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空から魔女がふってきた!  作者: 杉並よしひと
第三章
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12

「湖が細長いし、湖畔まで山が迫ってるし、あの遊覧船だって相模湖のだし……」

 それに、とハルは何かを付け加えようとした。しかし、何を言う事も無く、そのまま黙ってしまう。短い沈黙が訪れる。

 しばらくすると、またハルが言葉を発した。

「とにかく! ここから出よう? 早く帰らないと、みんな心配してるかも」

「ああ、そうだな」

「攫われた」「閉じ込められた」と言う事のおかしさに気を取られていたけれど、母親は俺の事を心配しているかもしれない。もう学校は昼休みに入ろうと言う頃だろうか、竜二や翠や、他のクラスメイトも、俺達の事を気にしているだろう。

 帰ろう。何で俺達は攫われたのか、とか、誰が攫ったのか、とか、考えるのは帰ってからでも遅く無い。

「帰ろうか」

 俺の返事を聞いて、ハルはすぐさま湖水に背を向けた。森は急な斜面にあって、どうやらそこを登って行かないといけないようだ。

「ちょっと待てって」

 ハルの背中ばかり見ているな、と思いながら、またハルの後に続く。ハルの背中はもう俺よりも少し高い所に行ってしまっていた。急いで追いつこうとした。が、少し上を向くと、ハルは立ち止まって、こちらを振り返っていた。

「ちょっとヤマト」

 うなり声を上げる番犬みたいに、ハルは警戒心むき出しの顔を見せる。

「ヤマトが先に行きなさいよ」

「別に良いけど……、なんでだよ」

「良いから!」

 なぜかハルは頬を赤くして、上目遣いに俺を睨むのだ。俺は仕方なくハルを抜かし、前に立つ。

 あ、そうか。スカートの中が見えちゃうのか。ハルのなんて一度見た事あるしな、と、俺はハルとであった日の事を思い出す。いや、思い出したらへんな気持ちになって来た。

「ほら! 早く進む!」

 後ろから背中をバシバシと叩かれた。

「はいよ」

 森の中は静かで、遠くで湖の波音が聴こえるくらいだった。それなりにキツい斜面だった事もあって、俺もハルも、自然と口数が少なくなる。

 ハルは、時たま膝に手をつくと、荒い息を吐いて、また歩き出す、と言う事を繰り返していた。俺はハルを置いて行かない様に、その度に立ち止まってハルを待った。

 口数が少なくなって行くと同時に、俺は色々な事を考え始めた。

 あのホウキは、ハルのお母さんの物らしい。ハルが呼びかけた時にクレストが輝いた事を見ても、それは確かだろう。

 じゃあ、何でそんな物があそこにあったのだろう? 俺達が閉じ込められた所に、運良くそんな物があったなんて事、そうそう起こらないはずだ。

 と、言う事は、その逆が真相なんだろう。つまり犯人は、あのホウキが置いてある所へ、俺達を閉じ込めたのだ。

 じゃあ、ホウキを持っていた奴って、誰なんだ? ハルの母親とハルがあの魔法具の適応者だった。魔法具の使用を許された相手なら、ハルの母親とも良い関係を築いて痛んだろうし、いきなりハルを攫うなんて事はしないはずだ。


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