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「窓が開けっ放しだった割に、結界に弾力が無いってことは、私たちを閉じ込めておいて監視するのが目的なのか……。音を通さないみたいだし……、風系統の魔法使いかな……」
「それ、どういう事だ?」
「この小屋が、ぐるっと結界に取り囲まれてるんじゃないかな、って事」
ぶつぶつと呟きながら考え事を始めたハルに、俺は一つ疑問を投げかけた。
「俺まだ、結界って言うのがどういうものか解ってないんだけど、使う魔法によって結界って変わる物なのか?」
「当たり前じゃない」
いや、つい何日か前まで、魔法自体当たり前じゃなかったんですけど。
「火の魔法で結界を張る時は、炎をぐるって囲みたい物の周りに熾したりて結界にするし、水の魔法の結界なら、囲みたい物の周りに強い水流を作ったりするの。これはたぶん風の魔法の結界なんだけど、風の魔法の結界はホントに色んな張り方があるから、私にはよく解らないの」
「ふうん。じゃ、この結界って、力任せに破れたりしないの?」
「うん。普通の魔法を使えない人間には、ほぼ確実に結界を破る事は出来ないわ」
絶望的な情報をどうもありがとう。
「つまり、俺達は、誰かが助けにこなかったら、一生ここにこのままって訳か」
「そうなるわね」
淡々とした会話が終わった。俺も、ハルも、考える事をしばらく止めた。
一瞬固まった空気を破ったのは、ハルの方だった。
「そんなのイヤッ!! こいつと死ぬまでここで一緒だなんて、一億貰ったってムリ! 絶対! お断り!」
俺もそれにつられてしまう。
「こっちだってお断りだ!! 正体の解らない魔法使いに巻き込まれて、挙げ句の果てにこんな所から死ぬまで出られないだって? 迷惑な事この上ないね!」
「私だってあんたを巻き込もうと思って巻き込んだわけじゃないのよ! 文句ならここに閉じ込めた人に言ってよ!」
「俺が魔法使いの存在を知ったから、巻き込まれたんじゃねーのかよ! 文句ならお前にも言わせて欲しいなッ!」
「うるさいうるさいッ! ヤマトのバーカ、アホッ!」
「何だと! この半端者が! 魔法が使えないから、結界が破れないんじゃないのかよ!」
「なんなの!? 私が悪いって言うの?」
「ああ、悪いね」
俺の言葉に、ハルは白い頬をみるみる赤くした。口が堅く引き結ばれて行き、目に力が宿って行く。
怒っているのだ。ハルは大きすぎる怒りを持て余して、こんな泣きそうな顔になっているのだ。ハルのそんな顔を見て、さっきまで茹だっていた脳みそが、なぜか急激に冷えて行くのを感じる。
「もうッ! ヤマトなんて知らない!」
捨て台詞だった。ハルは窓枠から離れると、物が乱雑に置かれた小屋の奥の方へ、歩いて行った。光の当たらない場所へ、ハルの紺色のブレザーと青いチェックのスカートが見えなくなって行く。
「……っ」
俺は、どうにもムカムカが収まらず、何の意味もなしに頭を掻きむしった。掻いても何も変わらず、髪の毛が数本抜けた。俺はなぜか、その髪の毛を見ながら「俺、はげるのかなあ」と考えた。全く調子が狂う。




