表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空から魔女がふってきた!  作者: 杉並よしひと
第四章
PR
49/80

「うるさい」

「ハハハッ、強がるのう」

 奴は余裕の表情で笑うと、今度は杖を振った。とぐろを巻く様に風がうねり、俺に当たって行く。龍の様な風の中に、鋭い刃物の用な風が混じっていて、俺のコートをでたらめに切り裂いていく。つまり、いつでも俺を殺せると言う意思表示なんだろう。 

 それでも俺がもう一歩を踏み出した時だった。降り出そうとした腕を、誰かが捕まえた。

「ほんとにダメだって。ねえお願い、止めて」

 ハルだった。きっとした瞳と、キツく結ばれた唇が、ハルの気持ちを語っている。なのに、俺を捕まえている手も、地面を踏みしめている足も、いつもより力を失っていた。

「魔力は返して欲しい。もう一度空を飛べる様になりたい」

 力ない腕を、振り切ってしまう事も出来た。が、俺にはなぜか、そうする事が出来なかった。

「でも、私のために、死なないでよ……」

 ハルの小さな声は、カタリーナの風に飲み込まれていく。それでも、俺はそれを聴き届けなければならない。

 風が一段と強くなる。カタリーナは黒いマントの内側に手を入れると、何かを中から取り出した。

 見覚えのある猫だった。魔獣と言った方が正しいか。

「さあ、言っておいで」

 カタリーナは猫を地面に降ろし、そう言った。猫は音も無く地面に降り立つと、吹き荒れる風の中、しなやかに俺達の許へと歩いて来た。

 大きな黒い瞳が、無表情に俺達の事を捉えている。

 みゃあ、と猫が鳴いた。

「ん?」

 老女の声が聴こえた。ただ、さっきまでとは違い、何かを気にしているかの様な、余裕の無い声だった。

「誰か来たようだな」

 俺には何も解らない。止まない風に耐えて踏ん張りながら、俺はハルを振り返った。ハルは地面に座り込んでいて、俺と目が合うと、力なく首を横に振った。

 斜面に張り付く様な道路は、両側とも俺達のいる所からそう遠く無い所でカーブを描いていた。道路の向こうが見えるわけじゃない。

 音が聞こえるのか? だが、どっちにしろ、このひどい風の中で、周りの音なんて聴こえやしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ