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と、そんな俺の目の前では、ハルの握っているホウキのクレストがまばゆい程に輝き始めていた。暗く埃っぽい小屋の中で、そこだけは雲の上の世界の様に、光が満ちている。
ハルの体が、ぐらりと傾く。彼女がまるで一瞬意識を失った様に、体の心から力が抜いた。
「お、おい」
俺は咄嗟にハルの体を受け止めた。両肩を押さえると、ハルの体はちょっとした事で壊れてしまいそうなくらい華奢に感じられた。
「ん。大丈夫」
ハルは床に手をつくと、俺の両手を押し戻した。
ハルはやがて拳を開いた。ハルの握っていた部分には、さっきまでの傷が無く、木の繊維が綺麗にまっすぐに繋がっていた。魔法を使ったのだろう。呪文を詠唱していたし、当たり前っちゃあ当たり前……。
んなわけあるかァっ!
「お前、何で魔法使えてるんだよ!」
「え? 何でって……」
ハルはまるで虚をつかれた、と言う風にきょとんとしている。
「今のは、私の魔力をこのイーリスに流し込んだだけだけど……」
違いがよく解らない。ってか、イーリスってこのホウキの名前かよ。
「それを魔法って言うんじゃないのか?」
「言わないよ」
断言するハル。
「クレストって言うのは、触れた人間の魔力を必ず吸収して、魔法具の使用を承認するかどうか、決定するの。同時に、このホウキみたいに、クレストの中に別の魔方陣を組み込んでおけば、所有者を魔力供給源にして、自動修復機能とかの魔法が働くわ。
このクレストはお母さんのだったから、私の魔法の樹の根っこの部分から私の持ってるほんの少しの魔力を吸収して、私を承認したわけ」
「あれ……、そのホウキの所有者ってお前じゃないけど、大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫だったみたい。多分、お母さんがクレストを作る時に、私も適合者になる様にして、のこしといてくれたんだろうね」
便利な事も出来るもんだな。
「とにかく、なけなしの魔力を失った事には変わりないじゃないか」
俺の言葉に、ハルは一瞬全ての動きを止めて、海の様な蒼い瞳で俺を捉えると。
「なけなしとか言うなッ!」
ずぶりっ。
ハルは直ったばかりのほうきの柄で、槍みたいに俺の体を突き始めた。一発目が、軽めに腹へとヒットした。うをッ、あぶね。みぞおちと股間は突いちゃだめだ!
「と、に、か、く。お母さんのホウキだから、優しく使ってよね。こう、赤ちゃんの柔肌に触るみたいに、優しく、注意深く……」
「お前、壁破る気ないだろ」
なんだ赤ちゃんの柔肌に触るみたいって。こいつは渾身の力を込めて赤ちゃんに触るのか? 俺は無意味にいらつきながらホウキを受け取った。ホウキは、よほどたくさん使われて来たのか、所々染みなんかもあったが、目立った傷などは殆どなかった。
俺はホウキを握り直して、柄の先端を手近な壁に向けた。




