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「え?」
思わずオレは訊き返してしまう。
「監視するんだとしても、ここから出られちゃまずい事に変わりはないだろ」
「だから、監視されてるって事は、私たちが脱走しようとしたって、それまで見られちゃうって事でしょ? 私たちをここへ連れて来た奴らは、もしかしたら今の私が魔法を使えない事を知っているのかもしれない。だから、敢えて魔力消費の少ない部分的な結界だけにしてるんだと思う」
なるほど。でも、じゃあ逆にハルの言葉に矛盾が出来てしまう。
「じゃあ、どっちにしろ逃げられないじゃん。どうして壁を壊せるかなんて訊いたんだ?」
「そりゃ、ここにいたって埒が明かないからでしょ」
けろりとした顔で、ハルはそう言い放った。俺は驚いて一瞬口をあんぐりと開け放ったが、すぐに、これでいいのだ、と思い直した。一応は、事が転がり始めたのだ。俺は、
「そうだな」
とだけ言って、小屋の奥へと歩いて行った。
足の踏み場もない程物が乱雑に置かれている。埃っぽい空気に、仄かなかび臭さが漂っている。俺はそんな最悪な空気に顔をしかめつつ、そこらへんのがらくたの山を漁った。
まあ、相手はこれくらい考えてあったのかもしれない。がらくたの中に壁を破れそうな物はそう簡単には見つからなかった。何やら怪しい皿の様な物だったり、よく解らない文字で書かれた書類だったり、おおよそ今の俺達には必要ない物ばかり出て来た。
「普通物置って、トンカチの一つでも置いてあるもんなんじゃないの?」
隣でがらくたの山を漁っていたハルが、早くも音を上げた。冬なのにも関わらず、薄く射し込む日に額の汗が微かに光っている。
「トンカチがあるかは解んないけど、確かによく解んねえ物ばっかだな。ん? なんだこりゃ」
がらくたの山の中に、新しい手触りを見つけた。なんだかささくれ立った物が、チクチクと俺の指を刺す。指先で何度か探ってから、思い切り引っ張り出す。
それは意外と大きな物だった。ガラガラとがらくたの山を崩しながら現れたのは、柄の折れた庭ボウキだった。二つに折れたホウキは、細くなった木の繊維でかろうじて繋がっていて、折れた所から木の繊維がはみ出して、それが俺の指を刺していたのだ。
「折れた……、ホウキ……?」
ハルは一瞬、呆けた様にホウキを見ると、ぼそりとそう呟いた。俺はその様子が少し気になったが、それよりももっと大事な事があった。ホウキのこの形、この固さ、大きさ。
「ハル、これなら壁を破れるんじゃ無いか?」
「……!! うん、そうだね」
小屋の壁はかなり薄めのようだ。このホウキの残った部分でどんどこ突けば、もしかしたら穴の一つ位は開くかもしれない。
「じゃあ、この折れた所から先は取っちゃうか」
俺がホウキの柄を掴んで、捻り取ろうとすると、
「ちょっと待って!」
ハルが止めた。予想もしていなかった事だから、俺はホウキを両手で支えたまま固まって、まるで室内で庭ボウキを使っている変な人みたいになってしまった。




