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あらん限りの声を出す。音が消えて、自分の耳を信じたくなったからか、いつもよりも大きな声の様な気がした。ハルもそれに気付き、踵を返す。
「これ、何が起こってるんだよ」
少し、俺の声は震えていた。
「多分、風魔法の結界だと思う」
ハルは鋭い目つきで当たりを見回した。交差点の歩道に俺達は立っている。しかし、雑踏も車の走る音も聞こえない。人は皆、俺達をよけて歩道を進んで行く。
「風魔法の結界って……。それ、どういうもんなんだ?」
「音って、空気を伝わるでしょ? だから、風の精霊を使役して空気の動きを操ると、結界の外と中で、防音壁を作る事も出来るの」
しかし、その説明だけじゃ、解らない事ももちろんあった。
「でも、この中でこの前みたいにドンパチやるのは無理じゃないか? だって、結界の中は外から丸見えなんだろ?」
「うん、普通はね……」
ハルは言葉を濁した。
「でも、他の系統の魔術を合わせて使えるなら、もしかしたらもっと別の事が起きる……、かも知れない」
「なんだよ、もっと別の事って……」
俺がそう言いかけた瞬間だった。
「あれ……、あの人……」
ハルが、俺の背中側の道を行く人のを、じっと見ている。
「どうした?」
俺がハルと同じ方向を見ようとすると、ハルは「振り返らないで」と、小声で制した。
「あの人、まるで、ここに結界があるのを解ってるみたい」
「って言うと?」
「ずっと、私たちの方を見てる。音が聞こえないから解らないけど、多分、呪文を唱えてるんだと思う」
俺は、振り返っているのを気取られない様に、眼球だけを動かして、肩越しに確認する。
いた。
外見は至って普通の大人だ。黒いコートを羽織って、手には通勤鞄を提げている。しかし、横断歩道の真ん中に立って、じっと一所を見つめている様子は、さすがに多くの人の中でも浮いている。




