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と、その瞬間、舞い散った土ぼこりが、まるで意志を持ったかの様に一カ所に集まり、また人の形を作り上げた。
「魔力は使うけど、どーよ? クラウゼヴィッツのばあさん?」
ここからだと背中しか見えないが、多分今、翠は得意げな笑みを浮かべているに違いない。
「エメちゃん! あいつを捕まえて!」
「うあああああい」
「なるほど、この短い間にクレストを書き換えたと言うわけか……」
カタリーナの推察に、翠は苦しげな声で答えた。
「あたりですよ」
途切れ途切れの翠の声を聴いて、よっぽど疲れてるんだろうな、と想像する。
「エメちゃん! 行けえ!」
「うああああああおおおおおお」
ゴーレムがこれまでよりも力強い雄叫びをあげ、のしのしと走って行く。
「ふん、頭の悪い奴め」
カタリーナは余裕しゃくしゃくでそう言うと、さっきまでと同じ様に、腕を振るう。俺の所まで嵐の様な風が届き、来てきた服がはたはたと靡く。
やっぱりそれまでと同じ様に、ゴーレムが粉々になる。俺は本来応援するべき立場なんだけど、やっぱり翠は頭に血が上ると、細かい事は考えられなくなるんだろうか? まあそう言う所もあるのが翠だし、仕方ないんだろうか。
そもそも、さっきからゴーレムだけを破壊し続けている事が、カタリーナの余裕を表していた。ゴーレムを生み出す魔力を供給しているのは、まぎれもなく翠だ。その翠を攻撃せずにゴーレムを壊し続けると言う事は、やっぱり彼女の余裕の現れなんだろう。
いや、これは不自然にも見える。
わざわざ戦いを長引かせる必要は、無いんじゃないか?
俺の取り留めの無い思考を、凛とした翠の声が打ち破る。
「集えよ! 砂礫ども!」
同時に、舞い散っていた土ぼこりや小石が、まるで磁石に引き寄せられる様に、カタリーナの周りへ集まって行く。
カタリーナが声を上げる暇もなく、彼女の姿はちょっとした小山の中へと隠れてしまった。
「やったか?」
竜二の声が聞こえる。小さな土の山へ駆け寄って行こうとしたのか、竜二の足は小さく浮いていた。
まだだ。何故だか、俺にそんな予感が降りてくる。
果たして、土の山はまるで綿菓子かなにかの様に、一瞬で霧散した。
「少しは頭も使えるようだな」
カタリーナはそう言うと、マントの内側に手を差し入れた。
「さて……、こっちも新しい手を出してみるかね」
「何よ、それ」
苛立ちを隠さない翠の声が聞こえる。
あ、それは。その動きを、俺はつい昨日見たぞ。
そして、俺の予感通り、マントの内側からは、猫が出てきた。見覚えのある、黒い毛並みの猫。




