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「ここまで来られたなんて、大したもんじゃないか」
目の前の老女は、嗄れた声で俺達に話し掛けた。
「あの小屋を破れたって事は、やっぱりあのホウキを使ったのかい?」
俺は内心、はめられた、と思っていた。やっぱり、俺達がホウキに目をつけるだろうと言う事まで予想して、あそこに俺達を閉じ込めていたのだ。
「だんまりかい。それでも良いだろう。逃げたのは褒められた事じゃないが、まあ、どちらにしろ、ここで死ぬんだからな」
死ぬのか、と一瞬、思ったその時。俺の意識に隙が出来た。
「風よ、あの者の首を刎ねろッ」
「ヤマトッ!」
気付けば、俺の腰にはハルが飛びついていた。そのまま二人もんどりうって、地面へと倒れ込む。長いハルの髪がふわりとなびく。
しかし、そのあとに吹いて来た風はそよかぜではなく、俺達の後ろの森の木々を、すっぱりと半分に切断した。
ここに来て、俺は今、はっきりと殺意を持って攻撃されたのだと気付いた。間一髪であのばあさんの攻撃を逃れたのだ。
「大丈夫?」
ハルは俺に覆い被さったまま、そう尋ねた、地面に尻餅をついたまま、俺は頷く。
「ありがとう」
「べ……、別に」
ハルは素早く立ち上がると、俺と老女の間に立った。
俺にもようやく、実感がわいて来た。
「ほう、さすがはアズサの娘だ。いくら魔術の起動を速くしても、バレてしまうと言う事か」
「……」
ハルの唇が、音も無く「カタリーナさん」と動いた。
それからハルは唇をキツく結んで、老女を睨むだけだった。
「第六感とは、侮れないものだよ」
そう言って、老女は高らかに笑った。俺がちらりと隣を見やると、ハルの握りしめられた拳は、腱を浮かび上がらせながら、小刻みに震えていた。
そうだ。こいつは俺達を閉じ込めただけじゃない。俺はようやく気付いた。
わざわざ「第六感」なんて言うからおかしいと思ったんだ。
俺はズボンの尻を払いながら立ち上がった。腰も曲がっているのに、立っているのがやっとな程老いぼれているのに、座りながらこの老女と対峙するのは、とてつもなく恐ろしい事だった。
老女はそんな俺を見て、怪しくにやり、と口を曲げた。そして、俺が確かめようとした事を、先回りした。
「魔力の大半を無くしても尚、相手の魔術を読む事が出来るのだからな」
「コノヤロっ!」
俺の脚は勝手に動き出していた。とにかく奴をぶん殴ろうと思った。
なぜなら、奴がハルの魔法の樹を奪ったからだ。




