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空から魔女がふってきた!  作者: 杉並よしひと
第四章
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29

 と、俺の思考を妨げる様に、カタリーナの不機嫌そうな声が飛んだ。

「なんだい、お前は」

 俺は驚いて振り返った。ハルも、翠も、竜二も、みな振り返る。

 結界がぱっくりと、傷穴の様に開いていた。その裂け目に立っていたのは。

「おお、派手にやってるじゃない」

 母さんだった。何度も見た事のあるコートを羽織り、すっくと立って、こちらを睨んでいる。おお、コートの裾が風にはためいたりして、我が母親ながら無駄にカッコいい。

 いやあ、ね? 俺もおかしいと思ってたんだ。あの置き手紙の内容の事だ。何で俺が「戦」を控えている事を知っているのか、俺は確かに訝しんだはずだ。だけど、そのあとすぐに渓が家の中に忍び込んで来て、あれよあれよと言う間にこんな所に来ていた。

「ヤマト、あんたが体を張るなんて、珍しい事もあるじゃん」

「放っとけ」

 あんたにゃ敵わないよ。俺が心の中でそう毒づいていると、

「魔力が感じられないが、お前さん、魔法使いじゃないな?」

「そうよ。それがどうしたって言うの」

 カタリーナと母さんの間に、何とも言えない張り詰めた感じが訪れる。それを知ってか知らずか、母さんは更に続けた。

「何しろ、私の息子が関わってる事だからね。出来るだけ事は荒立てたく無いんだけど。

 率直に訊くけど、あんた、羨ましいんでしょ?」

 カタリーナの小さな舌打ちが聴こえる。

「自分の手の届く所に、自分の手の届かない存在がいる。私にその悔しさは解らないけど、想像するくらいなら出来る。だから、こう訊いたの。

 答えてくれるかしら?」

「お前は何も解ってない」

「だから、そう言ってるじゃない。答えてくれる?」

 カタリーナは、今日何度目か解らない、あの苦りきった顔を見せた。

「魔法使いの存在を知ったお前が、どうなるか、解ってるのか?」

「知らないわよ、そんなもの」

 軽やかに言い放った。ああ、その精神力だ。俺が一番欲しい者は。ハルの一言一言に驚いていた俺が、とてつもなく可愛く思えてきた。うーん、俺って可愛かったのか。

「そうか、じゃあ、思い知らせてやる必要があるな」

 カタリーナのその言葉にも、母さんは怖じ気づかない。俺の目の端で、ハルと翠が何か話しているのが見えた。

「あの人、だれ? 何でここにいるの?」

「ヤマトのお母さん。なんと言うかね……、凄い人」

 そして、渓と竜二が話している声も、微かに聞こえてきた。

「マスター、あの方は誰ですか?」

「ヤマトのお母さんなんだけど……、また何でこんな所に……」

 少し空気がざわついたが、母さんはそんな事も気にしない。

「思い知らせてくれる必要はないわ。ただ、答えて欲しいだけ」

「話にならん」

 カタリーナは吐き捨てる様にそう言うと、ゆっくりと杖を振り上げた。

「お前さんには、死んでもらう」


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