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「今まで魔法の樹を持っていなかったハルには、魔法の樹を養い続けるのは大変な事だった。魔法の樹に蓄えられているのは魔力なんだけど、魔力自体を作り出すのは、僕達の体なんだ。食べ物や飲み物以外にも、空気中に漂っている魔力だって、僕達の体は吸収しているみたいなんだ。
とにかく、それを蓄える魔法の樹を持っていなかったハルからは、体の色がどんどん失われて行ったんだ。元々、彼女の髪の毛は栗毛、とでも言えば良いのかな、とにかく、今の様な金色の髪の毛ではなく、茶色の髪だった。僕の肌の色は白い方だけど、ハルはそれよりも更に白くなってしまった。虹彩も、見る見るうちに蒼くなってしまった。
僕は、この事を誰にも話さなかった。話せば、今度はハルが狙われるからね。ハルの容姿は、変わってしまったんだ。
これが、どんな仕組みで起きたのかも解らない。だけど、魔法の樹がこれを引き起こしたのは事実なんだ」
ユリウスさんが溜め息を吐く。長い語りは、終わりを迎えようとしていた。
「ハルの体力を奪っているのも、確かなんだ。ハルはもともと体が弱い子だったけど、魔法の樹を植え付けられてからだ。それまでよりも頻繁に風邪を引く様になった。
だから、僕は思うんだ。ハルは魔法から解放されたんだと。君はハルの魔法の樹を取り戻したいと思っているようだけど、僕はそれに反対したい。
魔法の樹が失われてしまった今こそ、チャンスなんだ」
そして、腹部へ思いパンチを食らったかの様に苦しそうな顔をしたあと、ユリウスさんは大きな手で自分の顔を覆った。
「魔法なんて、誰も幸せに出来ないじゃないか……」
要するに、この人は板挟みになっているのだ。
「話は、それだけですか」
俺の声は、自分で思ったよりも冷たく響いた。ユリウスさんは顔を覆ったまま、やっとの事で、
「ああ」
と言った。
「帰りましょう。もう暗いですし」
「そうしようか」
言葉少なに、俺達はあずみさんのお墓をあとにする。冷たい風が吹き、俺はポケットへ乱暴に手を突っ込んだ。
ポケットの中までも、冷たさに支配されていた。冷たい。




