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「俺達は、どうすれば良い?」
「解らない」
感情のこもらない、平坦な声だった。冷たくさえ感じられた。でも、それが本当に無感情な声と思う程、俺も人の気持ちを察せないわけじゃない。
「解らないんだよ」
ハルは繰り返した。険しい顔だった。形の良い眉を歪ませ、頬の形からは奥歯を噛み締めているのが解った。青い瞳だけが、ハルの頭の中の感情や思考の奔流を映していた。
「とにかく、逃げよう」
俺はハルの手を取った。急に走り出せば、さっきから呪文を唱えている男に気取られてしまうだろう。焦る心を抑えながら、早歩きで大通りを進む。
しかし。
「だめだよ、ヤマト。この結界、特殊なやつだ」
ハルはそう言って足を止め、握る俺の手を引っ張った。俺もつられて足を止める。
「この結界は、包み込む対象と一緒に、変形しながら移動して行くタイプの結界なんだ。空気や水は、土や金属と比べて形を変え易いから、結界もそう言う性質を持っちゃうの」
なんだそれ。ずるいだろ。そう思ったが、それこそが魔法だと考えると、少しは気が楽になった。
気が楽になった所で、問題は何も解決しちゃあいなかったのだけど。
「じゃあ、この結界を破る事とかって出来ないのか?」
「私に十分な魔力があれば……」
ハルはそう言って、自分の足許へ目線を落とした。ハルの周りに一層大きな影が落ちた気がしたのは、決して日が暮れたせいだけじゃない。
俺は今、一番イヤな事を、強く思い知らせてしまったのだ。
この前の魔獣討伐の時は、魔法の樹を失った事を隠すので精一杯だった。だから、そんな気持ちにはならなかっただろう。でも、今は違う。
俺が悪いわけじゃない。だからといって、俺が何もしないのでは、この場はどうにも収まらない。
「ハル……」
何かを話し掛けようとしたその時。俺とハルの間に、何か小さな穴の様な物が現れた。本当に、突然の事だった。声を上げる時間すら無かった。穴は急激に大きくなって。
俺とハルを吸い込んだ。




