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「かい摘んで話すぞ。
千種は、言ってみれば俺の母さんに救われたんだ。母さんはさ、結構正義感って言うのかな、そう言うのが強い人で、事件とかを見逃せないんだよ。
千種は元々俺の家の隣に住んでたんだ。三つ年下だから、俺が翠とかとつるんでない時は、いっつもくっついて来てたんだ。
でもな、千種の肌に痣が増えて行ってたんだよ。小さかったとは言っても、俺だってそれくらいの事は気付いてた。でもな、そう言う子は、得てしてそれを隠したがるんだよ。俺は何回も訊いたのに、千種は一度だって答えてくれなかった。
だから、俺はそれを母さんに相談したんだな。それが正解だった。俺の母さんは俺を引き連れて隣の家の前まで連れて行って、警察に電話掛けて、隣ん家のインターフォン押して、気付いたら千種はあの両親の子じゃなくなってたんだ」
やって来た警察の人をほったらかして、母さんは千種の両親と喧嘩をしていた。母さんが何を言っていたのかも、千種の両親がなんて弁解していたのかも解らない。ただ、真新しい痣を増やして、俺の後ろで泣いていた千種の声だけを、はっきりと覚えている。
ハルは神妙な顔で話を聞いていた。それを見た俺は、少しだけ言葉を続ける。
「まあ、なんだ。あいつは新しい両親を見つけて、今幸せに暮らしてるんだ。こっちの事に巻き込むつもりなんて、これっぽっちもねえよ。
だから、お前には、何があっても千種を巻き込まないって、約束して欲しい」
「解った。約束する」
ハルは真面目な顔で頷いた。だんだん解って来たが、ハルと言う人間は、真面目な話は真面目に出来る奴の様だ。
ただ、そんな顔もすぐに消えて、意地悪な顔がすぐに姿を見せた。
「で、実際、ヤマトは千種ちゃんの事、どう思ってるの?」
「どうってなんだよ」
「あの子、結構ヤマトの事、好きみたいだよ」
「冗談はやめろって」
「いやあ、これが冗談を言う人間の顔に見える?」
へらへら笑いながら、ハルは自分の顔を指差した。まったく説得力が無いな。
「ああ、思いっきり冗談言う人間の顔だろ」
「ああっ! ひどい!」
ハルは大げさに驚いた振りをして、俺を見上げた。俺の肩の高さに、何色にも染まっていない白い頬と、透き通る様な蒼い瞳が見える。ハルと目を合わせているのは、俺にはどうもエネルギーの要る事だった。




