだ。


「お兄さん良い男だね。どうだい遊んでいかない?」

「遠慮しとくよ」

「や~~ん可愛い子」

「御免なさいっ!」


 通りの外れには、肌がやたら露出した服を着た娼婦らしき立ちんぼがいた。

 その娼婦達は若い男二人を誘っている。

 大通りの横の壁際に視界を泳がした時にそんな光景が目に入った。


 あっ……。


 十代前半らしき少年が顔を真っ赤にして逃げていく。


 もう一人は別の方に歩いていくね~~。


 ……この男性二人は旅の供と言う中では無かったみたいだね。


 それはそうとして娼婦らしき女性の化粧が濃ゆいのは年齢を誤魔化すためだろうか?

 三十代後半ぐらいかな。


「意外がな」

「どうしたの?」

「カイルは年齢に関わらず、ああいった女性の境遇を見たら問答無用に助けると思ってたんだが……」

「ふえ?」


 僕は戸惑った声を上げる。


「そんな風に僕が見えます?」

「そう見えるだがな」

「う~~ん。ああいった人達は、様々な理由込みで苦界に身を置いているんですよ」

「まあ、知っているがな」

「身勝手な正義感を押し付けて助けるのは、あの人達の覚悟を上から目線で台無しにするのと同じ事なんです」

「まあ、分かるがな」

「それに助け出したらキリがないですからね。そこまでは面倒見れません。御金が勿体ないです」

「それが本音かいっ! 金の亡者がなっ!」


 僕の言葉に怒るクリス。


「だから病気になったら場合、格安で治療出来るように医療関係を充実させます。数日中に」

「違ったがなっ! 物凄く良い奴だったっ!」

「しかも万が一避妊に失敗した場合もバッチリとフォローしますっ!」

「生々しいがなっ! 誰が教えたっ!」

「正しい性教育とやらを、サキ姉さんに教えてもらいました」

「サキ姉さんっ! 四歳児に何て事を教えてるんだっ!」


 僕の言葉に赤くなり吠え出すクリス。


「何時もの事だと思うけど……」

「そうだったがな……」

「正しい性教育なんてのは僕の年齢にはまだ早いと思うけど……」

「なら何でサキ姉さんはカイルに教えたんだがな」

「成人前に僕が誰かを押し倒した場合に必要だからと……」

「だああああああああっ!」


 僕の言葉に吼えるクリス。


「でも僕が成人する前に、サキ姉さんに押し倒されるのが先だと思うけど……」

「やめんかがなっ! 抵抗しろっ!」

「でも僕はサキ姉さんの事も好きだし……拒めないと思う」

「そうだった……」


 項垂れるクリス。


 うん。


 クリス。


 あなたも人の事言えないんですけどね。


 幾ら四才児だからって僕を毎日お風呂で洗うのは止めてください。

 しかも他の人に任せずに貴方が直接僕を洗うから精神的にきついんですけど。

 

 全裸で前を隠さずにやられると特に。


 もっと羞恥心を持ってくださいと言いたい。


 というか色々と成長してるから目のやり場に困るし……。

 かと言って目をつぶると色々気まずいし。

 などと僕は思いつつ溜息を付いた。



 ◇



 僕達がそんな雑談をしていると、とある光景がチラホラ見えるようになった。


「すまないね~~この時期はどの部屋も満室なんだ。他の宿を当たってくれ」

「そんな~~」

「まってよ。私達は長い道のりをここまで歩いて来たんだよ。馬小屋でも良いから泊めてよ」

「御免なさいねえ~~その馬小屋も一杯でね」


 などと言いながら謝る宿屋の女将。

 そして悲しげに溜息を付く女性冒険者の二人。

 

 ダークエルフの剣士に小人賊の魔術師か……。

 珍しいね。


 周囲を見渡せば、似たような境遇の冒険者が路地の隅っこで。

 若しくは空き地で野宿の準備をしていた。


「ふむ? 泊まれる宿が足りないんですかね」

「ああ……この時期は特にだがな」


 僕の疑問に答えるクリス。


「宿屋屋も分かっているなら部屋を増やせば良いのに」

「そうもいかないがな。増やしても維持が大変だからな」


 ……ああ。


 確かに部屋を増やせばそれを維持しなければいけないし。

 他の時期に全く使わないなら増やす意味が無いもんな。


 うん?


 なんでだ?


 何故他の時期には人が来ないんだ?


「ねえクリス。なんでこの人達は特定の時期にしかここに来ないの?」

「ここの立地が問題なんだがな。夏は暑すぎ冬は論外。来れるのは春か秋なんだよ」

「温泉に入りには来ないの?」

「何でわざわざ温泉に入りに来るんだがな。こいつ等は剣を扱うジョブを習得するか、若しくは剣の修行目的に此処に来てるんだぞ」

「まさかと思うけど、娯楽として御風呂や温泉に入らないの? 若しくは湯治とか」

「湯治? 風呂なんぞ体の汚れを落とすだけのもんだろう?」


 なるほど。

 認識の違いか。

 これは使える。



「はぁぁ~~どうしよう。泊まれる宿がないよ~~」

「うう……どうしよ。今夜は野宿かな~~」

「おーいっ! セリスにミリア」


 ズルリ。


 僕は思わずこけた。


 はっ?


 セリスにミリア?


 その名前に僕は思わず反応し声がした方向を見た。


 すると四年ぶりの再会となる、赤ん坊の僕を最初に拾って孤児院に預けた3人組がそこに居た。


「……」


 僕はそのまま力なく蹲る。


「どうしたがな! カイル急に蹲ってっ!」

「い……いえ。気にしないで下さい」

「そ……そうか」


 ありえねえええええええっ!


 なにっ!


 この欲求不満だけが溜まる唐突の再会イベントはっ!


 普通はもっとこうあるだろうっ!


 例えば互いに命の危険が迫ってる時に、颯爽と駆けつけに来るとか何かさぁ!


 何で唐突にこんな旅の途中で出会うわけっ!


 うわあああああ。


 がっかりだ。


 まあ……五歳になったら必ず僕を迎えに来ると言ってたので、感動の再会を想像してたのになあ~~。

 ないわ――……。

 なんだろう――……この徒労感。


「どうしたがな?」

「気にしないで下さい」


 脱力しながら力の無い笑みを浮かべる僕。


「ちょっとっ! 何をするのっ!」

「良いじゃねえかよ」

「離しなさいよっ!」

「おいおい、俺たちは親切で言ってやってるんだぜ」

「ふざけんなっ!」

「いいから言う事を聞けよ」


 僕達が振り向くとセリス達三人、は中年の酔っ払いの冒険者達に絡まれていた。

 セリスに片手で僕は拘束される。


「ちっ!」

「まだ駄目だがな」

「どうして?」

「手を掴まれただけではまだ罪状が軽い」

「……分かりました。」


 僕は拳を握り締めた。

 しかし昼間から酒瓶を片手にってどうよと思う。

 通行人はその冒険者達から眼を背ける。

 はて?


「えっと。何で通行人の人達は誰も止めないんですかね?」

「あの馬鹿達はB級……つまり強さだけで言えば準男爵級だからがな」


 意外だな。


 あれで暗殺者ジョブの時の僕と総合レベルは同じか。


 ククル村とは基準が違う。

 いや違う。

 ここは剣の聖地。

 剣の修行もしくは変更をしに来たので偶々弱いジョブなんだろう。


「それで怖がって知らん振りしてるの? 周りの人達は……」

「まあな~~がな」

「それはそうと、あいつらの事をクリスは良く知ってるの?」

「……昔絡まれた。もう少し待てがな。こちらから手を出せる程の理由があれば正当防衛で助けられるからな」

「うん」


 僕は表面上は冷静だったが腸の中は煮えくり返っていた。


 クリスが居なかったら殺していたかも。


 いけないな~~。


 暗殺者のジョブにしていると思考まで引き摺られるよ。


「なら相手から殺してくれと僕に嘆願するような悪行になるまで待つよ」

「カイル……お前本気だな」

「ふえ? 生きてる価値なんてないでしょう? あいつ等」

「……」


 虚ろな目でヘラヘラ笑う僕を見てドン引きするクリス。


 何で?


 そんなの常識でしょう。


「いかん……カイルがやりすぎないように見張ってないと……」


 やりすぎ?


 普通だと思うけど。


 そんな事を思いながら仮面を手で弄ぶ。


 え?


 仮面は何処に持っていたかって?

 クリスが持っていました。

 今さっき返してもらいました。

 さてどうしてやろうか?

 楽しみだな。


「ふふふふふふ」

「駄目だ……こいつは」


 僕の壊れた言動に頭を抱えるクリスだった。









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