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「それにしてもなあ……」
気付かぬうちに、俺は意味も無くそんな言葉を呟いていた。
「魔法が使えなくなるって、どんな気分なんだろうな」
「想像もつかないよ」
翠は即座に、でも、慌てる風も無くそう応えた。落ち着いた声だ。
俺は肩越しに後ろのシートを振り返り、翠の顔を盗み見た。
同時に、俺は思わず、大きく息を吸い込んだ。
翠とは、小学生の頃からの腐れ縁だ。当然、翠の色々な顔を見てきた、と思っている。
だが、今の翠の顔を、俺は今までに見た事が無かった。姉が妹を見る様な、と言えば良いのか。いや、二人の関係を考えたら、むしろそれが当たり前なのかもしれない。
俺はまた、気付かれない様に視線を元に戻すと、シートに深くもたれかかった。ハルはこんなにぐっすりと眠っているのに、俺はちっとも眠くならない。
見るとはなしに、変わり映えのしない黒いアスファルトへ目をやる。車の中に、長い沈黙がやってきた。




