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一日ぶりに俺達の町へ帰ってきてみると、大して長い事留守にしていたわけでもないのに、訳も無く懐かしく感じた。
もぞもぞと起き出したハルと、翠、竜二を駅前で降ろすと、ユリウスさんは俺にだけ、車に残る様に言った。なにかあるな、と思いながらも、とりあえず従う事にする。
東西にまっすぐのびる鉄道の高架を潜り、昨日俺達が連れ去られた歩道を通り過ぎる。車はそのまま、線路に沿う様に伸びる大通りへと入った。すっかり橙色を纏った西日が、車のフロントガラスを刺す。俺は目をしかめたが、ユリウスさんは気にする風も無かった。
ユリウスさんも、俺も、一言も発しない。俺はてっきり車の中で何か話がある物だと思っていたが、どうやらそれも違うようだった。と、なると、俺をどこかへ連れて行くつもりなんだろうか?
考え事でもしてないと、どうにも沈黙が気まずすぎる。首を横へ向けて窓の外を眺めると、もう駅の周りの騒がしさは消えていて、小さな家や商店が肩を並べ合っているのが見えた。普段の俺の行動範囲からは、もうすっかり離れてしまったようだ。
大通りと大通りが交わる交差点に差し掛かる。信号が赤になって、車を止めた。
「君」
あまりにも長い事黙っていたから、初めはその言葉が俺に向けられた物だとは解らなかった。
「え?」
「君、ハルとはどれ位仲が良いんだい?」
何を聞いているんだこの人は。仲なんて、そんなもん、
「良いわけ無いですよ」
「そうか……」
ユリウスさんは変わらず穏やかな声でそう言うと、すぐには言葉を継がなかった。青に変わった信号をちらりと見ると、ゆるゆると車を動かした。
「ハルは君の事を、かなり気に入っているみたいだけどね」
「まさか」
これにかけては、心の底から「ありえない」と言えるぞ。いや別に、ハルが思った事を素直に表に出せない奴だ、とか、だから俺に対しても天の邪鬼になってしまうのだ、とか、そう言う事を言いたいんじゃない。そう言う所も、あるにはあるんだろうが。
俺は奴の秘密、もっと言えば魔法使いの秘密を握っているし、ハルだって俺の命を握っている。少しでも握る力を間違えたら、バランスは崩れて、俺の命なんか、くしゃり、とつぶれてしまう。
実際にそうなる、とは言えない。まさか、ハルは自分のリスクを冒してまで、俺を殺そうなんて思いはしないだろう。俺だって、記憶喪失のリスクを負ってまで、ハルの秘密や魔法使いの事をばらしたりはしたく無い。あ、いや、翠にばらしたのは、あれは大丈夫だと言う確信があったからだし、これには含めないけどさ。
とにかく、ユリウスさんの言っていた事は、全く以てあり得ない。




