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風が少し弱まった。猫の方を見ると、猫は少し疲れたのか、地面へ腹を付け、にゃあにゃあとあくびをしていた。やっぱり、魔獣と言うのは気まぐれな物らしい。
カタリーナもそれを見ると、目を細めて笑いながら肩をすくめた。
「まったく。やっぱりあの子は、あの魔法の樹を持つ器じゃないのかねえ」
風が止んだと見るや、翠と竜二が一斉に飛び出す。二人は二手に分かれると、すぐにカタリーナの両側に陣取った。
「エメちゃん!」
「渓!」
二人とも自分の相棒を鋭い声で呼ぶ。
すぐさま渓が懐から何かを取り出し、ゴーレムはのっしりとカタリーナの前へ立った。って、ちょっと待て。渓が構えているのは、ありゃ、拳銃じゃないか?
しかし、それでもカタリーナは動じずに、ただただ楽しくて仕方がないと言う風に、にやりと口角を上げた。
「弱いのう」
そして、ゴーレムと渓が動き出す前に、全てが終わった。
「散れ」
ただ一言、カタリーナはそう言うと、皺に埋もれた指を、ぱちん、と鳴らした。思ったよりも、強く、はっきりした音だった。
それを境に、一瞬、世界から音が消えた。高らかな音の残響だけが、妙に耳についた。
次に気付いた時には、翠も竜二も、渓もゴーレムも、地面へ転がっていた。竜二は仰向けになって呆けた様に空を見ていた。翠はうつぶせになって地面を舐める様に倒れていた。ゴーレムはあちこちにヒビが入り、ちょっとした山みたいになっている。渓は、元々が水だったからか、跡形もなく消えてしまっていた。
ゴーレムの体から、小石が一つ、転がり落ちる。その様子が俺に時間の流れを教え、その音が俺に音を思い出させた。
嘘だろ。
心の中でそう呟くが、やっぱり嘘じゃない。今までカタリーナは手を抜いていたのだ。ただの一度も本気を出さない相手に、あれやこれや策を弄して、結局一撃の下に崩れ去っている。要するに、猫がネズミ相手に前足でじゃれていた様な物なのだ。その気になれば、俺達は一瞬で食われてしまう。
だから魔法は嫌なんだ。




