12
「湖が細長いし、湖畔まで山が迫ってるし、あの遊覧船だって相模湖のだし……」
それに、とハルは何かを付け加えようとした。しかし、何を言う事も無く、そのまま黙ってしまう。短い沈黙が訪れる。
しばらくすると、またハルが言葉を発した。
「とにかく! ここから出よう? 早く帰らないと、みんな心配してるかも」
「ああ、そうだな」
「攫われた」「閉じ込められた」と言う事のおかしさに気を取られていたけれど、母親は俺の事を心配しているかもしれない。もう学校は昼休みに入ろうと言う頃だろうか、竜二や翠や、他のクラスメイトも、俺達の事を気にしているだろう。
帰ろう。何で俺達は攫われたのか、とか、誰が攫ったのか、とか、考えるのは帰ってからでも遅く無い。
「帰ろうか」
俺の返事を聞いて、ハルはすぐさま湖水に背を向けた。森は急な斜面にあって、どうやらそこを登って行かないといけないようだ。
「ちょっと待てって」
ハルの背中ばかり見ているな、と思いながら、またハルの後に続く。ハルの背中はもう俺よりも少し高い所に行ってしまっていた。急いで追いつこうとした。が、少し上を向くと、ハルは立ち止まって、こちらを振り返っていた。
「ちょっとヤマト」
うなり声を上げる番犬みたいに、ハルは警戒心むき出しの顔を見せる。
「ヤマトが先に行きなさいよ」
「別に良いけど……、なんでだよ」
「良いから!」
なぜかハルは頬を赤くして、上目遣いに俺を睨むのだ。俺は仕方なくハルを抜かし、前に立つ。
あ、そうか。スカートの中が見えちゃうのか。ハルのなんて一度見た事あるしな、と、俺はハルとであった日の事を思い出す。いや、思い出したらへんな気持ちになって来た。
「ほら! 早く進む!」
後ろから背中をバシバシと叩かれた。
「はいよ」
森の中は静かで、遠くで湖の波音が聴こえるくらいだった。それなりにキツい斜面だった事もあって、俺もハルも、自然と口数が少なくなる。
ハルは、時たま膝に手をつくと、荒い息を吐いて、また歩き出す、と言う事を繰り返していた。俺はハルを置いて行かない様に、その度に立ち止まってハルを待った。
口数が少なくなって行くと同時に、俺は色々な事を考え始めた。
あのホウキは、ハルのお母さんの物らしい。ハルが呼びかけた時にクレストが輝いた事を見ても、それは確かだろう。
じゃあ、何でそんな物があそこにあったのだろう? 俺達が閉じ込められた所に、運良くそんな物があったなんて事、そうそう起こらないはずだ。
と、言う事は、その逆が真相なんだろう。つまり犯人は、あのホウキが置いてある所へ、俺達を閉じ込めたのだ。
じゃあ、ホウキを持っていた奴って、誰なんだ? ハルの母親とハルがあの魔法具の適応者だった。魔法具の使用を許された相手なら、ハルの母親とも良い関係を築いて痛んだろうし、いきなりハルを攫うなんて事はしないはずだ。




