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情けない事に、俺はすぐ目を逸らした。さっきとは逆に、ハルの目の前を通って、かなり暗くなった駅前へと歩き出す。
「とにかく俺は、千種にはなんにもやましい感情は抱いてないから。そこんところは解っといてくれよ、ほんとに」
「はいはい。とりあえずそう言う事にしておいてあげる。みっちゃんには黙っといてあげるから」
ハルは俺の後に続いて横町から出て来た。日が暮れて、武蔵野の空気は急に冷たくなっているようで、顔や手の肌を刺す様に冷やして行く。
「言っとくけど、あいつも千種の事は知ってるぞ。結構仲いいし、たまに『笹子』に顔出してるみたいだし。
それに、千種は多分、お前の言ってるみたいな事は思ってないはずだぞ」
「あ……、そう……」
ハルは勢いをそがれた様に急に黙り込むと、
「ヤマトのバカ」
と言った。
俺はそれを聴かなかった振りをして、ずんずんと歩いて行く。タイミングを逃してしまったからか、俺は何も言い出せぬまま、橙色の電車が走る高架をくぐり、大通りと大通りが交わる交差点に差し掛かった。ここを右へ曲がるとハルの家、まっすぐ行くと俺の家だ。
信号がちょうど青になり、俺はハルに向かって片手を挙げた。
「じゃあな」
ハルは、何も言わずに片手を挙げてそれに答えた。
俺はハルから目を離し、足を踏み出そうとした。
その時だった。
急に、世界から音が消えた。
今まで聴こえていた、横断歩道の雑踏も、列車が鉄路を踏みしめる音も、みんな消えた。
俺はすぐさま後ろをを振り返る。まだすぐそこにいたハルと目が合った。俺は何かを考えるよりも前に、ハルへ呼びかけた。。
魔法使いの仕業だ。考えなくても、それくらいの事は解った。
「ハル!!」




