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「いや、でも、こんなホウキで、壁破れんのかなあ」
「いまさら!?」
いざこうやって構えてみると、ホウキはただのホウキだった。いくら掘建て小屋みたいな小屋の壁だって、ホウキじゃそう簡単には穴なんて開きそうに無いじゃん。たまに、壁を殴って穴開けちゃった、とか言う話も訊くけどさ、壁を殴って腕が向こう側に突き抜けちゃった、とか言う話は訊いた事が無い。
「そんな事気にしたって仕方ないよ。とりあえず、今は出来る事をしなきゃいけないんだし」
それはそうなんだけどさ。
俺はとりあえずホウキを構え直し、窓のついている側の壁に向かい合って、槍の様に何度か柄を突き出してみた。やっぱり妙な格好だ。
やるしかないか。
俺は息を止め、後ろ足を蹴って、前の足を踏み込んだ。体のひねりを使ってホウキを押し出して。
そのまま壁を突くッ!
「ッ……!」
ホウキが壁に接する、その瞬間。
クレストから、風が吹いた。
クレストが光ったかと思うと、風邪にホウキを押し戻される感覚がやって来た。しかし、思う間頃には、もう次の感覚がやって来ていた。
耳に思い切り水を流し込まれたかの様な音が俺達を包む。
風は渦巻きながら壁をぶち破ると、さっきまで壁だった木屑を連れて、小屋の外へと飛んで行った。途端、小屋の中に、弱々しい冬の光が飛び込んで来た。
一瞬の事だった。
あまりにも短い時間で全てが終わったから、俺達はあんぐり口を開けて、見ている事しか出来なかった。
なんじゃこりゃ。
「お母さん……」
ハルが小さく呟いたのを聞いて、俺は我に帰った。
「おい……、俺って、魔法使えたんだっけ……?」
「なにバカな事言ってんの?」
ハルの冷たい視線が突き刺さる。




