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「つまり、私たちは、何の策を講ずる事も出来ずに、無抵抗にこんな所に飛ばされたって訳ね?」
「まあ、そう言う事になるな」
「ほんっと、ムカつく!!」
ハルはそう言って、立ち上がろうとした。俺の掛けたコートが、ばさりと下に落ちる。ハルはしばらくそれを見つめると、しゃがんで、くるくると畳んで、おずおずと俺に手渡した。
「ありがと」
目はそっぽを向きながら、しかしハルはそう言った。俺は渡されたコートを受け取りながら、「どう致しまして」
と応える。なんだかんだで、そう言う所はちゃんとしてるんだよな、こいつ。俺は見えない様に小さく笑うと、手渡されたコートを脇に置いて立ち上がった。
改めて見ると小さな小屋だ。六畳位の広さはありそうだが、訳の解らない者がごちゃっと捨て置かれていて、俺達の居場所を狭めていた。ここは物置らしい。
木製の壁には小さな窓と引き戸がが一つずつ付いていて、窓からは外の様子を見る事が出来た。
「何の参考にもならない景色ね」
ハルは窓から外を見ると、そう言ってばっさりと切り捨てた。でも、まあ、ハルの言う事は解らないでも無い。
窓から見えるのは、何の変哲も無い杉の森だけだった。小屋が森に囲まれているわけではなく、森の中のぽっかりと開いた空間に、小屋がぽつんと立っているのだ。
「誰に連れてこられんだか知らないけど、窓を開けておくなんて不用心ね」
ハルはそう言って窓から身を乗り出そうとした。が。
ハルの体が窓から出る事は無かった。ハルの体はぴったり開け放した窓の窓枠の所で止まり、ハルの体は小さく押し戻された。ハルは「なにがなんだかわからない」と言う様な顔をすると、もう一度窓から外へ出ようとした。同じ様に、ハルの体は押し戻される。
「いきなり窓から出ようとする奴がどこにいるんだよ」
俺はそう言いながら、窓と同じ側に付いている扉へ手を掛けた。扉には飛んでいる鳥を象った彫刻が施されていて、ボロい小屋ながらも細かい所に気を使って立てられているのが解った。
がらり、と引き戸を開けると、窓から見えるのとそう変わらない景色が見える。
でもやっぱり、外へ出る事は適わなかった。ハルの体と同じ様に、俺も小屋の中へ、見えない壁に押し返された。何も無いと思っていた場所で何かにぶつかると、思ったよりもバランスを崩すものだ。俺は無様に尻餅をついて、ゴミの様に小屋の床へ転がった。
ハルはそんな俺を一目見ると、わざとらしく大きな溜め息をついた。
「はあ。やっぱり、結界が張ってあるみたいね」
「なんだよ、その残念なものを見る目は」
肩まですくめ始めたハルに俺は一言言ったが、ハルはそれを無視して、「窓」をつつき始めた。




