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と、俺の思考を妨げる様に、カタリーナの不機嫌そうな声が飛んだ。
「なんだい、お前は」
俺は驚いて振り返った。ハルも、翠も、竜二も、みな振り返る。
結界がぱっくりと、傷穴の様に開いていた。その裂け目に立っていたのは。
「おお、派手にやってるじゃない」
母さんだった。何度も見た事のあるコートを羽織り、すっくと立って、こちらを睨んでいる。おお、コートの裾が風にはためいたりして、我が母親ながら無駄にカッコいい。
いやあ、ね? 俺もおかしいと思ってたんだ。あの置き手紙の内容の事だ。何で俺が「戦」を控えている事を知っているのか、俺は確かに訝しんだはずだ。だけど、そのあとすぐに渓が家の中に忍び込んで来て、あれよあれよと言う間にこんな所に来ていた。
「ヤマト、あんたが体を張るなんて、珍しい事もあるじゃん」
「放っとけ」
あんたにゃ敵わないよ。俺が心の中でそう毒づいていると、
「魔力が感じられないが、お前さん、魔法使いじゃないな?」
「そうよ。それがどうしたって言うの」
カタリーナと母さんの間に、何とも言えない張り詰めた感じが訪れる。それを知ってか知らずか、母さんは更に続けた。
「何しろ、私の息子が関わってる事だからね。出来るだけ事は荒立てたく無いんだけど。
率直に訊くけど、あんた、羨ましいんでしょ?」
カタリーナの小さな舌打ちが聴こえる。
「自分の手の届く所に、自分の手の届かない存在がいる。私にその悔しさは解らないけど、想像するくらいなら出来る。だから、こう訊いたの。
答えてくれるかしら?」
「お前は何も解ってない」
「だから、そう言ってるじゃない。答えてくれる?」
カタリーナは、今日何度目か解らない、あの苦りきった顔を見せた。
「魔法使いの存在を知ったお前が、どうなるか、解ってるのか?」
「知らないわよ、そんなもの」
軽やかに言い放った。ああ、その精神力だ。俺が一番欲しい者は。ハルの一言一言に驚いていた俺が、とてつもなく可愛く思えてきた。うーん、俺って可愛かったのか。
「そうか、じゃあ、思い知らせてやる必要があるな」
カタリーナのその言葉にも、母さんは怖じ気づかない。俺の目の端で、ハルと翠が何か話しているのが見えた。
「あの人、だれ? 何でここにいるの?」
「ヤマトのお母さん。なんと言うかね……、凄い人」
そして、渓と竜二が話している声も、微かに聞こえてきた。
「マスター、あの方は誰ですか?」
「ヤマトのお母さんなんだけど……、また何でこんな所に……」
少し空気がざわついたが、母さんはそんな事も気にしない。
「思い知らせてくれる必要はないわ。ただ、答えて欲しいだけ」
「話にならん」
カタリーナは吐き捨てる様にそう言うと、ゆっくりと杖を振り上げた。
「お前さんには、死んでもらう」




