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「そんな……」
翠は絶句し、もう一度叫んだ。
「土の精霊よ! 我に力を分け与えよ!」
翠の声と同時に、地面が破れ、割れ目からはさっきの物とは見分けのつかない、巨大な土人形が競り上がってくる。結界の外から射し込む光を遮り、ゴーレムは夜の闇の様な影を作り出す。
「渓、対人攻撃、出来るか?」
「はい、マスター」
竜二の鋭い声に、俺の傍らにいた渓が答える。と、立ち上がりかけた渓が、ふと振り返った。水色の髪が、この世の物でない様に、風になびく。
「大和さん、ここを絶対に立っては行けませんよ」
「解ってるけど……、何でだよ今更」
「マスターから聞いたあなたは、絶対にここを動いてしまう人です。ですから、こうして釘を刺しているんです」
竜二はこいつに一体何を言ったんだろうか。少し気になるが、今はそれどころじゃない。
「解ったよ。動かない」
「本当ですね?」
「本当だ」
濡れた瞳が、本当ですね、と問いかけてくる。いや、だんだんと厳しく言い聞かせる様な表情に変わって行き……。
「どうだか」
そう言い捨てると、渓は小走りで竜二の元へと駆けて行った。それを見送りながら、俺は一人寂しく結界の端っこで体育座りをした。出来るだけ気配を消す。
「渓、あいつを取り囲んで」
「解りました。マスター」
すると、さっきまで確かな形を持っていた渓の体は、嘘の様に液体になり、そのままカタリーナを取り囲んでしまった。嘘だろ……。
しかし、そんなの大した事ではない、とでも言う様に、カタリーナの風の刃がそれを切り裂く。俺ははっと息をのんだが、血は流れなかった。散り散りになった水は、また離れた所で人の形を取り戻し、苦々しげな表情を浮かべた。
と、間髪を入れずに、翠の声。
「エメちゃん! 泥の銃弾!」
「うああああい」
シュバシュバシュバッ、と絶え間なく泥の弾が飛んで行く。どれもがそれなりに鋭く固いのか、弾はどれも地面へとめり込んで行く。
「相変わらず、やる事が単調だねえ」
目を細め、さも嬉しそうにカタリーナは笑う。ただ、本当に心の底から嬉しいはずはない。笑顔がだんだん、嘲笑じみた物に見えてくる。
泥の銃弾の中で、カタリーナは杖を振り、風の刃を作り出した。と、さっきまでと同じ様に、ゴーレムが粉々に砕け散る。




